![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/164564057/rectangle_large_type_2_6da95b3bed6d9ff3dd3507cd3ab9a4c2.png?width=1200)
クィンシー前日譚 第57章
【秘密のお茶会】
エーリカ「、、、」
ロゼット「、、、」
クィンシー「、、、ええと」
たぶん一番焦っているのは私だと思う。ロゼットは平常運転でダンマリ。その状況をわざと黙って楽しんでいるのがエーリカだ。
エーリカ「、、、ふふふ、ごめんなさい、困っているクィンシーが可愛くて、、、」
くすっと笑うエーリカ。
エーリカ「では、ちょっと重い話をしてもいいかしら。ルイーズに少し聞いたのだけれど、クィンシーがルルイエに来た理由について詳しく教えて欲しいの」
突然の事で驚いたが、別に隠す必要もないので師匠との馴れ初めから別れまでを全て話した。それと、先日の幻夢境の出来事も。
クィンシー「なんだかすみません。私利私欲の為に参加しているようで、、、」
エーリカ「私利私欲、結構だと思うわ。それが人間というものでしょう?それに、そんな前向きで救いようのある目的の為だったら、少なくとも私は軽蔑しないわよ」
エーリカは俯いて小声で言った。
「逃げ出してきた人間にとっては、あなたは少し眩しいわ」
クィンシー「、、、あの、ところでどうして私の話を?」
エーリカ「先代のクィンシーに恩がある、というのもだけれど、あなたの目的はもう一歩で手が届きそうな気がするの。それがとても歯痒いのよ」
そこにロゼットが話に入ってきた。
ロゼット「はい、僭越ながらロゼットめもエーリカ様と同じ想いがあります。クィンシー様の願いは時間が経てば経つほど難しくなってしまうものだと思いますし、、、」
急に入ってきたロゼットに少し驚いた顔をしてエーリカは続けた。
エーリカ「あら、あなたもなのね。クィンシーは本当に愛されているのね。人として、どうやら私もあなたを好きになったみたい」
エーリカがぐいっと前に出て顔を近づけた。
エーリカ「いちおう確認させて、クィンシーはお師匠様を助けるためならば自分の命は惜しくない?」
クィンシー「いいえ、私は師匠と再会するためにここにいます。ダイバーの誰一人も欠けることなく師匠を助け出して、私も生きて帰ります。もちろん命懸けだとしても」
エーリカをまっすぐ見て返事した。
エーリカ「例えば、私一人を犠牲にすれば、その全てが叶うとしても?」
クィンシー「エーリカさんも失いません」
リウビア家に伝わるトヒルの瞳の力は知っていた。願いを叶える代わりに、トヒルの瞳を宿した者は死に至る。そんな事をしてしまったら私は師匠に顔向けできないし、自分を許せないだろう。
エーリカ「本当に真っ直ぐね。分かったわ、舞夜にあなたの覚悟を改めて伝えておく。それと、私も協力しようかしら」
どういう事だろう?
エーリカ「実は今、舞夜が中心になって秘密裏にダイブする計画を立てているの。私たちは組織に雇われてルルイエにいる。でも、全員そんなお利口さんなモルモットのままでいるはず無いでしょう?それぞれメンバーが真の目的を持っている。そのためにラヴクラフトの思惑を逆に利用してやろうって魂胆らしいわ」
そんな計画があったなんて、、、
エーリカ「それで、手始めにクィンシーの師匠を救い出す。いいかしら?」
クィンシー「いいもなにも、、、ありがとうございます」
エーリカ「お礼は言わないで。かなり危険な賭けではあるのだから。最悪は全滅、そうでなくても危険因子としてラヴクラフトに処刑される、なんて事にもなりかねないもの。それでもいいならば、クィンシー、やりましょう」
そしてエーリカがロゼットに視線を移す。
ロゼット「ロゼットめも参加させて下さい。差し出がましいようですが、クィンシー様の願いはロゼットめの願いでもありますゆえ」
エーリカ「では決まりね。大々的に動くことは出来ないから、また折を見て連絡するわ」
そして、師匠奪還作戦が動き出した。