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【VR作品紹介】旧ライトニング・モノガタリ集会 総集編 -前篇-
◆「ライトニング・モノガタリ集会」とは?
皆さんこんにちは、A-Literary Works.(エーリテラリー・ワークス)です。今回は2023年に実施した「ライトニング・モノガタリ集会」というイベントについて振り返ろうと思います。こちらは2024年現在実施中の「モノガタリ交流会」の前身企画となりまして、内容は殆ど同じ、VRChatを舞台とした創作PR会となります。
異なる点としては一度に大人数を集めた為、感想のシェアなどは行わず、淡々と発表者が紹介する形を取っていました。企画に至る経緯としては沈黙が元々LTを行う機会が多く、これを作品に置き換えてやったら面白いのではと思い、誰もやっていなかったので直ぐに実行しました。実際、ビブリオバトルや単なる書評とは異なり、作家による生の語りや参加者同士の交流が行える点はやはり魅力的だと思います。
当時はイベント開催・写真投稿で終わりでしたが、やはりこうして記事に書き留めた方がイベントの価値が高まると思い、モノガタリ交流会(モノ交)を含め、今後は随時記事に興していきたいと考えています。
◇第1回 ライトニング・モノガタリ集会振り返り
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2023年7月に実施した第1回 ライトニング・モノガタリ集会(LM集会)では総勢18名の方に参加して頂きました。当時はA-Literary Works.を立ち上げていなかったので、沈黙による個人開催となりました(今も変わりませんが)。約1年ぶりの振り返りで恐縮ですが、以下に各自の作品紹介について簡単に振り返ろうと思います。
【ライトニング・モノガタリ集会】
— 沈黙静寂 (@be_quiet_w0n) July 22, 2023
無事皆さんの発表が終わりました!普段は聞けない作品に対する想いが伝わってきましたね。観に来てくれた方々も有難うございます!
僕らの物語は不滅です。次回へ続く。#VRChat #LM集会 pic.twitter.com/zKozfEqoIj
【No.1】はにらいさん「キミと行くワールドは」
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一人目の発表者ははにらいさん(https://twitter.com/vrchanirai)です。はにらいさんの作品「キミと行くワールドは」はVRChatの何処かにあるかもしれない両片想いの物語をコンセプトにしたオムニバス式の短編集「きみとの話シリーズ」の一篇。「キミ」と「きみ」双方の視点が味わえながら、キャラクターのゆるゆるとした挙動が目を引く作品です。
【No.2】降谷椎さん「詩箱・空言」
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続いての発表者は降谷椎さん(https://twitter.com/furuya0shi)です。降谷椎さんの作品「詩箱・空言」は私・死・愛という三つのキーワードを軸に降谷さんの詩が展示されるVRワールドとなります。自身の没後六十年後を想定した鋭い字句の数々が立ち並んでいます。雨椎零名義の詩集 『雨音は乾いた猫の匂いがする』(著:雨椎零/絵:永田カビ/出版:しろねこ社)も是非お買い求めください(https://shironekosha.thebase.in/items/75072842)。
【No.3】でるふさん「セイオワプラネタリウム 星空案内および朗読」
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お次の方はでるふさん(https://twitter.com/VRC02934813)です。でるふさんの主催する企画「セイオワプラネタリウム 星空案内および朗読」は毎週火曜または水曜22時より開催される、季節に合わせた星空案内と物語の朗読会になります。案内原稿および朗読原稿はでるふさんが執筆されており、春はヘラクレス、夏は牛郎織女といった風に神話や伝承に準えた物語が夜空の下で展開されます。
【No.4】めっきあじさいさん「インフルエンサー・イン・ザ・ブラック」
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お次の方はめっきあじさいさん(https://twitter.com/genseki0610)です。めっきあじさいさんの作品「インフルエンサー・イン・ザ・ブラック」はとある会社のPRを任された主人公・城島がパワハラ・モラハラ上司の柴田と出会い、嘘のように強権的で理不尽な新人研修を経る中で、彼や会社の暴露記事を秘密裏に出してやろうと長期取材を始める、といったお話です。爆竹を体に巻き付けて理念を叫ばせるシーンなどがあり、笑えるような笑えないような、めっきさん独特のバランス感覚に彩られた中編小説になります。
【No.5】しいたけさん「男児向け少女漫画の開発 まじっく&ふぉーめーしょん(試験的制作)」
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お次の方はしいたけさんです。しいたけさんの作品「まじっく&ふぉーめーしょん」は主人公・星天ひなたがいじめっ子の太一やぼっちのシオンと出会いを重ねながら、皆を照らす「お姉ちゃん」的存在を目指して奮闘するお話です。合間にカードゲームバトルの細密な描写も挟まれており、一度で二度、三度美味しいフェティッシュな漫画となります。しいたけさんは男児向けの少女漫画を中心に創作されており、料理やプログラミングをテーマとした捻りある作風が魅力です。
【No.6】狼谷恋さん「V.P.B.C Variant Point Breaker Company」
