【平沢進】INTERACTIVE LIVE SHOW「WORLD CELL」(1998.10.27.TUE 大阪IMPホール)
【概要】
【WORLD CELLストーリー概要】
【セットリスト】
【開場】
通算第6回目のインタラクティブ・ライブ。
既に初日の東京でバッドエンドを出してしまったので、「今日こそは…」と決意も新たに大阪へ。客入れ音楽はアルバム『Sim City』でした。
客席後方とステージ手前には、在宅オーディエンス達にライブ「画像」を送る為のビデオカメラ。そうです1998年はまだ映像による動画配信ではなく、数分おきに更新される「静止画配信」です。
「半生中継」とも言われてましたが、この年の初めにあった電子悲劇ツアーでは中継画像すら無かったのですから、何とも画期的な一歩。
さて、ネットへの動画配信はまだ出来るハズも無い時代でしたが、大阪公演のみスカイパーフェクTV(現在の「スカパー!」)による生中継(!)がありました。
ソロワンマンのステージライブがテレビで単独で「生中継」されるのは、おそらく初だったのでは?「よりによってこんな特殊なライブを…」と、ステージ前に設置されたカメラを眺めてニヤニヤしてしまう。
この日は開演が押しましたが、テレビ的には枠内で放映を開始しないといけない為、客電が付いたまま生中継が先にスタート。その為、前方列の人は開演まで生中継カメラにたっぷりなめまわされるという大変な試練がありましたが、5分ほどして客電が消え、この当時のインタラお決まりの台詞がスクリーンに投影されます。
【開演】
” ようこそ平沢進のインタラクティヴ ライヴへ! ”
BGMも無い無音の中、暗闇にスッと浮かび上がる、白い文字情報。
何が待ち受けているのか分からない、でも笑顔にならずには居られない冒険が始まるような高揚感。このたった1行だけで大歓声を上げられそうなぐらい、大好きな言葉です。
そして6回目ともなると、インタラについての説明は簡潔にわずか4行。要は「スクリーンに映し出される文字情報に従って、反応する」のが、我々会場オーディエンス達のお仕事。インターネット上で「橋を架ける」作業をするのが在宅オーディエンス達のお仕事。
” このライヴは、ヒラサワとあなたと ”
” インターネットに居る在宅オーディエンスで作り上げるライヴです ”
うおー!今日こそグッドエンド獲ってやろうぜー!
インタラにおける「在宅オーディエンス」という存在は、このインタラが初の試みです。
同じ1998年初頭、P-MODEL「電子悲劇ツアー」のほうで「ライブ中にネット上へ指示を出し、次の会場までに問題解決をさせる」という、ネット連携イベントは既にありましたが、公演中リアルタイムで何かさせるイベントはこれが初。
このネット連携システムを一気に担ったのがNiftyのAmigaフォーラム「FAMIGA」の皆さん。プロジェクト名は「NIFTY-SERVE FAMIGA インタラクティブライブ要素技術支援プロジェクト」。
ITインフラがまだまだ充分ではない1998年、オーディエンスを「インターネットを経由してコンサートの進行に干渉させる」なんて、平沢さんしか思いつきませんよ!
スクリーンには「会場でモバイル機器をお持ちの方はどうぞアクセスして下さい」と、在宅オーディエンス達が作業するページのURLもスクリーンに提示されましたが、手持ちのPHSはホールに入るなり圏外でした。1998年のインフラよ…!
「まもなくです」とスクリーンに文字が出た後、心電図が投影されました。
【Kingの心電図】
『クアイト・ゼロ』という謎の存在から命を受けて『WORLD CELL』(ワールドセル)の修復にあたっていた、Kingという人物の心電図が映し出されます。
既に衰弱が進み、この数時間で「不整脈も出ている」とのこと。
平沢さんの独特な世界で「不整脈」という急に現実的なワードが急に出てきたので、ちょっと笑ってしまいましたが、要は
・『WORLD CELL』の修復をしていたKingが倒れ『存在麻痺』に侵された
・このままだと『存在麻痺』が世界中に拡がってしまう
・ヒラサワと一緒に『WORLD CELL』に行き、kingを手助けしよう!
