GOOD NEIGHBORS JAMBOREEと結い市/結いのおと 10年間のプレイリスト 後編
「フェス」という言葉自体が社会的な認知を獲得し、今も市場を拡大している一方で、 「フェスは飽和しているのでは?」との声も多く聞かれるようになりました。
そんな中、毎年その価値を問い直し新たな挑戦を続ける、2つのフェスがあります。
鹿児島の山間にある廃校で開催されている<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>と、茨城県結城市の酒蔵や古民家が舞台の<結い市/結いのおと>。
どちらも今年で10年目の開催となる節目を記念して、主催者のお2人に、それぞれを振り返った10曲のプレイリストを作成いただき、それを聴きながらトークショーを行いました。
モチベーションの源ともなるお2人の音楽体験やアーティストブッキングについてお話を伺いながら、これまで/これからの『フェス』を考えるお2人の思いを、前後編に分けてお伝えします。(前編はこちら)
坂口修一郎
(GOOD NEIGHBORS JAMBOREE/BAGN Inc)
Double Famous/Landscape Products/BAGN。プロデューサー/ミュージシャン。鹿児島出身。野外イベントGOOD NEIGHBORS JAMBOREEを主宰。
野口 純一
(結いのおと主催/日本ミュージックフェスティバル協会理事)
2007年アパレル企業を退職し結城商工会議所へ入所、2009年経営指導員。2010年に結いプロジェクトを飯野氏と立ち上げ「結い市」や「結いのおと」などを展開。2017年にCoworking&Cafe「yuinowa」を設立し、運営。現在、小規模事業者の経営全般や創業などのサポート業務を行う。その他に商業者外郭団体(結城市商地連)や 3 セク(TMO 結城)の事務局などを担当。
※このトークショーは、BUKATSUDO文化祭2019にて行われた『地方フェス/祭の10年後にある場づくりまちづくり』のアフタートークとして、レコード部が企画したものです。
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―では次の音楽を聴いていきたいと思います。続いては、こだま和文さんですね。
坂口:『LA BIRDS ROCK"遠雷"』という曲です。
♪こだま和文/『LA BIRDS ROCK"遠雷"』(A SILENT PLAYER)
坂口:こだまさんはですね、正直言ってどの曲でもいいんですよ。僕はこだまさんのトランペットを高校生のときに聴いて(自分も)トランペットを始めたので。
野口:こだまさん、存じ上げなかったです。
坂口:こだまさんは、MUTE BEATというインストゥルメンタルのダブバンドを日本で初めてやった人ですね。僕はこの人のトランペットを聴いてバンドを始めたので、<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>の5回目のときに来てもらったんです。その前の年がハナレグミで、その前がSOUL SETで、「わあ、ハナレグミが来るの?<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>に行きたい」と言っていた若い人が、「5周年?誰が来るの?」「こだま和文?その人知らない」みたいなコトもありましたが(苦笑)。
野口:それは狙ったわけじゃなくて、単純に自分が呼びたくて呼んでいるからそうなっただけですよね。
坂口:そうそう。だから別にゲストはネームバリューがあるから呼んでいるわけじゃないぞと。しかも本当にすごいんだよって。鹿児島の若い人はほとんど誰も聴いたことがないと言うから。実はそれまでにも鹿児島に来ていたにもかかわらず興味がないとスルーしてしまう。
野口:それはやっぱり、坂口さんが聴いてほしいという思いが強いんですね。
坂口:そうそう。どちらかというとそんな感じ。5回目でインベントもだいぶ定着してきたし、誰が来るかは分からないけど<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>に行ったら楽しいという状況にしたかったので。
野口:やっぱり聴いてほしいというのはありますよね。
鈴木(結いプロジェクト/レコード部):それは大事ですよね。5回やるとある程度カラーが出てきて、信頼度も高まるじゃないですか。そのときにやっぱりそういう形で、楽しさに間違いがないから来てくれるというファンができるのはすごく重要ですよね。
―ありがとうございます。続いて<結いのおと>はKan Sanoさん。
♪Kan Sano/『Magic!』(k is s) 『結いのおと2017』PV
