古本屋の醍醐味は自分で仕入れ、値付けをすること~中山 信如×鹿島 茂、中山 信如 『古本屋的! 東京古本屋大全』(本の雑誌社)を読む~
古本屋がめちゃくちゃ儲かった時代があった!
鹿島さんがまず驚いたのは、本書、冒頭、下町の老舗古書店、「岡島書店」へのインタビュー。これによると、ともかく古本はめちゃくちゃ儲かった。オイルショックで古紙の値段が暴騰し、チリ紙交換が儲かる、そのチリ紙交換が儲かる時代と古本が儲かる時代は時を同じくしています。
70年代からバブル崩壊まで、岡島さんは週3日はキャバレーで豪遊。鶯谷だけでなく銀座にも飲みにいっていたそうです。
『奇譚クラブ』10冊で1週間飲めた時代。
バブル崩壊後、急速に古本は売れなくなっていく様がこの本ではわかります。
古本屋としての自負を伝えたい
中山さんによると、古本屋の醍醐味は自分で仕入れ、値付けをすること。新刊の本屋は、取次から仕入れ、定価販売しかできない。
古本屋は自分の足で仕入れ、値付けも自分の判断でできる。これが古書販売の醍醐味だといいます。
古本屋は古物商の許可さえとれば、商売ができる。でも、専門的に仕入れたいと思ったら、組合に入らなくてはならない。組合に入り、交換会と呼ばれる市場で、自分の狙った本を仕入れていく。古本というのはほとんどが現品限り。常に市場に行かなくてはいけない。この市場での品選びは本当に楽しそう。
市場に出歩く古本屋の主人は留守がち。家族が店番をしているか、営業時間が短いか。「稲垣書店」も営業は土曜日から月曜日まで、週3日の営業です。
古本屋は文章を書くのが苦手、でも味のある文章も多い
中山さんが選び抜いた、古本屋の店主のエッセイや、対談が収録されている課題本。古本屋は文章を書くのが苦手な人も多く、対談が多めとなっていますが、中山さんの推しは店主のエッセイ。古本屋が書くエッセイは味があると、中山さん。
対談の詳細は、アーカイブ視聴でお楽しみを!
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本書が課題本に決まってあわてて読んだ筆者。一番、印象に残ったのが、ポラン書房の娘さんが書かれた「古本屋の娘としての十数年」。古本屋を愛しながらも、今後はビジュアル的なものが必要と考えていた彼女のエッセイが書かれたのは1999年。ポラン書房はどうなったのかしらと、ググってみたら、コロナ禍で閉店(オンラインで営業中)とのこと。映画学を学ぶ学生、中村洸太が撮ったポラン書房閉店のドキュメンタリー『最終頁』はYouTube視聴可能です。
シェア型書店PASSAGEで収録されたこの対談。中山さんはシェア型書店にもPASSAGEにも辛口です。これに対し、鹿島さんは、「ここは古本好きではなく、本屋好きの人が集まっているところ」。PASSAGEには、若い女性客が多く、奇しくも、ポラン書房の娘さんが予見した、「棚のビジュアル的な美しさ」にひかれるお客さんも多いようです。
古本屋にかかわる知見がたっぶりの対談、アーカイブ視聴も可能です。シェア型書店の棚主さん、本家の古本屋のしくみを理解するのに最適な対談なので、ぜひ視聴ください。
【記事を書いた人:くるくる】