芋づる
こんばんは。
友人の 惚気に時差で 気づく時
上がる口角 止まらぬニヤケ
短歌を詠むタイプのオタク、眼鏡のモブです。
(※当然のようにモブ視点)
今度中学校の時の同級生と遊ぶことになった。こっちまで来てくれるみたいだし、なんか美味い店にでも連れてってやりたい。と思いつつも、俺は普段誰かとご飯を食べに行くことがそうそうないので、人を連れて行けるような良い店なんて知るわけが無い。
そこで、いつも2人組でつるんでいるクラスメイトの片方に、2人で食べに行くのにオススメのお店を聞くことにした。我ながら名案である。授業の終わりの挨拶のあと、すぐにましゅに声をかけた。
「おーい、ましゅ。ちょっといいか」
「なに」
気だるそうにこちらに近づいてくる。
一応書いておくが、俺のことが嫌いだから気だるげなのではなく、こいつは体育があった日の後はいつもこうなのである。
「今度元中のやつがこっちに遊びに来るんだけど、近場でいい飯屋知らね?」
「近場か〜。んー」
そう唸りながら、すぐにスマホで写真アプリを開くましゅ。写真を見ながら思い出そうとしてくれているのだろうか。なんだかんだ言って、義理堅いし真面目に考えてくれるし、良いやつだよお前は。
「いい店思い出したけど、店の名前忘れたからちょっと調べる」
えーっと、と呟きながら単語を打ち込み検索をかける。親指が何度か上下して出てきた画像をまじまじと見つめるましゅ。
その横顔を見て、俺は思った。
まつ毛、長いな。
「あ、これは……。」
「お、思い出したか?ましゅ」
「いや、違うお店だった。これはクリスマスに行ったんだけど、探したいのは去年の秋に行った店」
「へー」
美味しかったけどね、と言うとしばし沈黙。そして「また違った…」とぽつり。
「ちなみにその店はどんな?」
「これは割と最近オープンしたハンバーガーショップ。2人でシェアして食べるセットがオススメ。だけどここからだとちょっと遠いかな?
おるばくんとは2か月前位に行ったかなぁ」
「なるほどね」
俺は頷く。そして確信する。
今日は惚気が小出しにされて出てくる。
良いと思います。
「知恵は小出しにせよ」って言うもんな。
いや、意味知らないけど。
(ちなみに意味調べたら全然思ってたのと違った)
「なんだっけ。これも行ったことある」
「それはいつ行ったん?」
「映画見た帰りに寄ったから……1年くらい前?結構前だ」
「その店は?」
「いつだっけ?キャンプグッズ揃えに行こうってなった時だから……。」
結局目当ての見つからないままチャイムが鳴ってしまい、ましゅは「名前忘れた」と分かりきったことを再度俺に伝えてから席に戻った。
友達を連れて行くお店は決まらなかったけど、俺は満足したので良しとする。