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【杉本麗百さんインタビュー後編】人生いろいろ。自分で選ぶ、自分だけの道|ALiveRallyインタビュー#17

記事前編はコチラ。



自分をつらぬく

ーー そういえば、留学先はどうやって決めたんですか? 

A. 私、本当は留学はモロッコに行きたかったの。国際センターに10回ぐらい頼みにいった(笑)

ーー 10回も…!その想いの強さと、それを行動に移すパワーがすごいなって思います。

A. ポジティブに言ってくれてありがとう。でもやられる側はさ、なんだこいつまた来たよみたいな感じじゃない?できないものはできないんだよって感じだったと思うよ(笑)

ーー でも、きっとレモさん的に納得がいかないことに対して、自分が納得いくまでやり抜きたいっていう姿勢があるのかなって。

 A. それはあるね。それがいいところでもあり、悪いところでもあると思うけど。人のアドバイスは半分しか聞かないし(笑)。用意された、敷かれたレールの上を絶対に行かない。

ーー 草むらをかき分けて、新たな自分の道を作っちゃうんだ。

A. そうそう(笑) 。でも、それが私にとって大事なんだと思う。生きていく上で…自分が納得した道を自分で選択するっていうことは、すごく大事で。  

ーー うーん、なるほど…。

A. だから、親とか先生から、この道は絶対危ないしあなたにはできないよって言われてたとしても、私がその道を選びたいんだったら自分で選ぶ。それで失敗しても、自分で選んで失敗したんだったら、私の責任だから。…そういうふうに歩んできたなと思う。人から反対される道でも行ってしまうところがすごいある。

ーー 自分で自分の責任を積極的にとっていく方を選ぶことは、勇気が必要だったり、やっぱり風当たりが強かったり、 エネルギーがいりますよね。

A.そうだね、うん。そういう道を選ぶとやっぱり辛いっていうか、大変なことの方が多いと思う。でもそれは自分で選んだ道だからっていう風に全部受け止めていて、後悔は全くないよ。AIUに入学したことも、留学先や秋田でしてきたことも、今の会社に入ったことも。

ーー そんなふうに言えることって、本当にかっこいいです!



秋田での就職活動

 ーー 事前アンケートで私がちょっと気になったところが、「(留学後、)障害福祉に関わりたい気持ちと、アーティストになりたい気持ちと、秋田で暮らし続けたい気持ちで進路が定まらず、1年半路頭に迷った」... まず、この3つの選択肢が、すごい組み合わせだなって思って。その3つのやりたいことの、重なる部分をずっと探していたんですよね。

A. そう。秋田県内で事業をやっているいろんな人に会いに行って、仕事探してるんですって言いまくって。

ーー 本当に手探り!

A.  いろんな出会いがあって、オファーもたくさんいただけたんだけど…、最終的には、秋田で重度の自閉症の人を専門的に受け入れている会社を発見して、それが今働いている会社。秋田でも働けるし、自閉症支援について勉強できる。アートは、空いた時間で制作を続けようかなっていうので、色々なニーズが合致したの。

ーー 3つやりたいっていう気持ちが納得するところを、この1年半で見つけたというか、切り開いたって感じなんですね。

A.  そういうことだね。就活っていう就活は一切しなかったかも。

ーー 不安は無かったですか。

A. 卒業する時も仕事が見つかっていなかったんだけど、それはもちろん不安だったよ。内定が決まっていない、これからどこに行くか全くわからないっていう状態で卒業式を迎えたから。でも、焦って決めなくてよかったなって思う。

ーー レモさんのお話を聞いて、秋田で、手探りで、1つ1つコンタクトをとっていくと意外とオファーをもらえることに驚きました。もちろんレモさんの積み重ねてきたものがあってこそだとは思いますが…選択肢はけっこうあるのかもしれないなって。

A. 選択肢はいっぱいあると思う。実際、門を叩くと意外と受け入れてくれるっていうか、じゃあうちで働いてみる?みたいにいろんな会社から言ってもらったりね。起業するっていう選択肢もあるし。

ーー 自分たちが思っているよりも、実はいろんな可能性がありそうですね!これまでの流れとしては、就職先が決まってない状態で卒業して、卒業後に今の就職先と出会って就職したという感じですよね。

A.そうだね。卒業した後は学生の時に立ち上げたオンラインの英語教室で食いつないでいて、あとは農家レストランで働いたり農家民宿で働いたり、住み込みバイトとかを掛け持ちして暮らしてた。会社で働くことが決まって、バイトを辞めて、卒業から半年後に就職してから今もそこにずっと勤めているって感じ。自分のオンライン英語教室は今も続けてるよ。


コロナ禍で住む場所がなくなり、秋田県内を転々としてアルバイトをしていた。
写真は、男鹿の古民家カフェにて。

ーー 会社に入ってからもいろいろなことがあったと思うんですけど、最後にレモさんの現在のことをお聞きしたいです。



現在のお仕事のはなし

A. そうだね。今いるのは、最重度の自閉症の方々が日中過ごす生活介護事業所っていうのを秋田市に展開してる会社なんだけど、そういう人たちが生活できるような居住施設を立ち上げたいっていう構想を社長がもっていて。私も弟が住めるような居住施設を作るという同じビジョンがあったからジョインして、そのシェアハウスの立ち上げを主にお手伝いさせてもらった。

ーー やりたかったことができる環境にたどり着けたんですね!