野口:この方も結城紬につながるんですけど。本当に(Kan Sanoさんの)音楽が好きで。このPVの撮影場所は<つむぎの館>という、普段は紬の産地問屋さんが紬の商談をする場のお座敷です。そのお座敷をステージにして、お座敷から眺められるお庭を客席にしてるんですよ。<結いのおと>としてYouTubeに載せられるような素材が欲しいなということで、タカハシさんに撮影してもらったんです。
これが、Kan Sanoさん自身にもすごく印象に残ったようで、全国ツアーのファイナルを行った横浜の<Motion Blue>で、結城紬を着たいというリクエストがあり、僕が着付けに駆けつけるということもありましたね。
―野口さん、着付けもできるんですね(笑)。
野口:そうそう(笑)。結城紬の着心地体験事業をやっていて、外に持ち出したことはなかったのですが初めて起案書を出して上司に決裁をもらって。
鈴木:400万円くらいのね。
野口:400万円の着物を2着背負ってね。その前に<BUKATSUDO>でも研修をやりましたね。
―へー、そうなんですね。
野口:そういう思い入れがあって今回選曲しました。でもやっぱりこういったツールはすごく大事で、本当に<結城>ならではじゃないですか。ステージに立っているわけじゃなくて、結城にもともとある象徴的な建物というところを活用させてもらえる。それで結城紬を着てという、結城のポテンシャルをフル活用できるというところを映像から観てもらいたいですね。
坂口:このシチュエーション自体がPVみたいな感じがしますね。
野口:そうなんですよ。こういった部分はすごくありがたいですね。
鈴木:次は、<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>の6年目ですか。
坂口:続いては6年目ですね。大橋トリオです。
♪大橋トリオ/『Cherry Pie』(PARODY)
坂口:これまでの<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>史上、このときに一番人が来たんですね。なぜかというと、この年に桜島の火山の警戒レベルが4になって、このときもまた鹿児島中のイベントが中止になったんですが、僕らだけは開催したからなんですね。他の競合するイベントがなくなって(人が)全部来たんです。ただ、県外からのキャンセルは結構相次いだんですけど。最近、伊豆の大涌谷とかで警戒レベルが2になりましたとか3になりましたとかニュースになったじゃないですか。
野口:ああ、ありましたね。
坂口:でも鹿児島の警戒レベルは、最初から3なんですよ。警戒レベルと言い始めたときからずっと3なんです。それが1個上がったからといって、別にどうってことないんですよ。
野口:すごい!前向き!
坂口:友達に火山学者がいるので「実際にどうなの?」と聞いたら、「可能性は高まっているけど次の大噴火が100年後か明日かは分からない」と言うわけ。分からないんだったらいいじゃんかと(笑)。待ってても100年後かもしれないし、明後日かもしれないのならやろうと。結果、大橋君の年は、最高動員人数となったんです。
野口:大橋トリオだったら、そりゃあ最高になりますよね。
坂口:ですが、EGO-WRAPPIN’とかでも吹いているサックスの武嶋(聡)君が来られなかったので、メンバーが1人足りなくて。大橋君は衣装にものすごくこだわるんですよ。
野口:はい、そうですよね。みんなそろえたりしてますよね。
坂口:そうそう。「衣装が1つ余っている」と。
野口:はい。
坂口:「坂口さん出てよ」という話になって(笑)。それで無理やり出させられてみたいな思い出が大橋トリオにはあります。
野口:素晴らしい。いいですねえ。
坂口:でも鹿児島の地元の人は、『トリオ』といっているのに人数が多いねみたいな(笑)。
野口:そっちね。それになっちゃうんですね。大橋トリオというと、大橋さんが3人みたいな。
―(笑)ありがとうございました。
坂口:次は<結いのおと>のLUCKY TAPESですね。
♪LUCKY TAPES/『レイディ・ブルース』(Cigarette&Alcohol)
野口:今年は<FUJI ROCK>のFIELD OF HEAVENという大きなステージに出るということで、おめでたいな、みんなに聴いてもらいたいなというのがあって選曲しました。あと、ここも大所帯のバンドなので。
坂口:何人いるんでしたっけ。
野口:10人。ちゃんとホーン部隊もいて、音として作る部分がすごく大変なので、ここも最初のbonobosと一緒で苦労したなあという思い出がありますね。当然、皆さんには結城紬を10人分、10着用意して。
坂口:すごい!それはもうついに1000万円、3桁超えですからね。
野口:そうなんです。常にそういう計算をずっとしちゃいますけど(笑)、やりました。
坂口:えっ、2000万円?
