忘れられた地下鉄駅の秘密
奇妙な話をする男
金曜日の夜、僕は会社の同僚と飲んだ帰り道に、その話を聞いた。
「聞いたことあるか?東京には“存在しない駅”があるんだってさ」
そう言ったのは、口数の少ない同僚・吉田だった。飲みの席ではいつも聞き役に徹する彼が、こんな話をするのは珍しい。
「存在しない駅?」
「そう。地下鉄の路線図には載ってないんだけど、ある条件を満たすとその駅にたどり着くんだってさ」
「それって都市伝説だろ?」
僕は笑いながら話を流したが、吉田は珍しく真剣な表情だった。
「いや、俺の知り合いが実際にその駅に行ったんだって。そこには…普通の駅じゃないものがあるらしい」
吉田の言葉は酔った頭の中に妙に響いた。気味が悪い話だが、その駅がどこにあるのか、どうやって行くのかを詳しく聞くうちに、僕はなぜかその話にのめり込んでいった。
存在しない駅”へのルート
翌日、僕は吉田に教えられた通り、ある地下鉄駅へ向かった。新宿駅から一本で行ける小さな駅だが、そこに特別なものはないように見える。
吉田の話では、「存在しない駅」へ行くには次の条件を満たす必要があるという。
1. 終電近くの時間に電車に乗ること。
2. 特定の車両の中ほどの座席に座ること。
3. 降りる予定の駅を1つ過ぎたら、車両のドア近くに立つこと。
「そんな馬鹿な」と思いつつも、僕は半ば好奇心に突き動かされて、その指示通りに行動することにした。
終電間近の電車は空いていた。指定された車両に乗り込み、座席に腰を下ろす。外は静まり返っていて、車内も同じく静かだった。ただ、僕以外にも数人の乗客がいる。ビジネスマン風の男、カップルらしき若い男女、そして小さなカバンを抱えた中年女性。
駅をいくつか通過し、吉田の言う“ポイント”に近づく。終点の一駅手前で、僕は席を立ち、ドアの近くに移動した。その瞬間、電車がゆっくりと減速を始めた。
謎の駅に到着
次の駅に着くはずだったが、電車は奇妙なところで停車した。窓の外を見て、僕は言葉を失った。
「これ…どこだ?」
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