というのが今回の趣旨。
『WORLD CELL』までは谷あり河ありで、その全てに橋を架けるべく立ちあがったのが、我らがヒラサワという訳です。
橋大工ヒラサワは『PHASE-0』に居るので、5つのトビラを開けて彼を呼べという文字情報に、我々の心が躍らない訳がありません!!
“ さぁ、用意はいいか? ”
” CALL ヒラサワ !!!!! ”
大阪は男性の歓声が多く、初手から奮い立つような熱い大歓声!
歓声の声量に応じてトビラは開かれますが、それが5つもあるとなると、叫んでも叫んでも、なかなか開かず。それでも諦めず、止まぬ歓声と拍手で1つ1つ開かれていくトビラ。
当時のインタラは、まだ演者と客席の間に(ステージ前面を全て覆うように)紗幕(半透明の幕)がある頃なので、扉が開くムービーは、座席にもよりますが「本当に目の前で大きい戸が開くように見える」仕様。
そしてこの紗幕は、ステージ側の照明が
・暗ければ、通常の投影用スクリーン
・明るければ、ステージの平沢さんが見える
という物なので、いよいよ最後のトビラが開かれると、そのちょうど開かれた正面に、アー写と同じポーズで耳を押さえて立つヒラサワがパッと現れるという、最高の演出!アー!好き!!
『TOWN-0 PHASE-5』
全席指定のホールでしたが、この時点で観客ほぼ全員総立ち。というかこの頃はまだ席だろうが絶対立つみたいな時代でしたかね。
さて、客席の盛り上がりは凄く、もはやイントロの「インヤー」をワンコーラス分忘れたぐらい、どうってことありませんぜお師匠。(書いてやるな)
この6日前に行われた東京公演と同様、紗幕にはこの曲のPVも投影されてましたが、東京に比べると、いま会場で歌ってる平沢さんのリアルタイム映像の方が多く流れたような。
大阪ではよく見えませんでしたが、東京ではこの曲で「ギルドが橋を建設中」という文字情報も差し込まれました。平沢と我々がいるこの会場に居なくても「在宅オーディエンスの皆さんも、一緒に居る」という、このインタラ1曲目定番の流れも、これが初登場です。毎回泣いちゃうよ。
平沢さんの衣装は「黒タートルにサスペンダー付きズボン(裾はしまう)」という、赤いライトに映える真っ黒仕様。ぴったりとしたの衣装なので、ボディラインが出ますが、華奢でいらっしゃる。
上手側やや奥には同じく真っ黒衣装の福間さん、そのさらに背後、客席からは殆ど見えない位置にFAMIGAの方。
間奏ではデストロイギター。当時、何となくテレビをつけたらこれが生中継されていたのを、偶然観てしまった人が存在したかもしれないと思うと、涙を禁じえません。実在したならば、お元気でいらっしゃいますか。これね、デストロイギターって言うんですよ…。(?)
『救済の技法』
イントロでは薄暗闇の中、網目模様のムービングライトのみが回転しながら平沢さんを照らしだしますが、そのシルエットの美しいこと…!
舞台セットは簡潔かつ、CDジャケット同様に赤と黒のコントラストが美しかったです。ステージ奥はホリゾントライト(下から上を照らす横長のライト)で、ジャケットの赤い縦線を表現。
平沢さんの前には黒い半円形のテーブル(円側が客席側)。基本見えないようになってましたが、上階から見るとシンセやノートPC、紙のカンペ等が置いてありました。そしてテーブルの正面中央には、あまり大っぴらに出来ない例のマーク。
現在ではおなじみ、この曲で「リズムに合わせてこぶしを振り上げシンセを叩き付ける」奏法も、当たり前ですがお披露目はこのツアーが初。全席指定ということもあり、観客で動きをマネする方はチラホラ程度ですが、福間さんもこのアクションを平沢さんと共に。
そんな弾き方しなくてもいいのにステージで敢えてやるという、平沢さんならではの「ショーアップ」というやつですが、ギターは蹴って振り回す、シンセは叩いて弾くわで、ロックとニューウェーブのワルなとこだけ抽出しちゃってる感じあるな平沢さん…。(もちろん好きです)
【ホットポイント - その1】
3曲目の『Caravan』の後で、1つ目のホットポイント(ストーリー分岐の選択イベント)が発生。1つめの谷に到着したとのことで、『救済する橋のギルド』こと、在宅オーディエンス達がどのルートを選んで橋を架けたのか、確認します。
橋は右のルートで架けられていましたが、何と橋の一部が欠けて落ちてしまっています。すると、
“ どちらの石材で修復しますか? “
と、橋の修復は会場のオーディエンスに委ねられます。
スクリーンに提示された石の部品は、ちょうどパズルのような形で、どちらが正しいのか判断できません。さっき映った橋の欠けた所はどんな形だったっけ…?
