自分の闇と他人の闇は比べられないのに
私のこれまでの人生(とは言っても、まだ25年足らずしか生きていない若輩者ではありますが)を振り返って、家庭環境や恋愛面ではあまり良い思いをしたことがなかったが、友人関係には恵まれたと思っている。
それは友人が多いということでは決してなく、寧ろその逆だ。
私には友人とはっきり呼べる人が1人しかいない。
彼女との出会いを除けば友人関係でもあまり良い思いをしたことはなく、それは上部だけの薄っぺらな人間関係をすぐに断捨離したくなる、私の捻くれた性格に起因する。
「運命の人」という言葉は私が幼い頃からよく聞かれるが、神様は恋愛の方面で私に「運命の人」を与えてはくれず、代わりにかけがえのない友人・Mと巡り会わせてくれたのだと思えるほど、私とMは気が合う。
Mとの出会いは私が高校2年生、Mが高校3年生の時。
バイト先の休憩時間中に、それまであまり話したことのなかったMに声をかけられた。
栗色のボブヘアに大きなメガネをかけた、お菓子みたいにふわふわした女の子。
それが私が抱いたMへの第一印象だ。
Mは可愛らしい声(声優だと花澤香菜さんに近い)で私に言った。
「一緒にケーキ買いに行こ!」
か、かわいい・・・・・・
それがキッカケとなり、私とMは今年で出会ってから10年を迎える親友となった。
この10年間、3ヶ月以上会わなかった日は恐らくなかったのではないか。
2年に1回は2人で旅行へ行き、現在まで極力月1のペースで遊んでいる。
少し抜けている所はあるけれど、温和で優しいMは私にとってお姉ちゃんのような存在でもある。
ただ、あまりに優し過ぎて、親しい友人間以外では自分の意見を主張できない一面もある。
自分にも他人にも最大限優しく。10年一緒にいて、それがMなのだと私は思っている。
この10年間、主にMの身にではあるが、あまりに色々なことがあり過ぎた。
記憶に残っていることを時系列で挙げていく。
・Mがバイト先で知り合った友人と絶縁
(私たちほどではなかったが、当時Mは彼女とも旅行に行くほど親しくしていた。
しかし、身勝手な面がありながら世渡り上手なその友人に、Mは辟易していたようだ。)
・Mがバイト先で親しくなった年上女性にお金を貸し、数年もの間返してもらえない。
(その年上女性は私の先輩でもあった。3人でカラオケに行ったこともあるくらいで、Mがその件について旅先のディズニーで私に初めて打ち明けてくれたことを今でも鮮明に覚えている。
因みに一昨年くらいにお金は返してもらえたようだ。)
・私がバイト先の社員にガチ恋。
(Mと遊んだ際も開口一番にその社員の話をしていた。告白して付き合うことはなかったが、2人で飲みに行ったりデートしたり・・・・・・思い出したくない黒歴史だ。)
・それまでイラストの仕事をしていたMが仕事を辞める。
Mと知り合ったバイト先でフリーターをしていた私も退職し、飲食業→IT関係へと転職する。
・Mがバイト先で知り合った主婦さんに「甥と付き合わないか」と勧められ、韓国在住のその甥へ会いに行く。
しかし、結果は思わしくなかったようだ・・・
そんなこんなで、色々なことがあった。
その間も私たちは頻繁に会い、お互いの誕生日(なんと、たったの2日違いである)にはプレゼント交換をしてケーキを食べ、旅行にも行った。
私はMのことが好きで、かけがえのない大切な友人だと思っている。
Mという存在を失いたくないからこそ、彼女に対して抱いてしまったモヤモヤとした感情を口に出すことが出来ず、「まあ、私が我慢すればいいか」とやり過ごしているところもある。
Mに対してのモヤモヤと言っても、Mに非は殆ど無い。
別の人間同士なのだから、性格や考え方が違うのは当たり前のことだ。
Mに全く悪気はないこともよくわかっている。
けれど、それでもやっぱりモヤモヤしてしまうのは、私が自分に自信がないからなのだと思う。
Mには数こそ少ないが、小学校からの付き合いの友人が何人かいるようで、彼女たちともそれなりの頻度で会っているようだ。
私と同様に両親の離婚を経験しているが、私と異なるところは、Mには信頼のおける母親と、親友のような姉妹がいるということ。
生まれ育った家庭環境と、過去の失敗が原因で学生時代の友人もおらず、母親とも疎遠になっている私は、Mを羨ましいと思うことが時々ある。
それなのに、「仕事ができないから自分には結婚しかないかもしれない」という考えに陥り、軽いうつを患って薬を服用しているMに、私は少しモヤモヤしてしまうのだ。
私自身も学生時代に家庭環境が原因で精神的に参ってしまい、自殺未遂をして児童精神病棟に入院したり、一時保護所で2年近くも生活していたりと、なかなかに歪んだ人生を歩んできた。
手を差し伸べてくれた人はいたけれど誰の手を取ることも出来ず、「自分のどこが間違っているのか」を常に自問自答して、社会の中で傷つきながら生きてきた。
自身の抱える闇と、他人の抱える闇は比べられない。
私よりも辛い傷を背負い、それでも前を向いて懸命に生きている人は大勢いる。
隣の青い芝生の中に居る人が自身の不幸を嘆き、心を病んでいるなら、私は彼女になんと言ってあげればいいのか。
現状は「大丈夫だよ」と言って彼女の良いところを褒めて、励ますくらいのことしか出来ない。
LINEの返信が元からかなり遅く、現在も私から送ったメッセージはMに読まれることを待っている。(急用ではないから別にいいのだけれど)
胸の内側に溜まったモヤモヤがイライラへと変わって何もかも壊してしまう前に、もっと外の世界へ目を向けよう。
自然のある場所へ行こう。絵画教室へ行こう。美味しいものを食べよう。仕事を頑張ろう。
そうやって自信という鎧を纏い、青い芝生で病んでいる人に対しても、暖かい気持ちで手を差し出せる人間になりたいと思う。
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