寅さんにみる、「ななめ」の関係性が大事な話。
みなさん、寅さんって見たことありますか?男はつらいよ、です。
私は学部生時の卒業論文の題材にしたので、全50作、それぞれ2~3回ずつ見ております(笑)。寅さんを見て思うのは、コミュニティについて。ですが、商店街で声をかけ合うのが必要、昔は良かった、なんてことが言いたいのではありません。
私自身が、大切だと感じている関係を見ています。
それは「ななめの関係」です。
男はつらいよ
主人公である寅さんはテキヤ稼業を生業にして、常にどこかを旅している。そして、お正月とお盆あたりにふらっと故郷に戻ってきては、マドンナに恋をして、一悶着起こし、また旅に出る。ざっくりそんなお話です。笑
毎回マドンナや周辺の人、マドンナの悩みは変わりますが、お話の流れは変わりません。寅さんがフラれるか、マドンナが寅さんに気があるときは怖じ気付いてしまって結局いつも実らない(笑)。
個人的な感想を付け足すならば、寅さんって、なんていうか、ヒーローだと思っています。人に迷惑をかけたり、時には暴力を振るったりしますけど、「味方」でいてくれるのです。
お金もないし、いわゆる教養だってないから、世間的に見たら足し算になる助けじゃないかもしれないけれど、味方でいてくれることがどれだけ大きなことか、と私は思います。
(トラブルを持ってくることも往々にしてありますが、笑)
縦か横、そんなところから逸脱する。
「おいちゃん・おばちゃんと寅さん・さくら」と「寅さんと満男」。
寅さんやさくらは親を亡くしているので、おいちゃん・おばちゃん側から見れば親子にも近い接し方に見えますが、特に寅さんと満男に関しては、「おじさんと甥っ子」という関係性で、親子でもないし兄弟でもない、そんな距離感「ななめの関係」です。
寅さんは、親が教えないことを教えてくれる、そんな立ち位置でしばしば描かれます。恋愛・お酒の飲み方など、あんまり上手くない方法を伝授したかと思えば、「なんで人間は生きているのか」「なぜ勉強は必要なんだろう」という誰しも持つことがある満男の疑問にも、寅さんの哲学でこたえたりします。
この辺は是非映画で見ていただきたいところです。
満男の就職先は営業なのですが、面白くなさそうな満男に対して、寅さんが「露店でどんな風に物を売るか」と話すシーンは、何か原点を思い出させてくれます。
私は、地域やコミュニティで仲良くなる人たちは、「ななめの関係」に近いと思っています。凄く心配してくださるけど、もちろん親子じゃないし兄弟でもない。一緒に働くことがある方々だと、一番近そうなのは上司と部下、もしくは先輩と後輩のような気がしますが、それだけでもない。
ご飯や遊びに行くと、ある種友達のような感覚を持つ瞬間もあったり、同い年・同年代と出会っても、学校の友達とは違います。
私は、多種多様な相談したり話を聞いたりしますが(笑)、それは例えば友達に相談する時とも、兄弟に相談する時とも、親や先生に相談する時とも違うように感じています。
恋愛の話や昔のやんちゃ話なんかもたくさん聞ける。時にはあっつく野望の話を聞くのも楽しい。そのさじ加減がなんともなく好きで、大切に思っています。
「この年になっても迷うんだから、迷って当たり前。大いに迷い、迷えることも大切に。」とか、ビール片手に「おじさんの戯れ言だけど」とか言ってみんなで乾杯したり。
「この時間がご褒美みたいだよね。」と言ってくださったり。
その風景を見ているのも、とっても、幸せなんです。
ななめの関係性は、なかなか学校と家だけでは作れない、と思います。家は家族のみで構成されることが多く、学校や習い事は入った時から先生と生徒(学生)か、後輩・同輩・先輩という区切り方があるのが日本では一般的です。
海外の学生は、senpaiという言葉もしばしば使うので、概念や感覚が違うのだろうと思います。
(私はまだ、社会に長く出ている身ではないので、働く中での関係性は現状あまりわかっていません。)
私は「ななめの関係」を、いわゆるサードプレイス的な見方をしているのだと思います。
家、学校、働く場所などそれぞれに役割があり、それぞれを大切にしたい。また、サードプレイスにもやっぱり大切な役割があるのだと思います。文章を書きながら、私は本当に素敵な出会いに恵まれていると自負します。
ななめの関係性は、空間・視点の広がりを意味すると思う。
東北のおばちゃんや大工さん、漁師さんにふいに電話することもあるし、他学科他学年の学生と喋るのも面白い。それがどこか漁村や農村であるときもあれば、京都の川沿いや純喫茶だったりします。こどもたちと遊んでたら、謝りすぎ!と指摘されたり(笑)(またそれに謝る自分がいたので反省…笑)
お気づきかもしれませんが、「ななめの関係」ってどこまでいっても「ななめ」。自分にとってななめである人は、相手から見ると私自身もななめの関係。それがすごく面白いことだと感じています。
もちろん、縦横の関係もそれぞれの良さがあることはわかっています。私は先輩の話を聞くことも好きですし、同年代が集ったときの「同年代でしか盛り上がれない話題」の感じだって好きです。笑
横や縦の関係をx軸y軸みたいに考えてみると、斜めの関係はz軸のような。それはもはや、次元や視点の転換・広がりとも取れると思っています。宇宙飛行士野口さんの、三次元アリの話とも少し重なるような気がします。
同じストーリー展開が苦手な人や飽きる人もいるかもしれませんが、見たことがない人は是非「寅さん」を見てみて欲しいです。
色んなロケ地を見られるところも魅力的で、ご自身の故郷があるかもしれません。何度かみたり、時代を追うごとに、スルメみたいにどんどん旨味が増す、解釈が変わったり広がったりする映画だと、私は感じています。