しかし東京で既にバッドエンディングを出して学習済みのファンは、東京と逆のパーツを選ぶ気満々w
◼️異変発生
しかし、このホットポイントの途中辺りから、ホットポイント中のBGMが小さくなったり、何やら既に不穏なPA周り。ついに「ブチッ」という音と共に完全停止。何事かと歓声も止んだので、音量を感知しなければムービーは動かないシステムの都合、スクリーンも「CALL」が表示されたまま停止。
客席後方ではPA席の皆さん、完全に大慌て😱
しかし悲しい哉、マシントラブルに慣れくさっている平沢ファンは(切ねえなおい)、自主的に新たに拍手とコールを送り始めます。どうだ、いい話だろ。
【ライブ中断】
こうなっては仕方がないので、ステージにライトが点き、平沢さんが直々に状況整理。しばし裏や客席後方のPA席のスタッフと、マイクを通しつつ会話をしていましたが、客席を向き直り、
平沢「残念ながらコンピューターのミスではありません」
はいはい、残念ながらってどういう意味ですか。(うれしい)
どうやらメインのPA卓が落ちてしまったとのこと。福間さんの後日談によると「PAミキサーが火花を出して死んでしまった」そうで一大事。平沢さんのマイクからの声は出ていましたが、橋は落ちるわ卓も落ちるわで、物語も現実も大変なピンチです。
電圧周りがおかしいのか「ヴーーーン」というハム音が走ってはブツっと途切れ、平沢さんも思わず「ん~?」と(何故か可愛い感じに)呟き、そして一言。
平沢「コンピューター以外のトラブルというのは実に気持ちがいい」
やりましたねお師匠!
この頃のインタラの要であり、同時にマシントラブルの種でもあったAmigaですが、今回はあらゆる振動を吸収する台の上に置いてるし、ちゃんとバックアップもあるし、なんかもう、なんか、絶対Amigaの所為じゃねーし、Amiga悪くねーし、俺のAmigaすげーし的な(※意訳です)、Amiga愛トークをされて大喜びの我々。
マシントラブルに加えて、ステージセットのテーブルの前(舞台前方)にまで出て来ている状態での饒舌なトーク、さらには当時はかなり珍しい平沢さんの腕まくり姿に、完全にテンションが上がっている客席でしたが、「復旧しないなら紗幕を開けましょうか」という平沢さんの提案に、更なる大盛り上がり。
以下、盛り上がりまくる客席に対して、平沢さんからの冷や水のようなありがたい一言です。
平沢「幕が開いたからといって、親しい間柄になった訳ではありません」
アッ ハイ…
【台本なしで10分以上喋り続ける平沢】
その間も、復旧のめどが立てられずに大慌てのPAエリアですが、ステージでは平沢さんが冷静に場つなぎ。
「(親しい間柄じゃないので)私になれなれしい口を利かないように」と言いながらも、大っぴらにできないギルドマークの紹介や、サポート業務の福間さんの紹介をし、さらにFAMIGAの方の紹介…をしようとして(演者サイドの御方ではないので)そっとしておいてみたり。
更にはスタッフが使う進行表の紹介まで、ノートPC(Vaio)を手に持ち、画面の方を向けて見せてくれたり。いやそれどう見ても今回の分岐が全部書いてあるツリー図だけど見せて良かったの?!w
他にも「電気が来ないなら、アコギでインタラ頑張りますけど?」的なリップサービスもありましたが、
平沢「(題して)弾き語りインタラクティブ・ライブ」
平沢「……絶ッ対やりたくない💢」
なら何で言ったんすか。
【卓復活~インタラ再開】
スタッフが使う進行表を見ながら「東京は左ルートが多かった」と、かなり重要なヒントを我々にくれている間に、卓が復旧。おお、良かった。
先ほどの橋が落ちた所から再開しましょうと、福間さんと打ち合わせをしてましたが、その際の「Caravan終わり(で始める)」のイントネーションが独特で面白かったです。(『Caravan』の発音が「ビレバン」と同じで、アクセントが「終」にある、というだけですが)
SE含めて音周りを担っていた福間さんも、少々テンパっていたのか、何度も再開タイミングを確認してましたが、最終的には平沢さんに
平沢「あなたの都合のいいところから始めて下さい」
と判断を一任されてました。
文字だけだと冷たく読めるでしょうが、平沢さんが福間さんと(少なくとも観客の前で)会話する時は、いつも穏やかで優しい口調で、ほんと好きだったなあ。
平沢「さ、今のはなかったことにして始めましょう」
お、そうです、我々は腕まくりして饒舌な平沢など決して目撃していない。
紗幕が再び下ろされ、無事、親しい間柄ではなくなりました。(?)
