松原隆一郎、自身の『ファミリー・ヒストリー』発見する~松原 隆一郎×鹿島 茂、松原 隆一郎『頼介伝: 無名の起業家が生きたもうひとつの日本近現代史』(苦楽堂)を読む~
私家版の本を売る場所としてのPASSAGE by ALL REVIEWS
2022年3月1日に共同型書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」をオープンした鹿島茂さん。棚主の方が売りたい本を売る場所で、鹿島さんは私家版の本を売ることも重要と考えています。
松原さんの『頼介伝』は私家版の本ではありませんが、松原さんの故郷で、松原頼介が事業を起こした神戸にある出版社の苦楽堂が出しています。通常のルートではなかなか入りにくい課題本を、パサージュの棚(松原商會)では手に取ってみることが可能です。松原さんの棚の本には松原さんのサインや推薦文が挟まっていて、お得感があります。
頼介は無名人、でもその生涯は波乱万丈
松原さんが本書を書くきっかけは、父親が亡くなり、その本籍地を見た時、自身の知らない場所が出生地になっていたこと。
そのことから、起業家として成功し(そして最後は事業を手放した)祖父の生涯を辿っていくことになります。
松原頼介は1897年(明治30年)生まれ。松下幸之助より3歳下。太平洋戦争末期にも徴兵されない年齢で、息子(1927年生まれ)も徴兵されなかった。加えて、第一次世界大戦後と第二次大戦後の二つの好景気を体験し、起業することが可能だったというある意味ラッキーな世代です。
松原頼介の生涯を辿っていくと、中学校での岸信介の出会い、フィリピン渡航、船を持ち帆布を作る、満州との関わり、神戸の沖給仕、浜給仕などとの関わり、鉄工所を作りその会社を最後は川崎製鉄に譲渡することになるなど波乱万丈。
明治から昭和にかけ、大きく動いた時代、その時代に乗るような生涯を送った頼介。松原さんの『ファミリー・ヒストリー』は興味深いものです。
自身のファミリー・ヒストリーを書いた松原さん。岡山県の高梁町長の荘直温の伝記『荘直温伝~忘却の町高梁と松山庄家の九百年~』も子孫の方から資料を譲り受け書いています。この本は岡山県の出版社吉備人出版から出ています。この本もパサージュで販売しており、通信販売でも入手可能です。
対談では、多くの人の伝記を手掛けた鹿島さんが頼介と日産の創業者鮎川義介、ホテルニューオータニの創業者大谷米次郎などとの類似性など、多方面にわたり語っていきます。
ぜひアーカイブをご覧ください。ALLREVIEWS友の会の会員はアーカイブ視聴無料です。
【記事を書いた人:くるくる】