野口:2000万円ですね。だって1着200万円ですから。それをLUCKY TAPESのメンバーは年賀状にしてくれて(笑)。お正月の雰囲気ですから年賀状になるんですよ(笑)。<つむぎの館>という施設で、みんなで着て、それをインスタに上げてくれたんですよね。
若いLUCKY TAPESのファンたちが、それを見て「ちょっと着物を着てみたい」とか思ってくれればいいですよね。割とうちらが狙っているのはそこなので。着物離れがどんどん進んでいって、結城紬自体も知らない人たちに知ってもらうきっかけだったりとか、ちょっと着てみたいとか、何か結城に興味を持つ導入になればいいな、というところでも一役買ってくれました。
坂口:LUCKY TAPES、いいですねえ。FIELD OF HEAVENも懐かしいですね。僕らDouble FamousもHEAVENには2回かな?出させてもらいました。
野口:おっ!すごい。
坂口:もう10年以上前ですね。最初に出たのがHEAVENだったのかな。はい、じゃあ次はUAですか。
♪UA /『大きな木に甘えて』(11)
坂口:UA の『大きな木に甘えて』という曲は、これも僕がトランペットを吹いてるんです。『情熱』という曲が入ってるアルバムの中に入っていて。
加えて何でこの曲を選曲したかというと、<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>をやってる会場にものすごく大きなシンボルツリーが立ってるんです。メインのステージはツリーとは別にあるんですけど、いつもそのときだけは大きな木の下にツリーハウスを建ててるんですね。UAは「ずいぶん長いことこの曲をやっていない」と言ってたんですけど、そんな背景もあって「この曲をやってよ」とリクエストしたんです。当日、僕は大変なので出ないつもりだったんだけど、「これをやるんだったらさ、坂口君もやるよね」ということになって、またこれも一緒にやったんです(笑)。
野口:さすがです!坂口さん、全部絡んでるじゃないですか。
坂口:全部は絡んでないですが、半分ぐらいは。
野口:素晴らしいですね。
坂口:これは1990年代の曲なので、何年前かな。1995年とかだと思うので、24~25年前の曲ですよね。
野口:そんな前になるんですね。
坂口:チリチリ聴こえるのが僕のトランペットなんですけれども。(UAの息子は)今、村上虹郎君といって俳優ですごく活躍しているんですが、このレコーディングのすぐ後に生まれてるんですよ。
野口:あっ、ムラジュン(村上淳)さんとのご子息が。
坂口:そう。スタジオで「妊娠しとってーん」「どうも具合が悪いと思った」みたいな、そんな感じでした。
―ありがとうございます。では次の音楽を聴いていきたいと思います。
♪七尾旅人/『サーカスナイト』(リトルメロディ)
野口:七尾さんにも結城紬を着て出てもらったんですけど。
坂口:似合いそうですね。
野口:すごく似合ったし、そんなに乗り気じゃないかなと思ったらちゃんと着物に合った帽子まで用意していて。非常に結城紬を着こなしてくれたんですけど、やっぱり音楽に対するこだわりもあって。ソロで弾き語りをやってもらったんですけど、着物で身軽に古い建物の鴨居に乗っかっちゃって(笑)。
坂口:それはまた怒られそうですね(笑)。それは何百万だったんですか。
野口:(笑)。みんなにワッショイワッショイと担ぎ出されたみたいです。ちょうど別の会場で曽我部恵一さんがやっていたので、(僕は)そっちを1回観にいってまた戻ってくるつもりだったんですけど、うちのスタッフが「野口さん大変です!」と。どうしたのかと聞くと、「七尾さんが古民家の鴨居に上って『Rollin' Rollin'』を歌いながらライトをRollin' Rollin'してます」と言われて。いや、全然意味が分からないからって(笑)。それでとりあえず戻ったら、本人はもう下りて何事もなかったかのように歌ってたんです(笑)。
鈴木:忘れられないですね。
野口:ですね。そういう印象深いエピソードがありつつ(プレイリストに)入れました。