【再:ホットポイント - その1】
という訳で再度ホットポイントが行われ、欠けた橋を修復するための石材パーツは【L】が選択されました。
橋は無事修復され、在宅オーディエンス達の選んでいた【R:WORD CELLの伝承】へと進みます。
『Kingdom』
スクリーン上には、かつて『WORLD CELL』に起きた出来事が文字情報で流れます。スクリーンで流して一度に読める文字量に限りがある都合、実際には下記ほど情報量が親切では無かったと思いますが、ざっくり解説&補足&意訳すると、
という感じ。
我々が文字情報を理解するのに必死になってる間、サビの入りが分からなくなって、完全に歌い出しを飛ばしてしまう平沢さんw。いつもこの手に関して合図を出してくれる福間さんも、今回はご自分のことだけでかなりお忙しいですからね…。
…じゃなくて、この曲作ったの平沢さんですからね?!
しかし途中から歌い始めてもなお、伸びやかな美声で流石でした。
『庭師king』
この曲でも、曲中にスクリーンには先ほどの話の続きとして「倒れたKingの代わりにヒラサワが『WORLD CELL』を修復しに行く」旨の文字情報が流れましたが、
“ 50年前にWORLD CELLを停止させた祖父の名にかけて “
“ ヒラサワがWORLD CELLを修復する “
じっちゃんの名にかけて?!
みたいな気持ちになりましたが、開場時に配られたSTORY GUIDEの「KEY PERSON」のうち、ヒラサワの解説文にある孫の話は、ここに繋がるんですね。そして平沢さん、Kingの孫だったんですね…?
出だしの「ヘーイヤイー⤴」を恥ずかしいぐらい全力で外したことぐらいどうってこと無いぐらい(書いてやるな)、後半の伸びやかさがカッコよかったです。こぶしが効きすぎて「ンヘエ↝ンィヤィイイイー⤴」ってなっててちょっと笑いましたが。
『ナーシサス次元から来た人』
イントロはシンセ手弾き。上階から観てると分かるんですが、意外と平沢さんシンセちゃんと演奏しててびっくり。
曲中では次のような文字情報がスクリーンに。
“ 女神JEHMがKingの枕元に来た “
枕元に来るのは先祖か死神じゃん…
と思いましたが、どうやらそうではなく。
夢見る瀕死のKingを起こし、「死の種子」「生の種子」を降らせるという「MOTHER」の元へ連れていくと伝える女神。はたしてどうなるんでしょうKing…
【ホットポイント - その2】
さて2つめのホットポイント。第2の谷に到着。
“ ここでは超長い橋が必要です “
2020年現在ではTwitterで色んな軽口をたたく平沢さん(失敬)なので、あまり違和感がないでしょうが、当時としては「平沢さんが「超」って使った…」という笑いポイントですw
ネット上では在宅オーディエンス達が、2つのルートのうちどちらが先に長い橋を架けるか、競っている最中とのこと。
■『イレーサー』出現!
ここで会場にはデジタルホルモンと呼ばれる『イレーサー』が出現!
『存在麻痺』を引き起こすデジタルホルモンとのことで、お前それ、略称デジモンじゃん…(?)
