MASSARA-対リョウタロウ関係性からみる人間性考察-①ダン/カズト編
リョウちゃんばかり見ていたので、本筋と全く関係ないところで各登場人物との関係性とか、それぞれの性格とかバックグラウンドみたいなところばかり気になってしまい(笑)
ストーリー考察ではないし結論も何もないです。
まずはダン、カズト編
●ダン×リョウタロウ
みんなが進学する中で、お父さんの体調の都合(弟の学費面も支えるためだろう)で、大好きな野球も進学もあきらめ就職したダンの職場をみんなで訪れた時、みんなはダンを心配したが、彼は心配されるのを嫌がった。
というより、これ以上踏み込むな、という牽制というか拒否のような意志の強さすら感じ、普段のおちゃらけて天然でおバカで明るいキャラクターは、一線を踏み込ませないための鎧なのかもしれない、とも思った。
さらにはあの時のみんなから向けられる言葉は全てが同情っぽくて嫌だったのではないか?とも思う。
みんな悪意も悪気もないことはダンも分かっていらだろうけれど、それでも「泥だらけだね」って、綺麗な服着て親のお金で学生しているみんなに言われたらプライドも傷つくよね。なのにずっと明るくふるまうダンが良い子過ぎて痛々しい。
そんな中、別れ際にちょっと自嘲っぽく言った
「俺はこれからどんどん泥まみれになっていく」って台詞に対してカズトが「ダンの泥は頑張ってる証拠」と勇気づけるようなフォローを入れるが、リョウタロウは無邪気に「なにそれカッケー!」という。
リョウタロウ以外、よくも悪くも察しが良すぎる。みんな空気が読めて他人の感情の変化に敏感で大人だ。
リョウタロウの空気の読めなさはタカの失恋事件を引き起こす原因ではある(し、タカはそういうリョウちゃんにイライラしてそうだ)が、同時に、同情されたりフォローされたりする空気が続いていた中でも、空気を読まずいつも通りに無邪気に”対等に”笑ってくれる「りょーちゃん」の存在は救われたのではないか?と思う。
弱味を見せたり踏み込まれるのが苦手そうなダンにとって、察したりしない代わりに、変に踏み込んでもこないりょーちゃんとの居心地がよかったのかな、と感じたのは、野球のスカウトの話をリョウタロウだけが知っていたところに繋がる。
「野球で大学スカウトされてたじゃん!」
「も~りょーちゃん盛りすぎだって!試合を見に来ていたスカウトの人から高評価だって監督から聞いた、だけだって!」
「それでもすげーじゃん!」
リョウタロウはきっと話を盛ったつもりはない。
ただ純粋に「ダンは野球がすごい!スカウトの人も褒めるくらいにすごい!」というインプットを記憶していて、いまでもそれを誇りに思っているだけだから、細かいことは何でも良いのだろう。
これが高校時代のいつの話でどういう状況だったのか詳細は描かれていないので全てが想像だが、大学のスカウトの話が出るくらいなので高3でその時既にお父さんの体調は悪く進路に悩んでいた、もしくは大学進学は既に諦めていたと仮定すると、監督から「大学スカウト」の話を聞いた時は複雑だっただろう。もし本当にスカウトされていたとしても断るしかなかったかもな、とか、それくらい実力が評価されるならこれからも野球続けたくなっちゃうな、とか。
けど、そういう現実問題とは切り離して、褒められたという事実は絶対に嬉しくて誇らしくて誰かに共有したい出来事に決まっていて。
じゃあ誰と共有するか、そうなった時に嬉しいことをただ純粋に嬉しいと喜んでくれるのが、リョウタロウだったのかなって。
「辞めちゃうのもったいないよ!」とか無責任に期待させるようなことも言わないし、「せっかくそんな実力なのに、続けられないの残念だね」という言葉の裏の状況を組んだ同情も無しに無邪気に一緒に喜んでくれる、そんな存在だから、リョウタロウだけが知っていたのかな、と思った。
■カズト×リョウタロウ
大学1年ダンの職場で近況報告していた時↓
リョウ「そちらのエリートさんなんてもっと会えなくなった」
カズト「どうも、エリートです」
文化祭写真を見ながら↓
リョウ「一番仲よかった年な」
カズト「一番喧嘩した年でもある」
リョウ「お前のせいでな」
カズト「お前のせいだろ」
