Ep寥廓たる地の参銃士 第11章
【師匠の師】
師匠「よし、無事に着いたみたいだな」
ここは、、、前に来た師匠の記憶の中の草原と瓜二つだ。再構築されたため崩壊はしていない。だだっ広い草原に点々と木が生えている。
ロゼット「あ、」
遠くに人影が見える。赤毛の女性。間違いなく師匠の先生だ。師匠がゆっくり歩いて近づいて行く。
師匠「先生、お久しぶりですね」
先生「ああ、私もようやく記憶が戻った。あの日、手紙を書いたとは言え勝手に出ていって、しかもクィンシーの銘まで押し付けて悪かったね」
師匠「いえ、元々クィンシーは継ぐ約束でしたし、先生がいつかはご友人のところに行ってしまう事は覚悟していたので、、、」
先生「やはり、強いなキミは。頼もしいよ。そしてそんなキミが認めたあの子もきっと」
二人で私の方を向く。話が聞こえていなかったので、ポカンと首を斜めに傾けた。
師匠「、、、まあ、いざっていう時は、、、でも結構ポンコツで、今はルルイエのメンバーに支えられてなんとかやっているようです」
師匠が苦笑いする。
先生「クィンシーの形も変わってきたんだな。いいさ、それがキミが望んだ結果なら間違っていない。もう裏社会で暗躍する立場では無いのかもしれないな」
私も二人の会話が気になり傍に歩いていく。
クィンシー「よろしくお願いします。師匠の先生。私はまだまだ未熟ですので、色々とご指南いただけると幸いです。でも、、、そのまえにベアトリーサさんとのご関係を教えて頂いても宜しいでしょうか?」
その時フワリと優しい風が凪いだ。
ベアトリーサ「こんにちは、みなさん」
先生「ベアト」
ベアトリーサ「彼女との馴れ初めは私からお話しても宜しいでしょうか」
そう言うと、ゆっくりと語り始めた、、、
***
彼女は元々私の付き人でした。今のカティアとジャミラさんの関係と同じです。よく色々と物を壊しては叱ってくれたものです。そしてずっと一緒に過ごすうち、聖女としての私にいずれ訪れる運命を知ってしまったのです。彼女は密かに私を連れて逃げ出す計画を練ってくれていました。しかし、聖奠教は未熟な私達が逃げ切れるほど甘いものではなかった。実行に移す前に計画を暴かれ、彼女は即座に処刑される事になりました。聖女である私を傷付ける事は出来ないと知っていましたから、成せる魔術を駆使して彼女を逃がしました。しかし聖奠教徒の放った呪いで彼女の身体はボロボロになってしまい、そのまま行方知らずに。こう言うと、ジャミラさんよりもイリーナの方が印象は近いですね。
逃がす直前、彼女は必ず戻って来ると約束してくれました。
***
そして私はベアトに生かされ、無我夢中に森の中を走って逃げたんだ。追手はどこまでもやってきた。ついには身体が全く動かなくなってしまったところで、当時のクィンシーに助けられた。そしてそのままクィンシーとしての生き方を選び、いつかクィンシーを後世に引き継いだらベアトを迎えに行こうと決心したんだ。ただ、その頃にはもうすでにベアトは幻夢境に落とされた後だった。聖奠教教会内部に密かに潜入して私はゲートから幻夢境に入った。だが、負荷に耐えられず、、、
気が付いたらほとんどの記憶が消えていて、それでもベアトの事だけは覚えていて、、、それで彷徨っていたら彼女から私を見つけてくれたんだ。
***
師匠「先生は元々聖奠教徒だったんですね。全く知りませんでした」
先生「言ってなかったしね。それに信仰心だって全然無かった。生まれた先がたまたま聖奠教だったと言うだけさ」
師匠「ところで、先生はこの後はどうなさるおつもりですか?このまま幻夢境に?」
先生「ああ、そのつもりだよ。元々ベアトに再会するのが目的だったしね。それに今さら上に戻っても時代に着いて行けないさ」
それはそうかも知れない。幻夢境では時間の流れが曖昧だ。こうして見ると師匠も先生も歳は変わらなく見えてしまう。
師匠「では、時々でいいのでコイツ達に稽古を付けて上げて下さい。本当は全快した先生の実力を私も知りたいところですが」
なにやら後ろの方でゴソゴソ聞こえる。
ジゼル『コレって、ベアトリーサさん×先生の組み合わせも有りですよね?その場合受け攻めはどうなると思いますか?』
カティア『ジゼルさん。お気持ちは分かりますが、私の母でそういう話はちょっと、、、』
はぁ~、真面目な話をしている時に、、、
と、その時突然大きな落雷が落ちた。
ベアトリーサ「これは、、、凄まじい魔力の塊が近づいて来ています。みなさん、気を付けて下さい!」