ちょっとした中毒
今年のゴールデンウィークは八日連続で休みらしいけど、特に出かけたりしないしいつもの休日と変わらないよなと思っていた。それは大きな間違いだった。
おるばくんの料理が食べられないのがこんなに辛いなんて!
一応ゴールデンウィーク中に二日かけてキャンプしに行く予定はあるけど、そんなに待ってられない。この三日間で体感2キロは痩せたと思う。
おるばくんは家の仕事の手伝いで忙しいから……と思って諦めていたけど、おるばくん家に行こう。死活問題なので。
コンビニ行く以外の外出がなかったからか、身体が重たい。痩せてるはずなのに変だな。お腹が空いてることもあって、おるばくん家がすごく遠く感じる。到着したらしたで、お店がすごく大きくて、自分がちっぽけに感じる。
店の表はお客さんが注文したり商品を待っていたりで、七、八組並んでた。行楽用の総菜セットが人気らしく、揚げ物のいい匂いに包まれる。
お店の裏戸をノックすると、汗だくのおるばくんが出てきた。
「手伝いに来てくれたのか!助かる!あと一時間で一旦店閉めるから、一段落したら一緒に飯食おうぜ!」
「喜んで!」
お店の人気商品のコロッケを大量に揚げるための手伝いをした。僕はおるばくんみたいに料理が得意じゃないから、ずっとホクホクのジャガイモを潰していた。潰し具合が決まっているらしく、粗目に潰してくれと言われたけど、見せたら「粗すぎ」と言われた。料理って繊細なんだな。厨房で手伝いしてる一時間は、目の前にあるのに食べられないもどかしさに何度も苦しめられた。
結局休憩まで一時間半かかり、慣れない仕事でふにゃふにゃになった僕に、揚げたてのコロッケを持ってきてくれた。
「この一番大きくて、おいしそうなのましゅにやるよ」
そう言ってお皿に移してくれた。衣がサクサク、芋ホクホクだけどゴロゴロで美味しい。毎食このコロッケでいい。これがいい。
「おるばくんのコロッケ、毎日食べたいなあ」
なんかプロポーズみたいじゃないか?
「いいぞ!」
快く承諾してくれた。僕だけちょっと恥ずかしくなって、ふーんとしか言えなくなった。