浪曲で語る『物語』の魅力~玉川 奈々福 ×杉江 松恋|「読む」と「聴く」の違い 浪曲師・玉川奈々福さんにお聞きする物語の魅力
ノンフィクションを浪曲に!『悲願千人斬りの女』
筑摩書房の編集部で、井上ひさしなど綺羅星のごとき著者を担当していた奈々福さん。浪曲協会で三味線を習ったことをきっかけに浪曲の世界に入ります。会社員の世界から、浪花節の世界へ。全く違う世界にいた奈々福さんだからこそ、伝える浪曲の魅力があります。
奈々福さんが浪曲の世界に飛び込んだ経緯は、ご自身の著書に詳しく書かれています。
落語と比べても、大変古い世界が残っている浪曲の世界。奈々福さんはプロデュース力を発揮し、師匠玉川福太郎の『徹底天保水滸伝』をプロデュース。その時のゲストに呼んだのが、小沢昭一や井上ひさしといった著名人。連日、満員で大成功となります。
その後、奈々福さんは曲師(三味線)から浪曲師へ。浪曲師として選んだ素材が小沢信男のノンフィクション『悲願千人斬りの女』。小沢信男さんのノンフィクションが大好きだった奈々福さん。浪曲に落とし込むために、原作では少ししか登場しない人物に役割を与えることにより、浪曲として、成り立たせます。
もっとも、初演の『悲願千人斬りの女』は未熟だったと奈々福さん。当時は「節(ふし)」が足りなかったと回想します。
そこで松恋さんが配信で聴いている人のために浪曲の「節」を解説。初心者向けに目配りをしているトークショーです。
落語、講談、浪曲の視点の違い
奈々福さんによると、落語は、登場人物が地べたで話すような会話の芸。これに対し、講談と浪曲は視点がもう少し引いていて、物語を語る。語りが中心の講談に対し、浪曲は時々「節」という感情がほとばしる部分が組み合わさるのが特徴とのこと。また、浪曲には原則「まくら」がない。いきなり話の本筋に入るので、ちょっとびっくりしてしまうかもしれません。
松恋さんは、「皆さん、一度、木馬亭にいってください」と薦めます。木馬亭は浪曲の定席小屋。どうやら、アイス最中がおいしいらしい。コロナで観劇は控えられていますが、そろそろ、生で浪曲を聴いてみませんか。
※対談はアーカイブ視聴が可能です。
【筆者の感想】
ほぼ玉川太福さん「しか」浪曲を聴いていない、でも太福さんは5回は生で聴いているといういびつな浪曲体験をもつ筆者くるくるには、目からうろこの対談でした。太福さんの浪曲、特に新作浪曲には全編「まくら」のようなものもあります。当たり前のようにその浪曲を聴いていたのですが、太福さん、私が認識する以上に革新的な方だったんだ。今度、木馬亭で太福さんの創作浪曲に出てくる玉川祐子(今年満100歳!)を木馬亭に聴きに行かなきゃです。
【記事を書いた人:くるくる】
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