作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録⑤「隙間がある」ー
(編集・絵:佃 七緒)
勝手にはできない、けどやっぱり他の人の作品紹介をしてみる、というこのシリーズの始まり(説明)はこちらご覧ください。
西尾 佳織(参加作家)
①最近気になること
お金。断る(NOと言う)こと。どちらも自分の生活の変化から興味が出てきている。子どもが生まれて、どうしても自分のために使えない時間が増えてきたことで、今までだったらOKしていたことも断ったりする。そういう変化はどういうことなのか気になる。
②西尾佳織が「勝手に紹介」する作品はこちら
小出麻代 個展《形代ーかたしろ》
・そもそも、映像自体も小出さんの作品?と思った。
・何かの工場跡地?食べ物関連か?場所自体がとてもかっこいい、雰囲気のある場所。
・初めに注目したのは、水がめのようなものとその上に置かれたiPad。
もう水がめとしては使われていない、水がめのようなものの、かつての使用法がiPadに映し出されているのか?と時間の「差」を感じた。
・何度も出てくるきらめく文字が気になった。
人が前を通過すると反射してきらっと変わる文字。話し言葉のようなので、工場にゆかりの人から聞いた言葉なのかな、という内容。きらっきらっとすごく光を感じる。ここにある積み重ねられたものからは浮き上がっている感じ、貼り付けられた、物理的な意味というよりは感覚的に、「隙間がある」という関係性を感じながら見ていた。
・何かが稼働して何かに当たる音がする。
透明なアクリル板のようなものがモビールのようにぶらさがってちらちらきらきらしている。カンカンという音が聞こえる中、暗い中光がちらちらと通ったりする。その音の元が、映像の途中で、何らかの回転するシステムだとわかる。これは、かつて酒蔵が稼働していた時にこのように動いていた…というわけではないものが動いているのでは?当時そのままではない感じ、その「距離」がいいなと思う。
・この場所がものすごくかっこいいので、社会科見学的にグッとくるものがあると思うが、この作品はその価値に依存していないというのがいいなと思う。場所に寄りかかっていると感じる作品を見ると、作品なんてなくてもいいのにと思うこともあるが、この作品は「八木酒造」という場所と、「一緒に存在することにした小出さんの作品」とがばらばらではなく、「距離」をとって二つあるのがいいなと思った。
・タイトル「形代ーかたしろ」の意味。
最初ぱっとわかっていなかったが、映像を見るうちに、「距離」を全部に感じて、少しわかってきたように感じる。
・なんで美術作品の説明では「素材」を書くのか。
作者(小出麻代):作品に付属させたい情報のときは書く。匿名性を持たせたいとき、素材一つ一つの扱いがフラットで主張させたくないときなどは書かなかったり、ミクストメディアと書いたりする。最近は特に意識的に細かく書くようにしている。展示する場所自体(の空間に元々あるもの全体)も扱いたい、そこに自分の使った他の物を合わせていく、ということに重きを置く作り方をしているから。
佃:映像では中に出てくる素材を書くことはないと思うが、書きたくならないのか。(映像作家の小林へ質問)
小林:素材を書きたい、というのはないが、クレジットの問題は感じる。末尾にクレジットを入れるのってどうなのか?ループさせるならちゃんとループさせたい。(けど入れざるをえなかったりする。)あと、「監督」などの肩書を入れるのか?という問題。こだわりなくあまり考えずに、惰性で入れてしまっているときもあるので、どうなのかなと思う。