坂口:なるほど(笑)。
♪cero/『Summer Soul』(Obscure Ride)
坂口:次は、ceroの『Summer Soul』ですね。どうしても知り合いとか友達に来てもらうと、僕と同世代のアーティストが多くなっちゃっうので、たまには後輩を呼ぼうということになって。
野口:カクバリズムですよね。
坂口:そうそう。もともと、SAKEROCKが僕の大学の後輩なんですよね。
野口:そうなんですね。
坂口:でもSAKEROCKはやめちゃったし、星野源はもう呼べないしなあと。
野口:ドームツアーをやっちゃいますしね。
坂口:ハマケン(浜野謙太)ですらねえ。同じサークルなんですよ。彼も大河ドラマとかにも出て大変なことになっちゃった。
野口:もう俳優ですからね。
坂口:そう言ってたら、「ceroっていうのがいますよ」とずいぶん前から言われてて、ああ、いいなあと思って。『Summer Soul』というこの曲は、真夏に山の中で聴くのにぴったりだなと思って。
野口:すごくあの雰囲気に合いそうですね。
坂口:そう。それで角張くんと高城(晶平)君に直接言って来てもらったんですね。このときは最高でしたね。
鈴木:そんな背景があったんですね。毎年ラインナップを見ていたので、ceroだけは「あれ、何でだろう?」と思ったんですよ。
坂口:なるほどね。
野口:ちゃんとそういう関係性があるんですね。
坂口:やっぱりね、ceroも2年くらいかかってるんですよ。
野口:ぶっちゃけ、うちらも何回かオファーしていますよ。
坂口:ceroいいねとなってからも、タイミングだったり、今年はUAが来るからとか何とか言ったりしているうちに、「来年は行けそうだけど」ということになって来てもらったという形ですね。
鈴木:坂口さんの<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>って夏フェス真っ盛りの時期だから結構かぶるじゃないですか。
坂口:そうなんですよ。だから2年くらい前から押さえておかないと。
野口:そうなんですよね。うちらが何で春にやっているかというと、割とフェス始め的な部分があって、若干空きがあるんですよ。そこの隙間を狙ってブッキングするという(笑)。
坂口:そう。もう今はね、フェスが多くて大変なんですよ。大変ではあるけど、2年くらいかければね。
野口:そうですね。思いが伝わりますね。
坂口:やっぱりceroに出てもらったことで、来るお客さんの層も若返った感じがしますね。
若い子がなかなか来てくれないので。ちょっと来てもらって、こりゃ楽しいぞというのでまた来年も来てくれればいいなというのもあったので。
―次はサニーデイ・サービスの曽我部恵一さんの『青春狂想曲』です。
♪曽我部恵一(サニーデイサービス)/『青春狂想曲』(東京)
坂口:彼は同じ年で、同じ世代なんです。
野口:あっ、なるほど。それを狙ってプレイリストに入れました(笑)。
曽我部さんにはその日の最後にトリで出てもらって。<結いのおと>は、今は4月の後半にやっていますが、1発目は3月の頭にやったんですね。だから夜はめちゃめちゃ寒いんですよ。
野外のステージでシャウトしながら歌ってすごく元気で、それが印象的だったんですね。曽我部さんがあの時はっちゃけてくれたので、その後のラインができたというか。あそこまでは、まだできるだろうという(微妙な)ところで、音出しのラインとかも含めてルールを決められたという部分も大きかったですね。あとは当然人気があるので会場のキャパとか、そういう部分でもブッキングに非常に思い入れの深い方なので選びました。
―ありがとうございます。曽我部さんも紬は着たんですか。
野口:着てないですね。でもいつか着てほしいですね。似合いそう。
―ぜひ、楽しみにしています。では続いては……もう去年ですね。2018年。
♪スチャダラパー/『サマージャム'95』(5th wheel 2 the Coach)
坂口:『サマージャム'95』がもう1回来ましたね。
野口:来ましたね。本家。
