サッカーをもう一歩深く見るためのポイント ⑤バックパス
サッカーをもう一歩深く見るためのポイント、5つ目のテーマはバックパスです。
※この記事のベースとなる「サッカーの本質」が⇩の記事の0章に書いてあります。読んでいただければ理解が深まるはずです!
簡単にまとめると…
サッカーの本質
①前進する
②最後は中央を目指す
こちらを踏まえたうえでお読みください。
⑤バックパス
ゴールと反対方向へ向かうパス
サッカーにおける攻撃はゴールへと向かうもの。ですから、バックパスはサッカーの本質①前進するに反するプレーです。ゴールから遠ざかるプレーには意味がないようにも思われます。バックパスに対してブーイングするサポーターがいるのもこれが大きな理由でしょう。
しかし、バックパスはボールを支配しながら攻撃するチームにとって欠かせないプレーとも言えます。果たしてどのような点で効果的なのか。探っていきましょう。
バックパスはプレッシングチャンス
バックパスを出す目的としては、相手のプレッシャーを避けることが第一に挙げられます。しかし、それしか考えずにバックパスを選択すると、ゴールから遠ざかるだけで攻撃側に有利な状況にはなりません。
守備側の視点で見てみましょう。③プレッシングの記事で触れた通り、相手ゴールに近いところでボールを奪い、ゴールへ迫ることができれば試合を楽に進められます。相手をゴールから遠ざけつつ、自分たちが目指すゴールまでの距離を縮められるからです。
バックパスをカットすればその勢いのままゴールに迫れるため、カウンターの大きなチャンスとなります。
よって、多くのチームは相手のバックパスに合わせてチーム全体を押し上げ、プレッシングの勢いを強めます。
ここだけを考えると、バックパスは消極的なプレーとしか思えません。しかし、ピンチはチャンスとはよく言ったもので、バックパスが打開の一手となることもあるのです。
バックパスはマクロに見る!
バックパスを見るうえで重要なポイント。それはピッチを広い視点で、マクロに見ることです。
次のような状況を考えてみましょう。バックパスに合わせて守備側がプレスをかけ、全体を押し上げてきました。
この時、ボールの周りだけを切り取ると、スペースがない上に数的同数の相手が迫ってくるというリスキーな状況に見えます。
しかし、ピッチ全体に視点を広げると違った見方ができます。先ほど見た狭いエリアは下の図の白いエリアに該当。守備側がプレスをかけてきたとき、ボールのあるサイドに選手は集まるため、逆サイドやDFの裏のスペースは広く空きがちです(黒いエリア)。
このスペースを使うことができれば、バックパスで一時後退しつつも一気に前進することができるのです。バックパスが前進の布石となるのです。
ただし、うまくスペースを使うためには予めピッチの状況を把握しておくこと、スペースを使うための動き出し、パス技術が重要です。これらがあってこそバックパスを活かすことが可能となるのです。
サッカーを見る際はボールばかり目で追いがちになってしまいますが、ボールから離れたところにも意識を置き、広い視点で見ることで、単なる苦し紛れなバックパスと意図のあるバックパスとの差が見えてくるはずです。
疑似カウンター
最近ではバックパスを意図的に、効果的に使った疑似カウンターという戦術を使うチームもあります。後方でパスを繋いで相手に前からプレスをかけさせ、自陣に引き出すことでDF裏のスペースを突くというやり方です。
片野坂監督率いる大分はこの形を一つの狙いとしています。
もちろんボールを奪われるリスクが高く、勿体ない失点を喫することもありますが、磨き上げていくことで強力な武器ともなります。冷静さと大胆さを兼ね備えてこそ真価を発揮する戦術といえるでしょう。
バックパスにおけるポイント
それでは、バックパスを見る上でのポイントを見ていきましょう。
○パスの精度、強弱
非常に大事です。バックパスで相手を引き出しておいて…と考えすぎてパスを雑にやってしまうと悲惨な事態に。GKやCBへのバックパスをかっさらわれての失点は枚挙に暇がありません。天候やピッチ状況にも左右されるため、受け手にコントロールしやすいように届けられるような配慮が出し手には求められます。
○次の展開への準備
例えばこんな状況。バックパスを受ける選手が準備不足でトラップが大きくなってしまいました。
こうなると相手がプレッシャーをかけやすくなり、視野も狭まってパスコースが限定されてしまいます。スペースを有効利用できなくなってしまうのです。バックパスの受け手の準備は大事です。
もちろん、その次にパスを受けるべく前の選手が動き出すことも重要です。バックパスは相手にとってプレッシングのチャンスであることを認識し、その裏をかくように駆け引きすることが求められるのです。
バックパスが出そうなタイミングで受け手が準備できているか、それ以外の選手が次に向けた動き出しをしているかに注目するとより深く見られるはずです。
○プレスのかけ方、強度
バックパスの場面で守備側がどれだけプレスを掛けるか、ということも攻撃側の振る舞いに大きく関わってきます。強烈に、勢いよくプレスをかけてくる場合、攻撃側は早めに周囲の状況を確認し、準備しておかねばなりません。一方、バックパスをあまり追ってこない相手なら多少の余裕があります。
ただ、プレスの強度が高いチームほどボールに目が行きがちになって相手選手を見失うこともあり、そこにパスを通すことで決定機につながる場合もあります。無理せず大きく蹴るのか、敢えてパスを繋ぐのか。周囲の状況を把握して冷静に判断することが求められるのです。
まとめ
最後にポイントをおさらい。
バックパスのポイント
①バックパスはマクロな視点で見るべし
②リスクとチャンスは表裏一体
③次の展開を予測した動き出しがカギ
バックパスにはリスクもありますが、状況次第でチャンスにも繋がります。「バックパス=後退」とだけ捉えて非難するのではなく、その先の展開に繋げられるか否かを見ていきましょう。そうすることで、サッカーの理解がまた一歩深まるはずです!
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