ヤマメを釣りに行こう
「うぇ……。よくミミズ付けられるね」
「慣れだからな。一応食パンとかでも釣れるぞ」
「先言ってよ」
今週は川釣りしに三十分歩いてきた。先週はハイキングで筋肉痛がやばかったから、釣りで助かったと思ったら虫じゃん。初見殺しが過ぎる。
「アウトドアは春夏秋冬いつでも楽しめるけど、やっぱり冬は魚が美味しいからな。もう春が来る直前って感じだけど、せっかくなら一緒に釣りたかったんだよな」
「春休みでもよかったかもね、思ったより風が寒い」
「確かにな。釣ったらすぐ食べられるように火でも焚いておくか」
「本当に何でもできるんだね君」
僕が燃やすための枝を拾ってきた間に、おるばくんがもう魚釣ってた。でも逃がした。
「なんて魚?」
「イワナ。稚魚だから逃がした。俺はヤマメの方が好きだな」
「ふうん。釣れるといいね」
「お前も釣るんだよ!」
どのくらい経ったか分からないけど、コツコツコツって感触がするのに引っ張ってみても魚かかってないし、かと思ったらいつの間にか餌取られてるし、釣りって難しい。僕がおるばくんに四回餌付け直してもらう間に、おるばくんは魚三匹も釣った。(そのうち一匹は小さいからまた戻した)
結局その日釣れたのはこれだけで、一人一匹ずつ串焼きにして食べることにした。おるばくんが刃物立てて魚締めてたのは、なかなかショッキングだった。
火を見つめながら自分の才能の無さを嘆く。
「ヤマメ釣りたかったな。何でもいいから釣りたかったけど、釣れるならヤマメがいい」
「またリベンジしに来ようぜ」
おるばくんは、にーっとして焼きたてのイワナにかぶりつく。今日の僕は終始どうしていいか分からず、正直なにが楽しいのかまだ分からなかったけど、君といる時間は心地よくて、全く敵わないよ。
帰り際、行くならもっと暖かい方がいいかなって言ったら、翌週末はボルダリングさせられた。「全身使うしあったまるだろ!」って。また全身筋肉痛だよ。