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ちょっとブルーになるかもしれない未来に備えて-『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んで-

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読みました。偶然手に取った本ですが、国際結婚で子どものいるわが家にとってはとても面白く、意義深い本でした。

著者はイギリスで暮らしている日本人で配偶者の方がアイルランド人で中学生の息子さんがいわゆる「ハーフ」*。この本は、その息子さんを中心とした日々を記したエッセイのような本です。イギリスという国で、階級社会が色濃く残っていることが伝わる出来事や、移民も多くマルチカルチャルな社会におけるコミュニケーションの地雷について感じた出来事などが綴られています。

書名に色がついていることが印象的な本ですが、これは息子さんが宿題のページに走り書きしたメモで、「イエロー」は日本人である母親を、「ホワイト」はアイルランド人である父親を、そしてその両親を持つ息子さんが「ちょっとブルー」な気持ちであると記したもの。

この本をきっかけに、「国」や「人種」という観点で、国際結婚における子のアイデンティティについて考えさせられました。

わが家は日本人であるわたし(母)と中国人である夫(父)の結婚で、ばおばお(娘)が生まれています。

本の中では、著者の実家がある福岡で、小さい頃配偶者似でおそらくヨーロッパ系の人に見える息子さんが、地元の子どもたちに「ガイジン」と呼ばれていたことを知り「なんか失礼」だと思ったという場面があります。

「ハーフ」はマイノリティです。人は自分と異なる存在を遠ざける傾向があり、ことさら日本では人と違うことはよく思われないことが多いです。特にわたしの配偶者の国はメディアで良いニュースよりも悪いニュースを聞くことの方が多い国であることはわたしも知っています。

もしかしたら、「ハーフ」であるばおばおも、もしかしたら「ちょっとブルー」になる経験をするかもしれない。

「『ばおばお』は『ばおばお』であって、国は関係ない」

のは間違いないし、諸手を挙げて賛成だし、母はいつでもばおばおの味方なのだけど、それでも。仮に、差別の目を向けられたり偏見だと感じるような、そうした場面にあたったとき、課題に向き合い解決するのは本人なのだけど、わたしは親として彼女を守れる関わりをしてあげたい。


まだまだ具体的なHOWとしてどうしたらいいのかはわからないのですが、ものの見方についてメタ認知をすること、その過程や結果として言語化をし続けることは一つヒントなのではないかと感じました。そしてその差異をスルーすることも。

本の中で、著者が日本のDVDレンタル店で邪険にされた経験を

自分が属する世界や、自分が理解している世界が、少しでも揺らいだり、変わったりするのが嫌いな人なんだろうと思った。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』P156

と述べています。

この文章を見てわたしは、著者の言語化の能力はすごいなと思いました。相手の立場で、相手の視点になって物事がどう見えているのかを「わたし」が言語化する。

言語化するというのは世界や概念に境界を引くことだと思うので、よりクリアに世界を認識することができるし、人は正体不明なものに恐れを抱くので言語化することで恐れが少し減るのではないかと思うのです。

そのときに相手を決めつけるのではなく、相手の立場から世界がどう見えているのかを言語化することもポイントなのだろうなと思いました。

別の章で似たような言葉として、「自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみること」として「他者の靴を履く(put oneself in someone's shoes)」という表現が出てきます。

この本では「気持ちを想像してみること」とありますが、続編となる『他者の靴を履く』では、

「他者の感情や経験などを理解する能力」

『他者の靴を履く』P14

と定義されており、わたしは著者と同じくこの後者の定義としての「他者の靴を履く」が多様な人々の暮らす社会ではより重要になってくるのだろうなと思っています。(わたしはどちらかというと「他者の眼鏡をかける」の表現の方がしっくりくるのだけども)

この「他者の靴を履く」ことをわたしが代わりにやってみてあげたり、「他者の靴を履く」能力を磨く手伝いをしてあげたり、


そして、その差異をあって当然のものとして同化させるのではなくスルーする力というか鈍感力みたいなのを育めればなお良いのだろうな。

https://globe.asahi.com/article/13985082

よく夫も「日本人は自分の想定内の反応が返ってこないとすぐびっくりする」と言っています。わたし自身も、「違和感への耐性」というか「違うんだな」という諦めというか鈍感力みたいなのも、多様な価値観のある生活では必要なんだろうと感じます。


そういうことができたら少しばおばおの世界が優しくなるのかなあ。

わたしは娘が、もしそういった「ちょっとブルー」になるようなことがあったときに、彼女を守れる言葉をかけてあげられるようになりたいし、彼女が安心して帰ってこれる居場所でありたいなと思っています。

貧困や格差問題、国籍や家族・ジェンダーの多様性に興味関心がある人におすすめの本です。

*ハーフという言葉に差別意識を感じる人もいるようですが、良い言葉が見つからない(わたし自身は「ミックス」という言葉にも違和感を感じるので…)ので、鍵括弧付きの「ハーフ」としています


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