坂口:本家。スチャダラパーは、お客さんはいっぱい来てくれたんですけど、それこそ開催地の地元の農家のおじさんたちは「スチャ何?」みたいな。「スチャラカ?何それ」みたいな(笑)。
野口:どういう名前なんだみたいな感じなんですね。
坂口:スーダラか、みたいな感じで、何のことやらみたいな感じでしたけど。
野口:植木(等)系になっちゃうんですね。
坂口:そうそう。地元のおじさんたちは本当にそうなってましたけど。でも、やっぱりすごく盛り上がって。
野口:いやあ、盛り上がりますよね。間違いないですからね。でも、年代的にもスチャダラ自体はオザケン(小沢健二)との大ヒットがあるから、割と一般の方も知ってるかなあという気はして。
坂口:そうそう。毎年1組しか呼ばないから、その人がどの辺にウケてるのかがよく分かるんですよ。ceroのときはぐっと若返ったし、UAのときは僕ら世代がどっと来たし(笑)。
野口:(笑)。
坂口:だけどスチャダラは若い子も知ってるんですよね。
野口:そうですよね。
坂口:そう。若いやつから僕らくらいの世代まで結構幅広くて。そうか、スチャダラはこんなふうに受け入れられてるんだなあというのは、ちょっと面白かったですね。
野口:よーし、今度、坂口さんにブッキングをお願いしよう(笑)。
坂口:いやいや、これ(プレイリスト)をもう1回頭からやるだけですよ(笑)。
―(笑)。では続いて。
野口:はい。EVISBEATSさんですね。(他の人は)割と<結いのおと>だけというパターンが多いんですけど、EVISBEATSさんには10月の<結い市>にも来ていただいていて、今回は3回目です。
♪EVISBEATS feat. 田我流/『夢の続き』(ムスヒ)
野口:この曲は田我流さんと一緒にやっていて。田我流さんも結城には何回も来てもらっています。自分の本職は商工会議所の職員なので。
坂口:そうなんですか。
野口:そうですよ。仕事で創業支援のセミナーなんかをやったりするんですね。
坂口:短パンで?
野口:いやいや、スーツで(笑)。
当然今までのセミナーはコンサルの人や会計士、大会社の社長さんに自分の会社を立ち上げたときの話をしてもらったりとか、一般的なパターンでやっていたんですけど。
いろんなネットワークができた中で、自分らしい働き方とか、若い人でも共感を覚えるような仕事のつくり方というのも含めて、多様な働き方をしている人に登壇してもらって。自分のやりたいことを実践して仕事にしている方に話してもらうということで、レコード会社を立ち上げた人とか、カフェをやっている人とか、いろんなジャンルの実践者を呼んだんです。
その中でミュージシャンでは田我流さんに商工会議所でセミナーをやってもらったんですよ。で、自分の方で話をいろいろ聞いてもらって。お客さんもね。
鈴木:商工会議所の2階にB-boyたちが80人ぐらい集まるという(笑)。
坂口:あっ、そっちが来たんですね。背広の人が聞いてるんじゃなくて。
鈴木:でも、街の人も来ましたよね。(田我流さんは結城に)連続で来ていたから。
野口:そうですね。何回も来てるし、当然アテンドもするので結城のこともよく知ってくれてたし。EVISBEATSさんという僕が本当に大好きで、尊敬しているトラックメーカーの人と一緒にやっているというのもあったので、その関係性の深い2人の曲を選びました。
あと、この『夢の続き』ってすごくいい曲で。『ひとつになるとき』というアルバムを含めて(『ゆれるfeat. 田我流』が)一度ヒットしたという『いい時間』があって、(その後)ヒットした曲の次の2作目では「自分が持ってる夢の続きをつくっていく」というリリックも結構刺さるので選びました。あと、セミナーをやってもらったときのタイトルが、『自分らしいしごとのつくりかた』で、サブテーマが『〜夢の続き〜』ということでお話ししてもらったんです。そういうところから今回は選びました。
坂口:なるほど。
―いよいよ最後の10曲目です。
坂口:いよいよ最後。これって<結いのおと>の方は時系列できているんですか?
野口:いや、途中で思ったんですけど、時系列だったんですね?
