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US製Wi-Fiドアベルを導入して撤去した話
日本未発売の米国メーカー製のWi-Fiドアベル(Arlo Video Doorbell)を戸建住宅に導入してみて結果として撤去した、という話です。
なお、法令や規制に関する是非は述べません。特に電波の適性利用や家電製品としての安全についてはご自身でご判断いただくことが前提となっていますのでご了承ください。
なぜインターホンを置き換えようとしたか
私の自宅は戸建てで、インターホンにはアイホン社のベーシックなものがついていました。
インターホンの呼び鈴が押されれば「ぴんぽーん」と室内側の親機が鳴り、通話ボタンを押せばすぐに画面が表示されて、玄関のインターホンのカメラ映像を見ながら通話ができます。
日本の住宅の感覚として当たり前ですね。
子機は付いていませんでしたが、まぁ家の中にいるときはたいていリビングにいるので、親機のみで支障なかろう、と思っていました。最初は。
我が家は2階にリビングがあって、そこにインターホン親機があります。
玄関は1階。
2020年現在のコロナ禍の影響もあり、日中は家にいてもリビングから離れた部屋にいる時間が長くなっており、インターホンが鳴っても出られない状況が多々発生していました。
既存のインターホンに離れた部屋に置ける子機を増設できれば良かったのですが、残念ながら最初についていたアイホンのインターホンがベーシックすぎる機種だったので、子機は有線でしかつけられなそう。
1階と2階をインターホンの拡張のためだけに有線で配線するのは無駄に思えたので、無線化したいと思ったのが置き換えようとしたきっかけです。
なぜアイホンやパナソニックを選ばなかったか
日本のインターホン市場はアイホンとパナソニックが2強。
この2社にも無線子機やスマホ対応はあります。
が、家の中にはすでにWi-Fiで無線環境があるし、申し訳ないですが両社のスマホアプリはどうにもいけてなさそう。
同じ会社で製品ごとにアプリが複数あるし、いつまでアプリが提供・サポートされるかもきわめて怪しい雰囲気を感じます。
スマホが使える機種は高級機種扱いで、親機・子機あわせて5万円くらいの投資になりそうなので、買って2〜3年でアプリが終わったら悲しい思いをしそうです。
それなら、もうちょっと安いWi-Fiドアベルにしてみても良いのでは、と思いました。
なぜArloを選んだか
日本のAmazon.co.jpにはいくつかWi-Fiドアベルが並んでいます。
セキュリティはともかく、政治的にインターネットの国境が閉じてしまいそうなカントリーリスクを考慮すると、製造・開発は米国あるいは台湾あたりの企業のものを選んでおきたいところ。
台湾企業のものはうまく見つけられなかったので、消去法的に米国のものになります。
選択肢は他にAmazon RingとGoogle Nest Helloがありました。
Google Nest Hello
https://www.bestbuy.com/site/google-nest-hello-smart-wi-fi-video-doorbell/6172796.p?skuId=6172796&intl=nosplash
※Amazon.comに取扱はなく、Googleストアのオフィシャルページは日本にリダイレクトされてしまうので
個人的観点では価格・機能・性能的にはこの3者にほぼ優劣はなく、以下の3点からArloを選び、米Amazon.comで購入しました。
我が家には他に2つArloのカメラがあり、Smart Hubという有線LAN-無線ブリッジに接続されていてローカルストレージが共有できること
Arloアプリが日本でも利用でき、日本未発売のドアベルにも日本語で対応していること
Amazon Echo DotとEcho Show 5があり、これらに対応したWi-Fiドアベルなら、呼び出しとビデオ通話ができること
ほぼArlo決め打ちなわけですが、Amazon Ringは日本ではアプリが使えず、米Amazon.comが海外発送に対応していない、Google Nestの画面付きデバイスが我が家にない、というのも事情としてはありました。
