千秋楽を迎えたベイビーズへ
2024.2.26. 王子小劇場でひとつの公演が幕を閉じた
guizillen『ファンタスティックベイビーズ』
どうやらこれが劇団としては4年振りの本公演だったそうだ。4年、数で表せば簡単だが記憶の風化はあっという間で侘しさを感じる暇すら忘れてしまった。
今回はこの舞台にいた人物たちのお話を残していこうと思う。
あ、君。おはよう、元気かい?
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「さよならベイビーズ」
輝く真白きパンツ、ぷよぷよお腹に、優しい瞳、
皆んなが待ち望んだベイビーだ。産まれただけでお祝いされる存在、まさに「僕ちゃんはPerfect.」
なのに何がいけなかったんだろう、何を間違えたのだろう、バツを選んだら影のように生きなければならないの?ねえ、まま、教えて。
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この舞台に出てくる人物は現実世界に存在する、と思う。名前や出立ちが違うだけ。
変わる変わる人生があちらからもこちらからも振り子のように出てくる。
「これだから女は使えねえ」と喚く劇場責任者という名の無責任者。詰問されて泣き出す女性舞台監督。それを眺める人々。
パパ活が生きる手段のトー横キッズ、それを気にする浪人生と元トー横の大人。
社会生活不適合者と両親、兄弟、友人、クルド人。
宗教の行き過ぎた献金に身を削られる家族。
虐待で蝕まれた心をヒーローに埋めてもらう人。
俯瞰からすべてを見つめるベテランホームレス。
はたから見れば職も家族もある 普通 を送れていそうな夫婦と子ども。
歌に想いを乗せる路上ミュージシャン。
スーツのジャケットに「マ?」をつけちゃう曲がった性癖の持ち主。
ジョーカーとアシタカ、ヤックル、クマ
Youtuber.
もっともっと居たはずなのだけど。やだやだ、記憶が消えてしまう。
あ、そうだ、台本を買おう。
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「大人は笑ってくれない」
劇中いくつもの人生が出てくる中で随所随所 印象に残ったシーンがある。全てを覚えてはおけない脳なので、いくつかのシーンについて私自身の体感、体験、を交えながら残していく事とする。
トー横キッズと浪人生。
真っ昼間、プラスチックの柵が区画整理されたスペースを目の前に歌舞伎町タワーが建っているのを見上げる。ほんで歌舞伎町をふらふらと客引きを横目に区役所まで歩っていく。や、びっくりしたよね、区役所、ホストクラブ街を抜けた場所にあるもんで。トー横キッズたちが居る場所から程近くに役所あるやん。え?大人たちトー横キッズの事見てる?浪人生はこんな所に居たら…まあゲームセンターと映画館くらいは行こか。
都会がそうなのかもしれないけれども、人が大勢居てネオンが煌いていて、孤独と悲壮の空気がある街、隣にいるのに居ない、信号待ちの距離感のあの感じ。カイロや電気毛布じゃ得られない心や頭のあったかさが欲しい彼らに突然の雨で傘をあげるくらいの優しさは持ち合わせていたいと思った。
虐待とヒーロー。
デパートの屋上やショッピングモールの広場、日常に現れたヒーローは子供に希望を見せる。光るおもちゃや変身ベルトで誰かを救えたら。マスクを被って自分ではない何かになれたら。覆せない精神を明るみに持っていく強さを分ける事が出来たなら。向かい合う事で距離を詰められた姉弟は心まで離れていない事を願う。
親子と間にあるものと私。
宗教の話、子どもの話、お金の話、エトセトラ。
人間関係の難儀な所は心のインターフォンが簡単に押せない所だと思う。知ったかぶりや普通を押し広げ過ぎて「いやいや、そうじゃないんだよ。」がいつの間にか言えなくなってる。恐らくその否定も普通を押し通すための訳を言いたいだけだから。ミヤタという名前の男性が子どもと奥様の間で揺れに揺れているけども揺れ動くのは彼自身の根幹が優しいからだと思う。そしてこれは私の主観だが恐らく舞台上で生きていたみーちゃんの家庭は皆優しい。優しいからこそ波が静かなまま1日を終えるのがベストなんだと。主観がこの世に有り続ける限り尺度は横を寄り添いながらついてくるだろう。関係性や言葉の扱いの難しさを滔々と見せられた。はあ、自転車で風を感じに行こ。あ、ミュージシャンのお姉さん、1枚CD買います。
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「ごめん、そんなに強くないんだ」
大人になるとヒーローよりダークヒーローの方に惹かれるようになっていった。周りがAな時、私はBが好きだったりしてグッズを買う時は交換が決まりやすくて助かったりしてたんですけど。
「何でBが好きなの?」ってある日友人に聞かれた時、そういえばそんなに深く理由考えた事が無かったなって。んで質問には「カッコいいから」とかしょーもない返事してたんですけど、数年経って少し分かったような気がする。多分ね、ダークヒーロー程、清濁合わせ飲めないタイプが多い真っ直ぐなヤツが居るからだと思う。お、待てよ、ヒーロー、スタバの新作飲みに行こうや。
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