坂口:いやいや、僕はただ時系列にしただけ。
野口:俺は時系列とは全く関係なくランダムに。流れ的に最後に落としたいなあとか、ちょっと強弱をつけながらプレイリストを作りました。
坂口:逆に僕は何にも考えずに、ただ時系列で並べただけなんですけど(笑)。
野口:時系列だと、一番初めはちょっと作りづらいですよね(笑)。
―坂口さんは時系列ということで最後の選曲が今年出演される方の曲なので、先に<結いのおと>のビューティフルハミングバードを聴きたいと思います。
♪ビューティフルハミングバード/『夜明けの歌』(HIBIKI)
野口:ハミングバードは同い年なんです。実はこの結城の活動を通じて仲良くなったというのもあるんですけど、北関東エリアのマネジメントだったり、ライブにも同行させていただいたりとか、お仕事にも一緒に関わらせてもらっていて。坂口さんも2人をご存じだと思うんですけど、非常に音楽性のポテンシャルもある、すごく大好きなデュオなので、最後はハミングバードしかないなと。ぜひ皆さんにも聴いてほしいので選びました。『夜明けの歌』はeastern youthのカバーなんですよ。
坂口:へー、そうなんだ。
野口:eastern youthの『夜明けの歌』はテイストが全然違うんですけど、それをあえてカバーしてアルバムに入れているところがすごく好きで。時系列が全く逆になっちゃうんですけど、1回目の<結いのおと>に来てもらったときに最後に演奏した曲がこの歌で、もうそれがドンズバで刺さっちゃって。そこからもう、結城のイベントには一番呼んでいるんじゃないかなという(笑)。
めっちゃ自分の私得な感じで呼んでるアーティスト、大好きな一推しアーティストです。
―1回目の最後にこの曲を聴けたら、もう(フェス)やめられないですね。
野口:そう。もう本当にちょっと涙腺がゆるんじゃうくらいの感じでしたね。やり切ったという大変さがあったときに、こういうエモーショナルな、好きな歌が流れて。セットリストをちゃんと見ていなかったので余計に印象的で、その1曲を最後に持ってきました。
―ありがとうございます。ぜひビューティフルハミングバードさん、皆さんもチェックしてみてください。
では、最後に坂口さんのジャンボリーに今年出演されるゲストのSILENT POETSですね。
♪SILENT POETS/『Quiet Bird』(Words and Silence)
坂口:はい、SILENT POETSですね。今年の<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>には二階堂和美も来るんですけど。ニカさんにはDouble Famousで歌ってもらっているので、そういうつながりです。彼女も去年来てもらおうと思ったら子供が生まれたので、「行けないわごめん、来年だったら」という話になって来てくれたんです。
野口:そういうふうに「来年だったら」という話になるのがいいですね。俺も2年越しでブッキングしよう(笑)。
坂口:SILENT POETSは去年が活動25周年で、それでちょっと大きなイベントをオーケストラ15~16人でやったんですね。そのメンバーに僕がまた(参加したんです)。何でそのメンバーになったかというと、25年前のSILENT POETSが活動し始めた頃に、僕はまだ大学生でDouble Famousをやる前ぐらいに誘われて、ライブメンバーとして一緒にツアーを回ってたんです。そういう縁があっての25周年なので、一緒にやろうよということになって。オーケストラなのでなかなかそんなに(ライブは)できなくて、渋谷で1回やったきりだったんです。その映像を収録して、映画として日本中をツアーしていたんですけど。「せっかくなので鹿児島まで来てよ」ということで15人を呼ぶと決めて発表したんですが、今はヒーヒー言ってます(笑)。
この曲は97~98年かな。だから20年ぐらい前ですよね。このトランペットはまだ20代だった自分が吹いていて、聴くと恥ずかしいんですけど。
野口:ここですね。
坂口:恥ずかしいんですが<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>も10周年だし、SILENT POETSも25年もやってきて、続けているから今があるということで来てもらおうと思って。
野口:そうですよね。続けてるっていうことが大事ですよね。
坂口:さっきも言いましたけど、年々やっているうちに文化祭感が増してきているので、音楽だけじゃなくていろんなゲストが来るんですよ。ちらっと言いましたけど、今年はキョンキョン、小泉今日子さんも来るんですね。
野口:すごいなあ。