我々が『WORLD CELL』に行くのを阻止しようとしているとのことで、こいつが居ては先に進めませんので、会場オーディエンス達はヒラサワが戦うための武器を選びます。それ行け!戦う橋大工!
東京では【L:ミブラトニシン】が選ばれましたが、大阪は【R:ギタドレナリン】。ギタドレナリンは不愉快物質を発するそうですが、もしかしなくてもそれは我々にとっては快感物質のやつですね…?🤤
という訳でインタラ久々の「デストロイギターでやっつける」コーナー!
東京のMiburi攻撃に比べると、明らかにダメージを受けているイレーサー。我々にはご褒美ですのにね!あえなく倒れ、進路は無事確保。在宅オーディエンス達の架けた「超長い橋」は果たしてどちらに架かったのか確認すると、こんな文字情報が。
“ ・・・・! “
“ 言いにくい。。。(^_^; “
ほんとにこの顔文字でしたが、インタラで顔文字使ったのはこれが初でしたっけね?当時としては「おい、平沢が顔文字使ったぞ?!?!」とかなりの衝撃を受ける客席でしたが、そんなことよりも、より長く架けられていた橋の方が、先ほどの『イレーサー』によって破壊されてしまっていたとのこと。あらら…。
進むには、再度橋を架けなければなりません。
ああそれは在宅オーディエンスの皆さん頑張ってね…と思っていると、
“ キミたちを今から 応援する橋のギルド に任命します “
“ さぁ、キミたちの出番です “
なんやて。
『GHOST BRIDGE』
という訳で急遽、応援団に任命された会場オーディエンス。
声援による応援ではなく「橋を架ける作業を手伝う」という応援で、1996年9月「架空のソプラノ」でも使用された、大玉ころがしのようなサイズのバルーンが客席に投げ込まれ、観客の手によって頭上を跳ねていきます。
今回はこのバルーンが、舞台下手側から客席上手後方へ渡された緑色のセンサーを「3回横切るとブロックが1つ積み上げられる」というシステムになっているので、皆一丸となってセンサーへ送り込みます。
しかし、ぼよんぼよんと弾むバルーンは意外と扱いが難しく、強くトスをすると思わぬ方向へすっ飛んでしまったりと、なかなかスムーズにセンサーを通すことが出来ず、みんな頭上を見上げて必死。
いやもう誰も平沢さん観てないわww
東京では「うおー!センサー!通れー!」と必死で何も見えてませんでしたが、大阪ではスクリーンの映像・バルーン・照明・緑のセンサーが、見事なぐらい調和していて、とてもきれいな空間でした。大阪は全体通して照明がとても美しい会場でしたね。
曲も終わりに近づいた頃、最後のブロックが積み上げられ、無事橋も架かりました。よかった。しかし何故我々はたった1曲の間に疲弊しているんでしょうね…。
【ホットポイント - その3】
3つめのホットポイント。第3の谷に到着です。
在宅オーディエンス達が架けたのは【R:月夜の丘】。しかしここでKingの容体が急変。緊急処置をどうするかの選択が、会場オーディエンスに委ねられます。
実は、東京で学習済みの人は「心を鬼にして放置しないとグッドエンディングに行けない」と気付いていましたが、先ほどの平沢さんのヒントが「(バッドエンディングの東京は)左が多かった」だった所為なのか、そもそもKingを手助けする旅をしている気持ちからなのか、選ばれたのは【R:声援ショック】。
当時、ネット上では「橋は右に進んで&Kingは放置しよう」という話が盛んでしたが、現場ではこの結果。しかし、自分が総意だと思っていたものが現場の総意になるとは限らない、これもインタラであります。
『MOON TIME』
橋を架けた先は「月夜の丘」なのでこの曲が。スクリーンの文字情報には
“ MOON TIMEだ “
“ それは 新しいことが始まる前の時間 “
美しい月の運行がゆっくり投影される素敵な映像の後ろに、平沢さんが透けて見える、この時代ならではのインタラ演出。幻想的でちょっとうっとりしてしまう。
間奏はアコギ演奏。スタンドに乗せた状態で弾く方のスタイルですが、それでも平沢さんがギターを弾くのはやはり嬉しい。聴き入っていると、
