アルビレックス新潟 2019シーズンレビュー の3 データでの振り返りと来季への展望
前監督にコメントを貰えるなんて思ってもみなかったシーズンレビュー企画ですが、今回が第3弾にして最終回。今回のテーマは「データによる振り返りと来季への展望」。データを基にこの1年を振り返り、来季へどう繋がっていくのか考察していきます。
第2弾の吉永アルビ分析はこちらから↓
今回の振り返りで用いたデータはJリーグ公式サイトのデータページ、Football Labより引用しました。
1.データ振り返り
まずは結果の面から。
◯順位の推移
やはり目に止まるのは4連敗と3連敗。監督交代後初勝利の後、メンバー変更の多かった夏場に踏ん張りきれなかったことが大きく最終結果に影響しました。また、最多連勝が3連勝で1度のみ(第34節~第36節)と勝ちを伸ばしきれず。終了間際で同点にされるなど勝ちきれない試合は多く、したたかさのあるチームにはなれませんでした。
ここで2位での昇格を果たした横浜FC、プレーオフ決勝まで進出した徳島と順位推移を比較してみましょう。
シーズン折り返しの時点でこの2チームとは近い順位にいました。そして折り返し初戦の第22節横浜FC戦。共に調子を上げてきた中で隣り合う順位の両チームの一戦。結果は果たして順位が下のチームの勝利。これで連勝を3に伸ばして最終的に7連勝を達成、後半戦は1敗のみで昇格への階段を駆け抜けて行きました。
一方の徳島とも第26節で対戦し、新潟が4-0で快勝を収めました…が、新潟はこの後3連敗。徳島は次の試合も落としますが残り試合では4連勝×2に加えて1敗のみ。勢いそのままにプレーオフ決勝まで進出しました。
これらをまとめると、シーズン折り返しの時点ではまだ可能性のある位置にいたと言えるわけですが、そこからの巻き返しにはかなりの勢いが必要だったということがわかります。前半戦に首位となった水戸や京都がプレーオフさえ逃したことを考えると、シーズンを通して安定した成績を残すこと、終盤にかけて勢いをつけていくことが昇格には欠かせないことが見えてきます。わかっているとはいえ過酷…
◯勝点、得失点の節別推移
情報量が多くなりましたが、まず見ていただきたいのは勝点。自動昇格ラインとプレーオフ進出ラインを示しましたが、これらを上回ることはほぼできず。終盤の伸び具合は良かったのですが、やはりそこまでで差がついていたので難しかった。勝点3を重ね続けることが差を詰めるためには必須だとわかります。
そして得失点。4連敗までは伸び率がほぼ同じですが、カウンターベースにして結果が出た時期、そしてボール保持が増えた最終盤に得点の伸びが顕著に。特に最終節にかけては14試合連続得点を記録しており、リーグ2位の得点力はお見事でした。
続いてはプレー内容のデータを取り上げます。リーグ平均との差から改めて特徴を探ります。
◯平均プレー回数
攻撃面ではパス数が少なめな一方、シュートやドリブルはリーグ平均より多め。終盤にかけて繋いで攻める場面もありましたが、シーズンを通して個の力を活かした攻撃が主だったことがわかります。また、全体を下げてゴール前で守る場面も多かったために30mライン侵入、ペナルティエリア侵入の回数に対して枠内シュート、ゴールが多かったことも特徴的。ゴール付近まで持ち込めばシュートまで持ちこめる力があったということになります。(オフサイドについては他サイトのデータとの整合性が取れないため割愛)
守備面で光るのはタックル数。サチローやカウエ、マサルはリーグの中でも屈指のボール奪取力を誇り、彼らのいるピッチ中央がボールの奪いどころとなっていました。また、警告や退場が少なかった理由としては、守備時にまずブロックをセットすることで簡単にカウンターを仕掛けられたりDFラインの裏を突かれたりしなかったため、無理にファウルで止める必要がなかったことが考えられます。ただ異議・遅延行為はリーグで最も多かったため、心当たりのある誰かさんは来季こそしっかり気をつけて欲しいです…
◯チャンスビルディングポイント(CBP:詳細はリンクから)
他のチームと比較した際に極端な点はあまりありませんが、攻撃やパスと言ったチーム全体としての攻撃に関するポイントが平均より低めな一方、ドリブル、シュートは平均以上。先程見た平均プレー回数同様に攻撃で個の力が光っていたことがわかります。
片渕アルビ分析でも用いた、監督交代まで(第1節〜第9節)のデータとも比較してみましょう。
縦に早い攻めの多かった片渕監督時代に比べ攻撃、パスのポイントが上昇。フランシスや至恩の出場が増えたこともありドリブルのポイントも上昇しています。それに対してクロスは減少。
守備でもスタイル変更により安定感がもたらされたためポイントUP。DFラインで跳ね返せるようになったことでGKの出番が減り、セーブのポイントが下がったと考えられます。
2.来季への展望
さてここまで長々振り返ってきましたが、来季は実力未知数のアルベルト新監督がやってきます。恐らくスタイルは変化するでしょうし、よりチーム全体として攻撃の形を作る意識が強くなるのではないかと予想しています。新監督がバルセロナの育成に関わっていたこと、昨季までアシスタントコーチを務めていたニューヨーク・シティFCが後方から繋いでの攻撃を狙っていたことがその根拠です。アルベルト監督自身はバルサではなく「アルビのスタイル」を築くと述べているので多少の差はあるでしょうが、大枠としての狙いは合っていると思います。
そう考えたときに、私はこの2019シーズン終盤の形は来季のスタイルと繋がっていると思うのです。DFラインの選手にも攻撃における役割が与えられ、ボール保持時の強みが増していった吉永アルビ最終形がベースとなり、来季も継続していくのではないかと。
その意味で今季は大きな転換点だったと言えるのではないかと思います。これまでの「アルビらしさ」を求めた片渕アルビから幾度の変化を経て得点力のあるチームを作り上げた吉永アルビへ。そしてその中で若手が台頭し、それと入れ替わるように往年のアルビを支えてきた選手が去る。私の中で2019シーズンは新たなアルビの物語の第0章にあたると、そう捉えています。
そしてそう思い始めたとき、この記事を書くことを決心しました。近年のぶつ切りのようなシーズンではなく、次のシーズンへとストーリーを紡いでいくために。
今季のレビューはこれにて終了。吉報を待ち、妄想を膨らませながらオフを楽しみましょう。
それではまた来シーズンに。 Adéu!