坂口:それで何をやるかというと歌うのではなくて、今、彼女は演劇のプロデューサーとして活動していて、自分でも朗読劇をやってるので、そういうので来てくれると。そういうエリアを越えて、ジャンルも越えていろんな文化をつくってきた人たちが集まるお祭りなので。
でも、「トリでSILENT POETS」と言ったら、また鹿児島のメンバーは「誰?」って(笑)。
野口:(笑)。
坂口:10周年で誰が来ると思ったら……。
野口:やっぱり節目で狙ってきますよね。絶対にそういう狙っている部分が自然とあるんじゃないですかね。
坂口:10周年だからすごく有名な人を呼ぶだろうと思われるんですよ。5周年だから何かやるだろうとか。それがね、頭にくるんですよ(笑)。
野口:ちょっとね、おまえらやってみろよという感じで。大変だよみたいなね。
坂口:周年だからネームバリューがある人を呼んで派手にやるというのはちょっと嫌で。自分でも10年目だって言ってますし、みんなでこうやってワイワイやるのはいいんですよ。でも、アニバーサリーセールとか、アニバーサリー何とかってモノを売りながら自分の誕生日を祝うって、何か変じゃないですか。
野口:自分からね。
坂口:そうそう。だからアニバーサリーのときこそ、バリューとかそういうことじゃなくて本当にやりたいことを……分かる人が分かるとか、分かんないけど来たらすごくよかったとか、それが一番やりたいことなので。
野口:それは、してやった感がありますよね。知らなかったけど聴いたらもうハマっちゃうみたいな。
坂口:そう。ハメてやろうと思って(笑)。
野口:それを外側から見たときに、みんなの空気感とかチルった感じとか、あの一体感というのが、やっぱり報われる瞬間というか。
坂口:そういうことをしたいなと思って、今年はSILENT POETSに来てもらおうと。
野口:あの(写真の)ロケーションで聴いたら最高ですよね。
坂口:生でやるのは2回目なので。
野口:そうなんですね。
坂口:たぶん今後もそうそうできないと思うんだよね。
鈴木:フェスをやり続けているのは、野口さんもそうですし、僕も別でやっていたりするけど、フェスのカラーが好きで来てくれる人が増えるといいなあと思っていて、ラインナップで動員が上下動するというフェスは目指したくないんですよね。例えば、ラインナップが出なくても(チケットを)買ってくれる人がいるというところに持っていきたいなあというのがあるんですけど、坂口さんはどうですか?
坂口:フェスとコンサートは明確に違うと思うんですよ。フェスというのはお祭りだから、近所の伝統的なお祭りに氷川きよしが出るから去年はいかなかったけど今年は行くというのではないでしょ?
鈴木:ないですね。
坂口:誰が来たって行くんですよ。祭りは祭りだから。出店があって、盆踊りがあって、それでもしかしたら歌のうまい人が来て何かやるかもしれないけど、それはもうあくまでも副次的なもので、メインはその場所、祭りがあるということ。フェスというのは祭りじゃなきゃいけない。
野口:そうですね。ある程度続けている価値があるというのは、そこに尽きるのかなという気がしますね。
坂口:だから根源的な形だし。だけど、だからといって昔ならではのものじゃなくて、新しい表現の祭りが欲しいと思っている人たちが、世の中にはこれだけいっぱいいるってことですよ。
野口:そうですよね。
坂口:だから日本中にいっぱいローカルフェスティバルみたいなのが増えてきて、それはやっぱり祭りの場みたいなものをみんな求めているんですよね。
野口:欲してるんでしょうね。
坂口:そこに欲してるものって、たくさんのラインナップでくるのは別に何とか会館でもいいし、東京に来ればいつだってそんなのは観られるんですよ。
野口:やってますもんね。
坂口:ラインナップも一つの楽しみだけど、それはあくまでも一つの楽しみでしかなくて。やっぱり自分の地元の、その土地ならではの祭りをつくるとなったら、その場がどれくらい楽しいのか、その場にどれくらい関わりたいかなので、そういうものを追求していきたいなと。
野口:大事ですね。勉強になります。
坂口:いやいや(笑)。
野口:ありがとうございます。うちらも本来のフェスの在り方とか続けることとか、そういったことを今回はもう一度見直せて非常にありがたかったので、ぜひ次の糧にできるようにしたいと思います。坂口さんにぜひブッキングの相談をしたい(笑)。
坂口:さっきも向こう(トークショー)でも話しましたけど、僕らは<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>でやってて、<結いのおと>があって、他の街にも(フェスは)たくさんあるじゃないですか。それが横でどんどんつながっていくといいなあと思うんですよね。東京で活動している人がどうのこうのじゃなくて。まあ、そういう人も移動するんだけど、もう東京を必要としないで、並列で、それぞれがやっていることを紹介し合うとか。「<結いのおと>ですごくいいパフォーマンスをやったから、まだ誰も全然知らないけど紹介するね」とか。「じゃあ鹿児島でやってるアーティストはいっぱいいるから、今度は僕らが茨城に行きますよ」とか。そういうことが起きてくるとすごくいいなあと。