越えようと思えば越えられる事情なので、全くのゼロから選べるなら他の2つも十分選択肢にはなります。
なお、いずれのドアベルも米国外での利用にメーカーのサポートはありません。念のため。
日本の住宅にポン付けできるか
このニッチなnoteをご覧になる方にとって、一番気になるポイントでしょう。
残念ながら、Arloのパッケージに入っているものを日本の住宅のインターホン配線にそのままつないでも動きません。
理由は、親機から玄関への供給電圧が日米で異なるためです。
インターホンは、日本のものも米国のものも、親機から玄関に2本だけの配線でつながっています。
この配線は、音声・映像の信号線と低電圧電源とを兼ねています。
信号はどうとでもなりますが、問題なのは電源の方。
許容電圧には若干幅があるようですが、日本のインターホンはDC10V以下、米国のドアベルはAC16-24Vで、互換性がありません。
したがって、玄関側にAC16-24Vをなんらかの手段で供給するか、Amazon RingのようにAC電源不要でバッテリー交換式のものを選ぶ必要があります。
幸い、米国でもインターホンに必要な電源が来ていないときに追加するためのAC115V-AC18Vコンバータが売られているので、これを一緒に買いました。
インターホン親機側をこれに置き換えるわけです。
直流(DC)ではなく交流(AC)なのでご注意ください。
秋月でPC用のDC18V電源買っても動きませんからね。
なお、配線方法によっては住宅内のAC100Vを扱う電気工事にあたります。念のため。
すんなりつながったか
2-3時間、試行錯誤しました。
電源をつないだあと、最初にスマートフォンのArloアプリとドアベルをペアリングしてSmart Hubに接続するのですが、このときに両者が同一の無線LANアクセスポイントにつながっている必要があります。
我が家は複数のアクセスポイントを同一のSSIDで運用していて、宅内と屋外が別アクセスポイント経由になるので、その構成のままではArloのプロトコル的に双方を発見できないようです。
ペアリング時にだけ、複数あるアクセスポイントを止めてやる必要がありました。
一度Smart Hubにつながってしまえば、あとは既存のWi-Fiは使わないので問題ないです。
あと、屋内で接続テストしてしばらく放置してから屋外に設置したのですが、その際に、LEDが赤白点滅してペアリングができないという事態が発生しました。
Arloビデオドアベルにはバッテリーが内蔵されていて、AC電源から充電して動作するので、このバッテリーが十分に充電されていない状況で赤白点滅は発生するようです。
しばらく電源に接続して放置したら、正常にペアリングできるようになりました。
スマートフォンで呼び出し音が鳴って通話できるか
呼び鈴が鳴らされると、ArloアプリをインストールしたスマートフォンとAmazon Echoに通知が来ます。
何台までいけるかわかりませんが、少なくともスマートフォン2台とEcho 2台で同時呼び出しはできました。
呼び鈴が押されてからスマートフォンに通知がくるまでのタイムラグは5秒程度。
1階にいて玄関や外の気配がわかるとラグを感じますが、2階からなら気にならないでしょう。
Arloアプリでの通話は呼び出しの時ほどラグは感じません。
実際の音を聞きながらだとうまく会話できない程度にラグはありますが、デジタル通話製品は所詮そんなもの。
動体検知機能があり、呼び鈴を押されたとき意外にも反応するエリアの設定ができるので、ちゃんと設定すれば使えそうです。
我が家は玄関がすぐ道路に面してしまっていて動体検知すると通知が頻発するので使いませんでしたが。
EchoでArloアプリ同様に使えるか
ダメでした。
Echoに呼び出し通知はくるものの、Echo Showでのビデオ通話はできません。
また、呼び出しは「ドアベルの前に誰かいます」と音声でされますが、Echo Show画面には何も表示されません。
ビデオ通話するためには、「Alexa、(デバイス名)を表示して」とか「Alexa、(デバイス名)を見せて」と音声コマンドする必要があります。
