日焼け止め
(※モブ視点)
オレのクラスにましゅっていう、線の細い男がいるんだけど、何やらせても全然やる気がないっていうか、生気が感じられないわけ。おるばも何であんな奴とずっと絡んでんだろうな。あいつ友達多くて良い奴だし、グループ移ればいいのに。
女子はバドミントン、男子は野球で分かれてて、野球は男子全体をさらに二チームに分けてる訳だけど、あんまり仲良くない方とだけチームが一緒になってしまい、大変気まずい。
こっちのチームは先攻だから、打順が回ってくるまでましゅの隣で気まずい思いをしなくてはならんのか。誰だ出席番号順で打順決めようとか言ったやつ。前の方の番号のやつがバカスカ球打つけどファールばっかりで、こっちは暇だし話すことないしさ。早く裏になれ。眼鏡焼けしたくないし、(他の奴にからかわれるのも癪だし)今のうちに日焼け止め塗っておこ。
体育着の腹のところを引っ張り出して眼鏡を拭き、顔を拭き、ポケットからこっそり日焼け止めを出して塗ったくる。ぼんやり見える隣の男が、何故かこっちを向いている気がする。
「……何」
「それ、貸してくんない。顔がヒリヒリするから」
「あぁ、お前全体的に白いもんな。……別にいいよ、ほら」
「どうも」
細いけどよく通る声。イケメンは何でも持ってんだな、むかつくわ。でも日焼け止め塗るのはへったくそなんだな。教えてやる義理もないけど。そんなこんなで次は俺たちが守備だからそれぞれの位置へ。そこへおるばが駆け寄ってくる。
「日焼け止め塗った?白く残ってるよ」
当然のように鼻や頬に残るクリームを塗り広げる。あーあ、おるばが手拭ったりしないから、ましゅの顔は砂だらけになる。
「ごめん!砂ついた!」
「ん……いい、ありがと」
ましゅの表情が和らぐ。は?そんな顔できるなら普段からそうしろ。その後も別に目立った活躍はなかったけど、まぁ、日焼け止めぐらいなら貸してやってもいいかなと思った。
あとこれは誰にも言えないんだけど、オレはクラスの男同士のやりとり見て、何とも言えないんだけど、胸がポカポカした……。