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美術館のたのしさ

 美術館にいきたい、という衝動におそわれることがにある。
 きれいな絵画を見たいから? 好きな画家の絵があるから? それもある。しかしそれだけじゃない。何よりも美術館という空間が異様に落ちつくから。

抽象画が好きです

 たいてい美術館はなかがとてもしずか。外の雑音をほとんどシャットアウトしてくれる、ありがたい無音室である。街中ではこういう空間がほとんどお目にかかれない。自分の歩く足音さえほとんど耳にはいらないくらいに、どこも雑音であふれている。
 それに美術館のなかは、一面真っ白な壁に絵画がならんで飾られているだけの、とにかくシンプルさを追求した空間。がちゃがちゃと目にうるさい広告とか看板が一切ない。訴えかけてくるのはあくまで、天井のひかえめな照明にてらされた絵画だけ。
 ちなみに午前中はきているひとが少ないから、鑑賞にはもってこいの時間である。ひとが多いとやっぱり落ち着かない。絵をながめていても、となりや後ろで待っているひとがいないかな、と気になってソワソワ。だから美術館は閑散としている午前にいくにこしたことはない。ひとのいない美術館を無心でうろうろする時間は、至福のひととき。

お気に入りの絵画(カンディンスキー)

 絵画の素養がなくとも、美術館にいるだけでそれなりに楽しめるのは、このように閑静でシンプルな空間だからという理由につきると思う。自分は美術史に学んだわけでもないし、絵画について造詣がふかいわけでもない。ビビッとくる作品にであえたときはもちろんうれしいけど、ただ落ち着きをもとめてきている面がなくもない。
 大人になって感じるのは、日常生活はストレスが多い反面、ことさら真新しいこともなくなって退屈だということ。そういった不安や退屈を、非日常的なハイテンションやスリルで乗り切るのはたやすい。でもほんとうに欲しいのは、こころの落ち着きなんじゃないだろうか。自分が美術館に行きたいとかんじるときは、たぶんこころが平穏をもとめているのにちがいない。

ゾウの貯金箱(約2000円!)

 最近、ドイツのミュンヘンにあるレンバッハハウス美術館にいってきた。そのおみやげショップで赤いゾウの貯金箱をかった。ちょうど野球の硬式ボールくらいの大きさ。現金なんてほとんどつかわないのに、買わせてしまった魅力がこの子にはある。おみやげショップも、美術館のたのしみのひとつだと思う。

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