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Ep寥廓たる地の参銃士 第13章

【白銀の狙撃手2】


影の放った弾丸は真っすぐにロゼットの心臓目掛けて飛んでいく。全てがスローモーションのように映った。だが止める力は私には無い。

『カキィィィィン!!』

甲高い金属音が響いた。ロゼットは勢いで後ろに仰け反る。が、踏ん張って体勢を保つ。

クィンシーの影「え?」

ロゼットは胸元から1枚の金属片を取り出した。北欧の旅の途中、ロゼットの髪がボサボサだったのでいつか渡そうとしていたバレッタ。

そうだ、ルルイエに来てシルヴィの薬で酔っている間に渡していたんだ。でもそんなライフル弾を止めるほど強固では無いはずなのに、、、

クィンシーの影「あ、あ、」

影は狼狽えながら自分のポケットから血で錆びた同じものを取り出した。

クィンシーの影「ああ、こちらの私は無事に渡せたんですね、、、」

影は膝を折ってライフルを置いた。

カティア「同じ想いが篭った2つの物質。影のクィンシーさんの迷いが弾丸に通じて、貫くことができなかったのでは無いでしょうか?」

ロゼットが私の影に近づいていき、抱きしめた。

ロゼット「貴方様の辿った世界のロゼットめも、きっとこの髪留めをずっと持っていて下さっていることだけで身に余り過ぎるほどの感謝と恩恵の念を抱いている事と存じます。たとえその身が滅びようとも。そして、このロゼットめもどんな末路に至ったとしてもクィンシー様をお慕い申していることに変わりはありません。ロゼットめは影の貴方様も、変わりなく愛しております」

私の影はロゼットの胸の中で泣き崩れた。

ひとしきり泣いた後、スッと立ち上がり私を見る。

クィンシーの影「この血に染まった結末を迎えた私でも、受け入れてくれますか?」

クィンシー「それはもう、やっている事は結局私も同じですから」

そして影は光を放ちながら私に重なった。そしてその光が消える瞬間、頭の中に『よろしくお願いしますね』と声が聞こえた。

***

領域を包んでいた暗い空気が霧散していく。戦闘は終わったんだ。

先生「お疲れ様、クィンシーちゃん」

クィンシー「いえ、私はとくに何もしていませんけど、、、ロゼットさん、ありがとうございました。あの、、、私も愛していますからね」

照れる。でもロゼットが言ってくれたんだから当然きちんと返事をしなくては。

ロゼットは顔を真っ赤にして俯き、小声で「ありがとうございます」と言ってくれた。

師匠「一件落着だな。ところで先生、相変わらずエグい弾丸を使っているんですね」

話を逸らすように私も言う。

クィンシー「あれ、着弾点が発火しましたけどどう言うことですか?」

先生「ああ、これさ」

先生は自分の使ったライフルを見せてくれた。私の背の丈よりも大きい、、、

師匠「超ロングレンジ対物ライフルのカスタム品だ。徹甲弾だけじゃなくて焼夷弾も撃てる。さっき撃ったやつだな。ロングバレルで有効射程は5,000mを超えるバケモンだよ」

確かに師匠が初めに先生は最強だって言っていたけど、本当だったんだ。

師匠「さらにだ、こいつはフルオートも出来て120連ドラムマガジンも装着可能」

先生「私は体にハンデを持っていたからね。道具でカバーするしかなかったんだよ」

師匠「だとしても常人にはこんなバケモン扱えませんって。しかもサイドアームズはデザートイーグルの50口径、そいつもフルオート出来るようにカスタム済み。笑っちゃうだろ?」

師匠が私を見て笑う。

うん、これは確かに最強だ、、、

カティア「そう言えば私がまだ小さかった頃、聖奠教教会が大規模空襲でほとんど焼け落ちたという話を聞いたことがあります」

師匠「間違いなく先生だな」

先生「いやぁ、ゲートに辿り着くために上の部分が邪魔だったからねぇ〜」

クィンシー「全然潜入じゃないですね、、、」

先生「ゲートは地下にあったから、潜って入るって意味では潜入じゃないかな?」

クィンシー&師匠「意味が違います」

ジゼル「さて皆さん。一段落ついたところでそろそろ帰還しませんか?」

そう言えばずっとジゼルが大人しかったな。怪しい、ニヤニヤしている。

クィンシー「撮っていましたか、、、」

ジゼル「もちろんです!」グッと親指を立てた。

まあ、イヤらしい事はなかったしどっちかと言うと感動シーンみたいなものだからいいか。

ジゼル「帰還術式も出来ています。行きましょう」

師匠「それでは先生、お達者で。また折を見て会いに来るかもしれません。すみませんが何かあったら私の弟子を助けてやって下さい」

ベアトリーサと先生が見守る中、私達はルルイエへと飛び立った。

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