日々是雑感2017/9/04(2)
昨今美術界において具象画やある程度形がわかる作品が流行りのようだ。「写実の殿堂」とも称される千葉市のホキ美術館がその発端である。
しかし、写実であれ抽象であれ、作品が生まれる苦しみは計り知れない。自分自身も過去に知らない作家を知りたいがために、制作の現場から距離を置きつつ、美術館博物館やギャラリー巡りに余念がないのだ。もちろん、最近は精神的に落ち着き(ストレスフルな状況でお金も足りないがそれでもなんとかやっている状況)、やっと方向性を微細に調整しだしたところである。
ところで、その作品を作るために必要な画材や画材屋をめぐる一件で少しきになるところがある。
まず1点目に2015年に「フナオカキャンバス」で有名だった日本画材工業が倒産し、画材屋の商品ラインナップに少なからず影響が出ている。今日寄った画材屋は長野県内の画材メーカーが製造しているキャンバスが陳列されていた。もちろん国産材も外国産材も使われているが、日本のメーカーが残っていることは嬉しいことである。
2点目に今使われている画材の材料が手に入らずに終了、またマニアックな画材が販売終了になるケースが多くなっている点である。自分が高校時代によく使っていたマツダ油絵具の「ペインティングコーパルメディウム」も原材料の入手困難(多分購入価格の高騰も原因と思われる)で2013年5月9日に在庫限りでの販売終了となっている。この溶き油は自分にとって分身のような溶き油で、画面に堅牢で重厚な光沢を与え、古典画材を研究した自分にとっては思い入れのある画材である。コーパル樹脂は高級家具でよく使われると聞くのでおそらく画材より家具の方で需要が拡大したのかもしれない。
次に画材屋の商材である画材の価格が通常価格と乖離が進んでいる点である。勿論利用者にとって安い画材はありがたい話だが、ここまで価格が低減されている状況はさすがに美術関係者として看過できない状況である。画材屋もネット販売でジリ貧の状況のようで自前のサイトやアマゾンなどの大手で受注しているところを見ると、専門家として店舗で画材の状況を聞ける環境じゃなくなったのが寂しい。
時代は変わる、と自身はよく言い聞かせているが、さすがに変わり過ぎるとそれがいいとは言えなくなった。今日は、美術業界のジリ貧状況に嘆く自分を画材屋のショーウィンドウに見えた。