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【Album Review】Reol, 《金字塔》 (2020)

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Artist : Reol (레오루)
Album : 金字塔 (금자탑
Released : 2020.01.22
Label : JVCKENWOOD Victor Entertainment
Genre : J-Pop


本作《金字塔》は、Reolのメジャー第二作目のアルバムだが、彼女はすでに2014年から毎年いろんな形で出してきた、しっかりとしたアルバムキャリアーを保有している。しかし本作がキャリアー初の『セカンドアルバム』というのは妙に面白いところである。2014年にプロデューサーのギガと、映像クリエイターのお菊と共に独自で発売した同人アルバム《No title+》・《No title-》シリーズをはじめ、2015年に歌い手『れをる』としてのファーストアルバム《極彩色》を発売する。その後、ギガ、お菊と共に『REOL』というユニットを組んでメジャーデビューを行って、2016年にはユニット単位のファーストアルバム《Σ》が出るのだが、以前からもプロダクションの総括はギガが行って、れをるが作詞とボーカルを担う体制だったので、その作品での音楽スタイル旋回はさておいても、既存のソロアルバムとそこまで変わったところはなかった。ユニットは長くいかず解体されたが、間もなくれをる一人で『Reol』としてメジャーソロデビューを正式に行い、2018年に「新たな」メジャーファーストアルバム《事実上》を発表することで、彼女のキャリアーに三つの『ファーストアルバム』が積まれる。ユニット解体したから心配したけど、いつもと同じくギガが総括プロデュースしてて安心した。

本作でも(ゲストプロデューサーはいるものの)ギガが総括プロデューサーを担当している。ギガのプロダクションは常に驚かされる。エレクトロニックを中心にパワフルに押していきながら、様々なジャンルの音を巧みに配置して聴覚的な楽しみを忘れない。それがReolの圧倒的なボーカルパフォーマンスや、若干難しくても卓越した表現の歌詞と伴って、(起伏があるとはいえ)彼女なりの固有な感想を起こす、相当な完成度のJ-Popを具現する。

Reolの音楽スタイルは《Σ》を分岐点として分かれる。(覆面歌手であった彼女が公開的に活動を開始した時点でもある。)エレクトロポップやロックを中心に展開してきた彼女だが、そこからトラップやトロピカルハウスのようなトレンディーなヒップホップ、ポップのサブジャンルを大幅に増やした。それはギガのポップミュージックプロデューサーとしての力量を証明したが、Reolは変化したプロダクションへの適応に起伏を見せている。特に、比重の増えたラップパフォーマンスがそうである。

だから、プロダクションだけでなくパフォーマンスの力量が見栄えて、アルバム作品としての価値を高めた《No title-》、《極彩色》のような初期作品に比べ、以降の作品群は(個々の曲の完成度とは別に)アルバム完成度は惜しい感じだった。

やっと《金字塔》の話に進んでみよう。結論から言えば、《金字塔》は、《Σ》の音楽スタイル旋回からしてアルバム単位で一番成功的な作品で、《極彩色》以降、久々に出た秀作だと思う。その主な長所はギガのプロダクション技量がアルバム全体にかけて均等に展開されたところ、それが比較的乱雑なコンセプトを統一性よくするところなどである。

Apple Musicでは本作について「コンセプトアルバム」だと説明するが、叙事のつなぎについては疑問に思うところがある。金字塔すなわちピラミッドというキーワードは一つのビッグピクチャーを構成するだろうが、本作の叙事は各曲ごとに破片化していて、キーワードに合わせてその関連性を考えるのはできるとしても、はっきりとした統一性は感じにくい。その個々のコンセプトやメッセージと言えば、死後の世界(〈ハーメルン〉)、愚衆の批判(〈ゆーれいずみー〉、〈insider〉)、正体性の再成立(〈un, deux, trois〉)、フェミニズムスローガン(〈HYPE MODE〉)まで様々で個性的で、これらを有機的に結ぶ装置があればもっと良かっただろうと思うところはある。

にもかかわらず、本作の統一性は以前の作品群に比べてはるかに高い方である。その代表的な例として、二つの間奏曲の間に位置した、〈ハーメルン〉と〈ダリ〉までの中盤の4曲を上げられる。各曲のスタイルやメッセージは各様各色だが、4曲全部ヒップホップ中心のプロダクションで詰め込んで、聴覚的な有機性を作ってコンセプトを強固にする効果を出す。〈ハーメルン〉は夢幻的なチルアウト・トラップに変奏を足し、〈un, deux, trois〉はReolのキャリアーにおいて一番魅力的なブーム・バップトラックだろう―しかし一番素晴らしいブーム・バップビートは3トラック後の〈-ルネの小品 Nr.9-〉で登場する。―〈insider〉と〈ダリ〉はBTS初期のスタイルを連想するところもある。