…とか、比較的対等に、テンポよく言い合い(掛け合い)をしている印象的なふたりだ。
・
カズトは少し浮いている。
いや、みんな優しいし仲良しだし表面的には決して浮いているわけではないのだが、育ちとか価値観とか偏差値とか、そういう要素が起因する周囲とのズレを第三者目線で感じる瞬間も、きっと彼自身も苛立ちやもどかしさを感じているであろう瞬間も度々あった。
5人と出会ったあの高校は、本来彼がいるべき世界ではなかった。高校受験に失敗してしまったから、大学までの腰掛けとして仕方なく入学しただけである。そして、そこで出会った5人イコール、本来出会うはずのなかった友達、ということだ。
彼自身、きっとそのプライドが捨てきれなかったから、もちろん5人を好きで大切に思っているとは思うが、それでも5人に対して「生きる世界がお前らとは違う」「だからお前らにはわからない」というバリアとプライドが、終始うっすらと、けど確実に存在していた。
彼の場合の生きる世界、というのは、偏差値的な頭の良さの話も勿論あるれど、それだけではなく、育ちや家柄的な差も含むものだ。
進学校もピンキリではあるが、超一流大学に多くのOBを輩出するような(私学の)名門高校となると、“一般的”な公立高校に比べると、ある程度“良い家”出身の割合は多くなるだろう。
何をもって“一般的”で何をもって“良い家”とするかはそれぞれではあるが「裕福な家庭に産まれ、周囲がうらやむような何ひとつ不自由のない生活」をしてきたカズトのご両親ならばきっと、彼らと似たレベルの生活水準のご子息が通うような学校に入れようとしてただろうし、受験に失敗していなかったら、きっと「お坊ちゃま」と冷やかされることもなく高校生活を送れていたように思う。いや、必死に隠していただけで想像以上の本物のお金持ちで、私学の中に入ってもお坊ちゃまな可能性もなくはないが、少なくとも幼い頃にピアノを習っていた、だけで特別扱いされる環境ではなかっただろう。
彼の育ちの良さを最初に感じたのは、ケイのお見舞いにカットした梨をタッパーに入れ爪楊枝を刺して持ってきた時だ。
新卒社会人1年目の23歳というと、一般的にはまだそんなにお見舞いに行く機会も人生で多くないだろうから、お見舞いにはお見舞いの品を用意する常識を知らなくても仕方がないし、お見舞い先が気の置けない旧友だから手ぶらでも問題ないが、それでも、彼は大人として常識的かつあまりに気の利いた差し入れをしたのだ。
昔、おじいちゃんのお見舞いに行った時にお母さんがそうしていたのを見て学んでいたのかもしれないし、そのように以前教えられたのかもしれない。なんなら、まだ実家暮らしでケイのお見舞いに行く、と言ったらお母さんが用意してくれた可能性もある、いや、それが濃厚にすら思う。
高校になってもテストの点数を全て把握しようとするお母さんだから、きっと交友関係も細かく把握しているし、カズトも何の迷いもなくケイのお見舞いの話をしていそうだしね。これ、持っていきなさいって持たせてくれた可能性も全然ある。
とにかく、この梨のシーンに、彼の育った(もしくは現在進行形で生活している)家庭環境の全て詰まっていた気がした。
少し話は逸れたが、ケイのお見舞いに手土産を持って行ったのは結局カズトだけだった。
ただ、リョウちゃんは「手ぶらでごめん、時間なくて」という謝罪を口にしており、リョウちゃんだけが、手ぶらでお見舞いに行かない、という教養というか一般常識を持っていた、カズト以外の唯一の人物だった。
ご家族のために高卒でとび職に就くダンは偉すぎるし、ご実家の居酒屋を継ぐために手伝いしてるタカだって貴い仕事だし、職業や生き方の優劣はどこにもないけれど、もし、カズトが受験に失敗せずに志望校に入っていたら、特にダンやタカはきっと出会わない類の友達であったことは否めない。
彼らの価値観の合わなさは、文化祭の一件でも顕著だった。カズトの89点に対し、心底尊敬した二人は口々に感激の言葉を放ち、カズトの逆鱗に触れた。あれは、誰も悪くない。ただ、あまりに彼らの全てのギャップが大きすぎただけだ。
そんな中で、リョウちゃんは比較的カズトの価値観やバックグラウンドとのギャップが少ない方だったのではないか?