“ 待て、Kingの様子がおかしい “
うん、それはこっちも待ってほしいね…
『万象の奇夜』
ガネーシャの画像が赤と黒で点滅する、気持ち悪いような、畏敬の念を抱くような、謎めいた映像。スクリーンにはこのような文字情報が。
“ 真っ暗だ… “
“ 時間が元に戻っているようだ… “
せっかく『MOON TIME』で、世界が新しい一歩を踏み出しそうにだったのに、すっかり不穏な雰囲気に。時間が戻り、また無益な死が繰り返される予兆ということなのでしょうか…。
『MOTHER』
そうこうしているうちに最後の谷に到着。
やはりKingを助けたことが、よくない事態を呼んでいるのは間違いなさそうですが、スクリーンには下記のような文字情報が表示されます。
“ MOTHERがLife Seedを降らせている “
それなら様子のおかしい(死にかけている)Kingが正常に戻るのでは?と期待する人、やっぱこれ放置が正解だったんだよなあと答え合わせする人、色々居たことでしょうが、近年稀に見るこんなノリノリ曲の前で、曲に集中しない奴は居ない。待ちわびた、本家によるMOTHERさんだぞ。
サビではマイクの調子が不調だったのか、平沢さんの声が出ないまま進行。オケのバックコーラスだけが進行していて、卓よ、Kingじゃないお前は死んでくれるなよと手に汗握る。
『橋大工』
“ この先にWORLD CELLがある “
“ ギルド達よ、インターネットを通じてここに石材を積み上げてくれ “
何と平沢さんも自ら、グラストロン(SONYのヘッドマウントディスプレイ)とMiburiを使って、スクリーン上の石を持ち上げ、回転させ、積みあげていきます。しかも歌いながら。マジかよ棟梁。
しかもMiburi、お前楽器のくせに映像を制御できるんかワレ、と思いの貴兄貴女の皆さん、どうぞ「来なかった近未来」をお買い求めください。答えが書いてあります。
既にお持ちの方はP165をお読みください。
その上でP167もお読みください。
そしてAmigaと平沢さんのド変態っぷりに脳まで痺れましょうね…😇
『WORLD CELL』
さて一行はついに目的の地『WORLD CELL』に到着。
大和久さんによる秀麗なムービーも流れる中、物語の結末が『クアイト・ゼロ』によって語られます。以下ざっくり解説&要約&意訳。
…えー、つまり、死ぬべきだったKingを我々が生かしてしまったことで、
・自滅プログラムが発動しなかったので、本来残すべきでない経験ログが生きている
・自滅プログラムが発動するからこそ産まれるはずだった、より良き世界である『PHASE-6』が産まれない
・おまけに『WORLD CELL』とKingが持っている「無益な大量の死」という悲惨な経験ログを、世界はこの先何度も繰り返す
という、最低最悪の世界になってしまったのでした。
“ キミたちのせいですべては台無しだ “
“ さぁ、各々のPHASEへ帰るがいい “
『TOWN-0 PHASE-5』
いや救いがねええーーー!
何と東京も大阪もバッドエンドを引き当ててしまいました。スクリーンにはスタッフロールが流れていますが「やっちまった…」「最終日だったのにバッドエンド…」と、涙目ですもう。
新譜をこんな沈痛な気持ちで聴くライブ普通あります?あるんです。そう、インタラならね!
平沢「アディオス!」
と、さっさと帰る平沢さん。福間さんも後を追いますが、ハケるには平沢さんの演台を一旦通らないといけないらしく、ぴょんと飛び乗って、またぴょんと飛び降りて、足早に去って行きました🐇。もちろん可愛らしさに嬌声が上がります。
【アンコール】
福間さんが登場したのち、平沢さんが登場。
今回は2つのストーリーと4通りのエンディングがある内容だったとのことで、つまりそれは(予想ですが)、
・Good
・ややGood
・ややBad
・Bad
の、下2つをよりによって引き当てた感じですかね…。
しかし本日はPA等の不調もあったし、このままプログラムを捨ててしまうのも勿体ないので、何とグッドエンドを見せてくれると平沢さん。優しい!!