A. そういう施設を立ち上げるために必要な知識とか、法律のこととか、 お金のこととかを勉強させてもらいながら、居住施設を去年オープンしたよ。もうひとつは、自閉症の人たちの細部に注目しすぎるっていう特性を生かして、コーヒー豆のちっちゃい傷とか穴とかを見抜いて選別してもらうっていう作業をやったらどうかなっていう風に考えて、それを商品化するところまで今たどり着いて。立ち上げからプロジェクトを完全に任せてもらえてるっていうのが、ちっちゃい会社だからなんだけど、自分の力をつけることができたなっていう風に思ってるのはいいところ。


秋田で自閉症の方々と一緒に製造したコーヒーを海外で提供。

ーー なんだか、レモさんらしい働き方ですね!

A. そうかも!でも、大変なところもいっぱい。自閉症の人って、うまく言葉で自分の気持ちを伝えられない分、行動で示してしまう方がいて。現場で支援することの大変さは、すごく感じた。自閉症の人のための施設を作りたいって口では簡単に言えるけど、実際にやってみたら、めちゃくちゃ大変なんだね。

ーー そうですよね…。

A. 自分の心と体の健康が、損なわれてしまうこともあった。こんな仕事は無理だ、辞めようかって思うことも実はあったの。でも、その大変っていう気持ちをバネにして会社を変えていきたいと思うようになって。運転中に叩かれてしまうんだったら、タクシーの透明な仕切り板みたいなものの導入を提案して安全に運転できるようにしたりとか、脱走してしまう人がいるんだったら、GPSをその人につけてもらったらどうっていうのを提案して導入して、アプリで探索して探しに行けるようにしたりとか。ちょっとずつちょっとずつ、私が感じた怖さとか働きづらさを変えていって、今は働きやすい職場に改善しようとしてる。

ーー すごい!

A. 自分自身がいきなりポンって現場に飛ばされて、右も左もわからないのに見よう見まねで支援をしていたから、怖い思いもたくさんしたんだよね。知識がなくて、対応を間違えちゃったりとかもあったから、今は、新人研修のプログラムをつくる役割を与えてもらってる。だから、現場で大変な思いもしたけど、会社を良くするために少しでも役に立てているなら、よかったなっていう風に思ってるよ。


ヘルスケアやインクルージョンに取り組む日本人とインド人を対象とした国際プログラムに参加。インド人のパートナーと、自閉症支援のアプリ開発を提案した。



後輩AIU生たちへ向けて

ーー こんなふうにいろーんな経験をしてきたレモさんから、読んでくれている後輩にむけて最後にメッセージをお願いしたいのですが!

A. そうだなあ。今、AIU生に向けて一言みたいなのをうまく言える自信はないし、しかも、なんだろう、私のケースって結構特殊だよね。私だからこういう人生だけど、 他の人には他の人生があって、だから、“自分の生き方が正しい”とは思ってない。1人1人の選択をしてもらいたいなって思う…。だからね、これはアドバイスっていう感じじゃなくて、私の感想なんだけど。

ーー うんうん。

A.  私、最初は国際機関で働きたいっていう夢があって、でも紆余曲折あって、今やってる仕事は自閉症支援と英語の先生なんだけど...どちらも私がちっちゃい頃に一番やりたくなかった仕事なんだよ。

 ーー えええ!

A.この2つだけは、絶対にやりたくないって思ってて。人前で話すのが苦手だから人に教える仕事も嫌だし、自閉症に関しては、弟がそうだから…。弟の学校に行った時に、何にもしてないのに自閉症の方に足を噛みつかれたことがあって。そういうトラウマがあったりしたから、自閉症の人に関わる仕事もやりたくないって思ってたの。でも、結局その2つの仕事を今している(笑)。

ーー そうだったんですね…!

A.将来の目標を決めてそのために頑張るっていうのもできるし、私もやってきたんだけどね。でもそのなかで予想してなかったことがいっぱい起きて。でもそれを楽しんじゃう気持ちでやってきた。失敗も良かったことも、全部自分の糧というか、判断材料にする。そうやって自分の道を決めていった結果こういう風になったから、人生本当に何があるかわからないよね。わからなくて、面白い。

ーー ほんと、そうですよね。

A.   まだまだこれから先も、私はどうなるかわからない。自分自身も5年後、10年後、どこで何をしてるのか全くわからない。もしかしたら、 海外でアーティストとかやってるかもしれないし!


モロッコで1ヶ月間ヘナタトゥー修行をしていた時の写真。
旅先で出会った方々のリクエストに合わせてヘナをしていました。

あとは…、人と違う道に進もうとすると、大体そんなのできないよとか、なんでそんなことするのとかって言われたりするけど、でも、関係ない。その人が納得する、後悔しない道を選んでいったらいいんじゃないかなと思います。

ーー そうですね、常識にとらわれずに、自分の道を選べたら素敵ですよね。レモさんの言葉に勇気をもらうAIU生はいっぱいいるんじゃないかなと思います。今日は本当にありがとうございました!

A. ありがとうございました!


編集後記
経歴を見ても、ふだん一緒に生活をしていても、レモさんはいつもパワフルに突き進んでいる印象がありました。そのエネルギーはどこからなんだろうとか、疲れたりしないのかなあとか…。でも今回のインタビュー全体を通して、どうしてここまでやれるのかというところが、すっと腑に落ちた気がします。
大学生活だけを切り取っても、人それぞれ、人生いろいろ。困難もたくさんあるけれど、自分だけの大切な人生なのだから、面白がって楽しく生きていきたい。自分の人生を生きることに誰よりも真剣なレモさんの姿勢には、ハッとさせられます。
取材を引き受けてくださったレモさん、そして最後まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました!


Interviewer: Shojiro Matsunaga, Hana Oishi, Ayano Fujiwara
Writer: Hana Oishi, Ayano Fujiwara
Thumbnail design: Iori Maeda


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