リョウちゃんはちゃらちゃらして見えるし、モテたがりだし、アイドルみたいな存在に憧れて大学時代はバンドをやっていてりもしたが、高校卒業したら芸能界入る!と言うこともなく「普通に」進学し、バンドで食ってけないから、と4年間で見切りをつけて「普通に」就職する、という現実的で安定志向で常識的な価値観を持っている。
「またバンドやりたくなっちゃう」と言ってる辺り、自分で選択したとは言え未練はありそうだし、未練があるということは進路に対して少なからず親からの助言があってのことのように思う。
ここから先は一切の想像に過ぎないが、リョウちゃんも比較的「ちゃんとした」ご両親のもとで育ったのではないか?
(お母さんはドルオタ(笑)とのことではあるが、結婚して男の子が産まれてその子の顔が良くてアイドルへの憧れを持っていたとしても芸能界へ入れたりすることなく普通の生活をさせているあたり、現実的だな、と思う)
だからカズトはリョウちゃんとは「お前のせいだ」って言い合ったり、“対等な”絡みができていたのかな、と思った。
ただ、ハルキとリョウみたいな距離の近さにはなれないことはカズトも分かっていて、二人を「相変わらず仲良しだね」って括ることで、自分とは一線引いているようにも感じた。
お見舞いの病院の受付けで二人に会ったにも関わらず「モタモタしてたから」って二人を置いて先に来る描写があり、「何で一緒に来ないんだよ!?」って言うタカなら絶対にそんなことしないし、ダンも「二人に会った!」って嬉しそうに3人で来ただろう。(ケイは、わからない。)
仲良しそうな二人を見て踏み込めずに一歩引いてしまうカズトに、大人になっても拭いきれない、彼が5人に対して感じているズレを見た。
踏み込めない、けど踏み込む気がないわけでもないのだと思う。
言い方が悪いが常識も偏差値も格下の相手の中で人間関係を築くにあたり、彼は、しっかり者で物知りで面倒見のいいお兄さん的な立ち位置を確立したのだろう。
病室に入ってきた仕事帰りのリョウタロウのネクタイを直してあげたり、学生時代のハルキの制服のネクタイを直してあげたりしていたのは、カズトのみんなへの歩み寄りの姿勢に見えた。
大学及び大学院で今生活している環境が本来彼が居るべき場所で居心地も良いだろうし、そこで出会った仲間たちとは偏差値も教養も価値観も合うだろう。
今後、カズトも他5人もどのような職に就きどのような生活をしているのか、未来はカラフルなのでわからないけれど、どのような選択肢にせよ十年後二十年後、カズトの生活はさらに他5人とは差がつき、社会的地位もお金もある“成功者”になっており、別世界で生きているかもしれない。平凡な生活を送る5人とは疎遠になる時期もあるかもしれない。
けれど、おじいちゃんになった時に一緒に笑ってるのは、大学時代の学友でも仕事で出会った権力者たちでもなく、平凡でおバカでしょーもない、彼が「面倒みなきゃ!」って感じるような高校時代の5人なんだろうな、って、思う。
おじいちゃんになってもイキってるりょーちゃんに会いたがってたしね!
おじいちゃんになっても言い合いしていてほしいし、掛け違えたシャツのボタンを直してあげて欲しい(私情)