野口:すごくいいなあ。ぜひそういうネットワークをね。哲さんがつくってくると(笑)。
鈴木:<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>にできていて<結いのおと>がまだチャレンジできていないのは、地元のアーティストというか、アーティストじゃなくてもいいと思うんですけど地元で音楽をやっている人をフェスに出すということですね。2年に1回くらいはあるんですけど、毎年連続でできるといいなあと思いますね。
―皆さんありがとうございました。最後に坂口さんからもう1曲リクエストを頂きましたので、今年の<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>にも出演される二階堂和美さんの『幸せハッピー』を聴きながら締めたいと思います。
今回のトークショーを通して、本当にやっぱりエモーショナルな部分というか、お2人の思いが鹿児島と結城、それぞれの街をどんどん変えていっているなと思いました。自分も2つのイベントに何度も参加してみてそれをすごく感じているので、<レコード部>としても横浜の街でその感じたことを何か表現できていけたらなと思っています。
野口:ぜひ、これからもよろしくお願いします。(レコード部)橋本さんは結城にも何回か来てくれてDJをやってもらっているので。
―参加者からのリクエストを受け付けながらリアルタイムで、spotifyを使って選曲するスタイルでDJをやらせてもらっています。
野口:そうですね。あれはすごく面白いですね。
―ありがとうございます! では、最後の曲の準備ができましたので、二階堂和美さんの『幸せハッピー』を聴きたいと思います。
♪二階堂和美/『幸せハッピー』(HAPPY HOUR)
―本当にお忙しい中、お2人にはこのような時間をつくっていただきまして、ありがとうございました。
野口:はい、ありがとうございます。
坂口:ありがとうございました。
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<GOOD NEIGHBORS JAMBOREE>
<結い市・結いのおと>
♪プレイリスト
【GOOD NEIGHBORS JAMBOREE】
M-1 Double Famous/『DF』(DOUBLE FAMOUS)
M-2 EGO-WRAPPIN'/『くちばしにチェリー』(Night Food)
M-3 TOKYO No.1 SOUL SET/『Wonderland』(Grinding Sound)
M-4 ハナレグミ/『明日天気になれ』(hana-uta)
M-5 こだま和文/『LA BIRDS ROCK"遠雷"』(A SILENT PLAYER)
M-6 大橋トリオ/『Cherry Pie』(PARODY)
M-7 UA /『大きな木に甘えて』(11)
M-8 cero/『Summer Soul』(Obscure Ride)
M-9 スチャダラパー/『サマージャム'95』(5th wheel 2 the Coach)
M-10 SILENT POETS/『Quiet Bird』(Words and Silence)
【結い市・結いのおと】
M-1 bonobos/『THANK YOU FOR THE MUSIC』(electlyric)
M-2 U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS/『サマージャム'95』
M-3 Nujabes,Shing02/『Luv(sic) pt3』(Modal Soul)
M-4 BASI(韻シスト)/『あなたには』(RAP U)
M-5 Kan Sano/『Magic!』(k is s)
M-6 LUCKY TAPES/『レイディ・ブルース』(Cigarette&Alcohol)
M-7 七尾旅人/『サーカスナイト』(リトルメロディ)
M-8 曽我部恵一(サニーデイ・サービス)/『青春狂想曲』(東京)
M-9 EVISBEATS feat. 田我流/『夢の続き』(ムスヒ)
M-10 ビューティフルハミングバード/『夜明けの歌』(HIBIKI)
Double Faamous feat.二階堂和美/『幸せハッピー』(HAPPY HOUR)