自分 「Alexa、ドアベルを表示して」
Alexa「わかりました」(Arloを待機中、の画面表示)
Alexa「すみません、ドアベルが応答していません」
となるのはまだ良い方で、
自分「Alexa、ドアベルを表示して」
Alexa「ドアベルをお探しですか?」
自分「…???」
(放置すると、「ドアベル」のWeb検索へ)
ということもままあります。
Arloの他のカメラもEcho Showからつながらないので、なにか我が家の環境特有の問題があるのだと思いますが、手がかりがないです。
Arloサポートページには「Alexaスキルを再設定して、ArloとAlexaでデバイス名を同じにしてください」的なことが書いてあるのですが、日本語表記で見た目に同じ文字列だからといって、Alexa-Arloのアプリ処理的に名前が同じとは限らなそうです。
かといって、両アプリの設定を英語にすると自分の発音的に確実に音声認識させるのは無理そう。
アプリケーション同士がどうコミュニケーションしていて、何がどううまくいっていないのか、ユーザーからの手がかりがなさすぎで、プロトコル層が見えないことにフラストレーションが溜まっていきます。
なお、Arloアプリ同様、Alexaアプリも日本語でArloビデオドアベルには機能的に対応しています。
Echo以外になにが問題だったか
割と致命的だったのが、インターホンに見えないらしいこと。
「ドアベル」という名前の通り、米国での使われかたは玄関ドアの枠にとりつけるイメージで細長い形をしています。
一方、日本の「インターホン」はもうちょっと広い面積のところに四角い姿でついているのが主流、というかこの形のものしかない。
機能的には、カメラと呼び出しボタンとマイク・スピーカーさえあれば良いので、もっと小さくても良いわけです。
が、縦横4:3ぐらいの四角い形がインターホンのアイコンとして定着してしまっているので、日本ではあまりそれとかけ離れた姿のものはインターホンだと思ってもらえないようです。
宅配が来たときに在宅なのに不在票になる率が上がりました。
あと、自動応答の音声が日本語ではないことがこわがられる理由になりました。おもに家庭内的に、ですが。
Arloビデオドアベルには、不在時に自動応答したり、定型メッセージ応答できる機能があるのですが、「Can I help you?」とか「Please leave a message」的なことを低めの男性の声でしゃべります。
セキュリティ的に意味があるのだと思いますが、日本で予期せずこれを聞くとかなり動揺する、というのはわからなくはないです。
というか、想像してみていただきたいのですが、静かな住宅街にいきなり英語の低い声が流れると、内容云々以前に、サイレンの後に「VIPER ARMED!!」と叫ぶカーセキュリティのアレみたいな結構不穏な空気が流れます。
Arloアプリの設定で自動応答の言語を変えたり、不在時応答をOFFにすることはできますが、残念ながら言語の選択肢に日本語はなく、自分で応答メッセージを吹き込むこともできません。
結果。
元々の状態から便利になったのは「スマートフォンで呼び鈴に応答できる」ことで、それ以外の本来のWi-Fiドアベルの便利さは享受できないどころか、IoTオタク的な自己満足とセキュリティ向上と引き換えに家族や近所に不安を与えてしまいかねないことになりました。
やむなく、我が家のインターホンはもともと付いていたアイホンのベーシックなものに戻されることに。
代替品はあるのか
個人的に、Wi-Fiドアベルが欲しいな、というのは変わりません。
なので、ArloやRing、Google Nestが日本でドアベルを正式展開したらまた買うかもしれません。
形状的に四角いインターホンじゃないと受け入れられない、というのは時間が解決しそうな気がしますし、どうしてもと言うなら日本向けだけ四角いカバーでもつければどうにかなります。
が、DIY前提で提供できる米国とはだいぶ環境が違うので、少なくとも電圧差の問題の解消と、もう少し他機器との接続性を良くしないと、日本の市場で受け入れられるのは難しいかもしれないですね。