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日本にもシティズンシップ教育を~ブレイディみかこ × 鹿島 茂、ブレイディみかこ『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』を読む~
2021年8月の月刊ALLREVIEWS、ノンフィクション部門はブレイディみかこ『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』です。ブレイディさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、『子供たちの階級闘争』を高く評価している鹿島さん。長年のラブコールかかない、ブレイディさんとのオンライン対談がかないました。ブレイディさんはもちろん英国からのご出演です。
※対談は2021年8月22日に行われました。
※対談は2021年9月5日までアーカイブ視聴が可能です。
ブレア政権で始まったシチズンシップ教育
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(黄色)』、『子供たちの階級闘争』のファンの鹿島さん。『他者の靴を履く』は前の2著作とは異なり、引用が多い本ではと指摘。ブレイディさんは「校閲が大変でした!」と回答。ゲラは編集者からの指摘で真っ赤になったそうです。日本の編集者の底力を感じるエピソードです。
「黄色」で注目を浴びた「エンパシー」について重点的に書いた本著。ブレイディさんが本著で取り上げたかった『コグニティブ・エンパシー』(認知的エンパシー)とは、他人の靴を履いて、他者の考えや感情を理解することです。英国では、演劇(drama)教育やシティズンシップ教育を通じて、他者の思考を理解する教育をしているとのこと。ちなみに、このシティズンシップ教育、本格化したのはブレア政権下で、そこまで長い歴史があるものではありません。日本でも、今からできるのでは⁈
日本軍は「靴に足を合わせろ!」といった
鹿島さんが注目したのは「他者の靴を履く」というタイトル。鹿島さんは旧日本軍のエピソードを披露します。行軍していくと靴は消耗し、底が抜けてくる。そうすると、自分のサイズにあった靴はない。でも、日本軍は「靴に足を合わせろ!」といったそうです。
ブレイディさんは、日本人の「迷惑をかけない」という意識の強さが逆にエンパシーをなくすのではと懸念します。あるアメリカ人が日本人を観察し、「日本人は集団、集団、集団というが実は一人、一人、一人なのではないか」といったといいます。生きていることは、人と関わること、過剰に迷惑をかけないことばかりに拘ると生きづらくなるのではとのこと。
英国でサッチャーの評価は低いのに
ブレイディさんの著書では「サッチャーはシンパシーはあったが、エンパシーはない」と書かれています。英国でサッチャリズムの評価が低い中、日本では、サッチャリズムを高く評価するデービッド・アトキンソンが菅総理のブレーンとされていることに不安を感じるブレイディさん。コロナ禍の中、欧州諸国も米国も大型の財政出動をしており、政府が支える体制を作りつつある。日本だけが「自助」を最重要視しており、世界の流れと逆行しているのでは、と指摘します。
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対談では鹿島さんがフランス人の精神の背骨となる「solidarité(連帯)」や渋沢栄一の社会福祉事業について、ブレイディさんが相互扶助とアナーキズム、日本の幼児教育の環境を整えることについてなど、様々な話題について語っていきます。
おりしも対談が始まった8月22日の20時には立憲民主党など野党が推す候補が横浜市長選を制したことが報じられました。「自助」優先から一歩踏み出し、公が扶助する世界に日本も踏み出せるのでしょうか。
対談が聴けるのは9月5日までです。アーカイブ視聴の購入はお早目に!
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書評アーカイブサイトALL REVIEWSのファンクラブ。「進みながら強くなる」を合言葉に、右肩下がりの出版業界を「書評を切り口にしてどう盛り上げていけるか」を考えて行動したり(しなかったり)する、ゆるい集まりです。
入会すると、日本を代表する書評家、鹿島茂さんと豊崎由美さんのお二人がパーソナリティーをつとめる、書評YouTube番組を視聴できます。
友の会会員同士の交流は、FacebookグループやSlackで、また、Twitter/noteで、会員有志が読書好きにうれしい情報を日々発信しています。
友の会会員の立案企画として「書評家と行く書店ツアー」、フランスのコミック<バンド・デシネ>をテーマとしたレアなトークイベントや、関西エリアでの出張イベント等が、続々と実現しています。2020年以降はオンライン配信イベントにより力をいれています。
さらに、Twitter文学賞の志を継承した「みんなのつぶやき文学賞」では、友の会会員有志が運営にボランティアとして協力。若手書評家と一緒に賞を作り上げていく過程を楽しみました。
2021年2月には、鹿島茂さんとの対談6本をまとめた『この1冊、ここまで読むか!超深掘り読書のススメ』が祥伝社より刊行されています。
本が読まれない時代を嘆くだけではダメだと思う方、ぜひご参加ください。
ALL REVIEWS友のTwitter:https://twitter.com/a_r_tomonokai
【記事を書いた人】くるくる