という訳で、曲的には『WORLD CELL』の所、つまり物語の顛末が語られるシーンの、グッドエンドVerを流してくれるという事で、福間さんが準備をしてくれてましたが、その間、平沢さんが福間さんを見つめながら
平沢「…福間創が今、準備をしております」
平沢「…指差し確認などをしています」
平沢「(福間さんの時間がかかっている)…ちょっと待って下さい」
平沢「あくまで福間が申しております」
師匠からの「早くしろ」圧が凄いのですがw
ようやく準備が出来て、平沢さんが「では、もう一方のエンディングです」と紹介したところで、流れてしまったのは『橋大工』。
福間「ごめんなさい!!!!!」
我々の大好きなトラブルですよ!
再度準備に入った福間さんに対し、平沢さんが優しく
平沢「ダイジョブ?もっかい指差し確認を」
と促したので、あちこち「ヨシ!」の指差し確認をw
いやあ、P-MODELの末っ子はほんとキュートでした。
【グッドエンドVer】
そんな訳でいちばんGoodな結末をみんなで鑑賞。
以下ざっくり解説&要約&意訳。
我々に『PHASE-6』へ行くように促しながら『クアイト・ゼロ』は言います。
“ Kingのことは悲しまなくても良い “
“ 彼は今 WORLD CELL の出力する世界で再び働き始めた “
“ 来る日も来る日も、諸君の一生を全うさせる、世界の王として “
『救済の技法』
Kingー!俺だー!!
ストーリー上で一番のグッドエンドを見せてくれた上に、その流れでアンコールにも応えてくれる平沢さん。あまりに力強い演奏。もう死んでも良いと思いました。
そして、そう簡単に死ぬ訳にはいかないでしょ皆さん。
平沢「アリガト」
と言って公演は終了。
前代未聞のトラブルもあり、演者とスタッフの方々はさぞ冷や汗をかいたことでしょうが、それすらもエンターテイメントにしたインタラクティブ・ライブ。2020年から振り返ってみれば、およそ1998年とは思えない軽いフットワークとテクニックの妙、本当にお見事でした。
【17年後の『WORLD CELL』】
さて。ここから17年後の2015年には、この『WORLD CELL』の物語の続きが描かれたインタラクティブ・ライブ「WORLD CELL 2015」が開催されます。
新たな『WORLD CELL』の物語の結末はどうなったかと言うと、何とDVDで観れる!しかも公式サイトで買える!(?)
これまでのインタラで、ありそうで無かったホットポイントの手法だけでなく、Fotosearchの有償素材もふんだんに使われた所為か、キャッチーさもあり、(2020年時点ではこれが)最新のインタラだけあって、エンタメ性が洗練されており、映像化にあたっての編集も質が良いです。
インタラの話はいまいち難しくてついて行けない、という印象を持っている方でも、この時は謎解きも参加してないから…という方でも、そもそも物語を理解するとか面倒だし…という方でも、観てるだけで十分に楽しめると思うのでおすすめです。
開催決定当時「1998年の焼き直しとか、ついにラクし始めたか😚」などと思った自分を打ち据えて罰したいほどに名作、かつ完全に新作です。2015年版を未体験の方は是非。
レポートはこれで以上です。お読みいただきありがとうございました。
以下はオマケというか余談。
【オマケ:用語表記について】
オフィシャルの表記ブレが(もうはるか昔からずっと…)多いのでアレですが…
『QUITE』なのは間違いないので、発音も加味するとカタカナ表記は『クワイト』が近いのでしょうね。
そもそも「聞こえる音と、発音する音と、書く音は違う」ので、「カタカナ表記に正しいも間違いも無い」んじゃないかという気がしますが、文中では1998年表記に従いました。
スペルは全然違うんですが、カンチャナブリで起きた無益な死の橋と言えば『クワイ河』(万国点検隊が行ったのもそこ)なので、音の響きだけもじってある感じなんでしょうかね。
【オマケ:関連リンク】
【2020年の最後に】
2020年は大変な1年でしたが、この先も音楽は止むことなく、そして平沢さんのエンターテイメントは、変な楽器をガチャガチャと引き連れ、時にのすのすした謎の生物をお供に、スルドク我々の前に現れ、何でそんなこと思いついたの?!というような驚きをくれることでしょう。
この先もどうぞ緑の神経網を切断することなく、個別に進んで、時に同時に撃ってまいりましょう。
来年も、音楽が人の心に朝を呼ぶと信じて。