アルバム中盤部でなくとも本作にはヒップホップ基盤のナンバーが多く、その分Reolのラップパフォーマンスの技量が重要になった。個人的にReolのラップがそこまでうまいとは思わないが、主にボーカルと兼ねたり、フレーズごとに色んな試しを行うなど、巧みなラップメーキングがトラックに似合う感じで、時にラップだけで印象的な区間を作り出す。例えば〈HYPE MODE〉のヴァースで行われる「i-a」ライムとか、〈insider〉2節の演技力、そして〈ダリ〉のラップ・フックでクラブチューンのトラップと似合う中毒的なライムを形成するところなどはジャンル的文法にもっと近づいた姿を見せる。

中盤部が作品のサウンド的有機性を作ったのだとしたら、序盤と後半は完成度の高いトラックで作品の導入と結末を作り、また優れた間奏曲を配置してサウンドの有機性を高める。

代表的に、タイトルトラック〈金字塔〉はReolとギガの長所がよく現れたトラックである。中高音域で夢幻的なような勇壮なようなシンスの上に、「汝」「君子」などの古風的な言葉を使った歌詞が重なる瞬間が印象的で、EDMとシンスポップ、サビに至ってはフューチャーベースなどで一曲内で様々なジャンルを変奏し、オリエンタル楽器まで入れて出す効果などが興味深い。ドロップと共に天を突くようなボーカルパフォーマンス、そして歌詞の文章をだんだん変化させていってアウトロでメッセージを表す構成などはReolのボーカリスト及び作詞家としての長点を再確認させる、本作のタイトルトラックとして似合う素晴らしい代表曲である。(〈極彩色〉の変形みたいな感じもある。)続く〈HYPE MODE〉はその勢いを受けてポップな感性のmaximalなプロダクション技巧と素晴らしいボーカルのグルーブを見せ、ヒップホップとパンクのイメージを借りて「good girls go to heaven but bad girls go anywhere」という代表的なフェミニズムスローガンを連想させるサビが印象的である。問題は次のトラック〈ゆーれいずみー〉だが、曖昧に呪術的なメロディーと歌詞が不快な中毒性で残り、プロダクションの色ともに合わず、〈ハーメルン〉の死後の世界の物語に移る道のりであっても、本作に致命的な弱点だと思う。

二曲の間奏トラックについても特別に言及したい。本来Reolの(EPを除いた)すべてのアルバムにギガの間奏トラックを収録する伝統(?)をここでも継承するが、本作のそれが以前のどの間奏曲よりも優れた有機性を見せる。〈ゆーれいずみー〉から〈ハーメルン〉に移る〈-ムーブのための試奏曲 Nr.4-〉は、短いランニングタイムの中で中音域をくすぐる強烈なシンスを演奏して曲を導き、(完成度の意見とは別に)どこか不快な感想を残した以前のトラックと幻想的な雰囲気の次のトラックにつながる間を喚起させる。もっと素晴らしいのは、37秒間のトラック〈-ルネの小品 Nr.9-〉で、Reolアルバムキャリアー史上、一番分厚いドラムで驚くべきブーム・バップ・ビートを作って、それ自体で完成度を担保し、中盤部で騒いだヒップホップの流れを受け持って、またメロディーラインは次のトラック〈GRIMOIRE〉を予告しながら間奏曲としての役割をちゃんと果たす。

そうやって続いたハウスポップナンバー〈GRIMOIRE〉では、本作で一番中毒的なサビを見せるだけでなく、そのフレーズの文章をだんだん変えていきながら精神的な傷を治癒する物語また励まされる。話者の姿がアルバムカバーに登場する『聖人』的なイメージで現れることや、『魔法』を通じた傷の治癒が印象的だが、これについて両価的な考えをしてみたい。異世界を行ってくる本作のコンセプトとも関連付けれるし、虚構のストーリーに自我を任せてトラウマの治療を試みる精神分析的な論議の延長として見れると思う。しかし、物語においてデウスエクスマキナ的な存在の登場がいきなりすぎるところもあり、『ピラミッド』というキーワードとのこれと言った統一性を捉えにくく、むしろコンセプトを乱雑にする結果をもたらすかもしれない。最後のトラック〈1LDK〉では、今まで(〈mede:mede〉などで)Reolが提起してきた音楽・芸術に対する考察を再び召喚してパトスを弾かせる。結局話は疑問形で終わるにもかかわらず、本作が提示した『金字塔』すなわち、不変の価値についての論議に従属させることで、もう少し希望的な暗示を残す。(〈mede:mede〉に対する答えにも聞こえる。)

最後に整理すると、本作はまずギガをはじめとしたプロデューサー陣の隙間のほぼないプロダクションの力で、飛び散るシナリオをサウンドの有機性で統一し、Reolのすばらしいボーカルと、相当成長したラップパフォーマンスを鑑賞できる。まだ緩いラップや、ところどころトラック配置の失敗などが弱点に浮かぶが、それでも完成度のあるポップナンバーと共に個性的なシナリオを固有な変奏で展開し、サブカルチャー・アーティストのメジャー路線を豊富にしている点は、本当に尊敬に値する。


おすすめ度:★★★☆



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