ポンパドゥール夫人ゆかりの地ヴァーチャル・ツアー~鹿島先生のヴェルサイユ講義の補助線として~
第2回 国立セーヴル陶器美術館、アルテ・ピナコテーク(@ミュンヘン)
仏文学者の鹿島茂先生がコロナ禍で旅行ができない人のために「スペシャルオンラインサマースクール「三代の王とヴェルサイユの名花」を開催されています。2020年8月22日の第2回の講義のテーマは「ヴェルサイユとルイ十五世と二人の愛姫(ポンパドゥール夫人とデュ・バリー夫人)」。政治の気のないルイ十五世に代わって時代を取り仕切ったポンパドゥール夫人。ゆかりの地のヴァーチャル・ツアーにご案内します。
★国立セーブル陶器美術館
ポンパドゥール夫人の殖産興業策として始まったセーブル焼。パリ市に隣接するセーブルの町には、今でもセーブル焼の工房及び国立セーブル陶器美術館があります。美術館の設立は1876年。普仏戦争の直後に美術館が開設していることにびっくり。
陶器美術館と銘打っているだけあり、セーブル焼だけではなく、ギリシャから日本までの世界各国の陶器が展示されています。公式サイトでは美術館と工房の様子を見ることができます。実際に行く場合は以下のサイトでご確認を。
2006年には「Toji(陶磁)・日本陶芸の伝統と前衛」という日本の陶芸家約90人の作品を集めた大規模な展示会が開催されました。参加者には信楽焼の神山易久の名前も。神山易久は、朝ドラ「スカーレット」のヒロインのモデルの元夫。朝ドラとは異なり、離婚後もずっと陶芸を続け、今では海外でも評価されている信楽焼の第一人者。この他、この展覧会では海外で評価されている日本の陶芸家が多数参加しました。
セーブル美術館の最寄り駅は地下鉄9番線の終着駅「ポン・ド・セーブル(セーブル橋)」。この地域はパリ都心に勤める人が住む住宅街。駅の近くには、大型スーパー、家電量販店、ホームセンターなど生活に根差した店が並びます。治安が比較的良い地域ですので、リアルでこの地を訪れることがあれば、フランス人の生活がのぞける店をぜひのぞいてください。
★アルテ・ピナコテーク(@ミュンヘン)
ポンパドゥール夫人の肖像画として有名なのは、フランソワ・ブーシェの作品。ブーシェ作のポンパドゥール夫人の肖像画は複数ありますが、代表的な緑の衣装を着る夫人の姿の肖像画はフランスではなく、ミュンヘンの美術館アルテ・ピナコテークにあります。
François Boucher / Public domain
アルテ・ピナコテークには、同じくブーシェ作の「横たわる少女」もあります。このモデルはルイ十五世の愛人だったオ・ミュルフィ。ルーブルの絵よりなまめかしいかも。
François Boucher / Public domain
なぜ、ミュンヘンにルイ十五世の愛姫の肖像画があるのか、ちょっと不思議ですが、この作品は1970年代に恒久貸与されているもの。私はバイエルン公の中に愛姫の肖像画を集める趣味の人でもいたのかと妄想しましたが、そうではないようです。
ともあれ、この美術館は立地もよく、アルブレヒト・デューラーや、ヒエロニムス・ボスの作品もある欧州屈指の美術館です。Google Artsにも参加しているので、ヴァーチャル・ツアーにもうってつけです。
ところで、なぜ、私がバイエルン公に愛姫の肖像画の収集趣味があったのではと妄想したかというと、バイエルン公のルードヴィヒ一世(ルードヴィヒ二世の祖父)が自分の愛姫30余人の肖像画を、ミュンヘン市近くのニンフェンブルク城の一室(通称「美人画ギャラリー」)に並べるという趣味を持っていたからです。しかも、肖像画を手掛けたのはベートーベンの肖像画で有名なヨーゼフ・カール・シュティーラーという一人の画家。同じ画家に描かれた、同じ大きさの30余人の美女の肖像画を一度にみると、愛姫の品定めをしているような、複雑な気分になります。
そして、ブーシェの絵と「美人画ギャラリー」を合わせて観ると「愛姫」という存在についてつくづく考えてしまいます。考え込みたい方はぜひ、両方をお訪ねください。
美人画ギャラリーでは愛人の肖像画が整然と並んでいます。
Fvz / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)
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第3回は8月29日開催予定。かのマリ=アントワネットをとりあげます。第3回だけの聴講も可能です。
※トップの写真は国立セーブル陶器美術館の全景
クレジット Siren-Com / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)
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