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お次の方は狼谷恋さん(https://twitter.com/wolf_kamiya)です。狼谷恋さんが参加されていたプロジェクト「V.P.B.C Variant Point Breaker Company」はVRChatで展開される傭兵をモチーフとしたRP組織です。狼谷さんはその中で小説執筆をされており、代表作「Black :Light」V.P.B.C創設メンバーの1人の過去が題材となり、V.P.B.C自体の世界観のベースにもなった作品のようです。2024年現在、狼谷さんはV.P.B.Cから離籍されているのでご注意ください。
【No.7】熊野瀝青さん「Vシャーク~シャクトくぷVSネイビーガールズ~」
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お次の方は熊野瀝青さん(https://twitter.com/bitumenWRite)です。熊野瀝青さんの作品「Vシャーク~シャクトくぷVSネイビーガールズ~」は太平洋に浮かぶ平和な島国「サンマリ共和国」にて展開される、地元の自警組織「ネイビー・ガールズ」に所属するフレア、アイドル志望の幼馴染・くぷぅを中心人物としたZ級サメ映画となります。熊野さんはForkelさんと共に脚本を制作されており、作り込まれた舞台設定とくぷぅさんの愛らしさが魅力的な作品となります。
【No.8】朝依しるとさん「VTuberのエンディング、買い取ります。」
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お次の方は朝依しるとさん(https://twitter.com/karub128)です。朝依しるとさんの作品『VTuberのエンディング、買い取ります。』(著:朝依しると/絵:Tiv/出版:KADOKAWA)はVTuberアイドルグループ「星ヶ丘ハイスクール」所属のVTuber・夢叶乃亜の炎上を機に、彼女の推し活に身を捧げていた高校生・苅部業が、VTuberの最期をプロデュースする救済と再生の物語となります。こちらは第35回ファンタジア大賞〈大賞〉受賞作となり、本企画始まって早々のプロ作家の方のご登壇となりました。お話の中では同時代性、リアリティ、非現実的実在性への意識や、他作品からの影響などについて聞かせて頂きました。現在文庫本2巻まで刊行されておりますので、是非お買い求めください(https://amzn.asia/d/iBNPw8z)。
【No.9】なぎさん「物語の実験 by 実験の物語」
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お次の方はなぎさん(https://twitter.com/hdkktyng)です。なぎさんの発表テーマ「物語の実験 by 実験の物語」では「ある文章が物語であるか否か?」「何故それは物語である必要があるのか?」「科学コミュニケーションの物語性とは?」といった話題についてお話頂きました。何と、なぎさんは分子科学研究所UVSORに所属する物理化学の研究者であり、Youtubeチャンネル「分子科学?ちゃんねる」の運営やVRアカデミア界へのアプローチなど、科学コミュニケーション活動まで行われています。これまた初回から凄い方に参加して頂きました。
【No.10】コップさん「Fork」
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お次の方はコップさん(https://twitter.com/copcapkop)です。コップさんの映像作品「Fork」は2090年、かつて繁栄していたVRSNSのサービス終了を背景に、ユーザー同士の争いにより荒廃したワールドを旅する二人、つらろこ、コップによる冒険記となります。タイトルにもあるように、終末世界において未来に向かうか過去に向かうかが重要なテーマとなっています。沈黙としては対抗組織「フォース」にやられたmiruichiさんが可愛かったのと、二人の結末が描かれた後の主題歌が心に沁みました。
【No.11】るいざ・しゃーろっとさん「井の頭公園から始まる物語」
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お次の方はるいざ・しゃーろっとさん(https://twitter.com/VRCLouisa)です。るいざ・しゃーろっとさんの発表内容「井の頭公園から始まる物語」では「壁を越えるのが、私の夢」「井の頭公園のラスクちゃんはお砂糖とお塩でできている」「君の笑顔でも治らない病」「人生の脇道で」といった短編小説4作が紹介されました。草津温泉、井の頭公園、ウクライナといった現実世界を舞台にラスクちゃんやハオランくんといったVRChatのキャラクターが日常の思索を繰り広げます。
【No.12】ソーサツ・チエカさん「小説群「メタバースで私たちは何になるのか」」
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お次の方はソーサツ・チエカさん(https://twitter.com/chieka_quantizd)です。ソーサツ・チエカさんの発表内容「メタバースで私たちは何になるのか」では、「Local mirror in the sky」「卵割」という短編小説2作が紹介され、前者は電力が枯渇した未来でVR時代を回想する老人のお話、後者はVR人格から距離を取ったら別の人格が生えた学生・佐野顕好のお話となります。いずれもバーチャルにおける自己とは何か、といった問いが含まれており、「メタバースで私たちは何になるのか。群体? 流動体? 幻覚・幻聴と共存?」といった示唆的な議論を喚起しました。
【No.12.5】葵シュセツさん「風と海と星空を越えてープロローグー」
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お次の方は葵シュセツさん(https://twitter.com/cahtshusetu)です。葵シュセツさんの作品「風と海と星空を越えてープロローグー」は主人公の女性が初恋の男性との距離感に戸惑いながら、別れを経験し再び出会いを果たす、といった内容の短編小説です。VRChatでは意外と貴重なラブストーリーに癒される方もいるでしょう。登壇写真が無いことについて、当時はQuest対応が不十分でシュセツさんが来れないという事態が発生し、代わりに沈黙が紹介させて頂きました。その節は本当に申し訳なかったです……
【No.13】ぐぅ先さん「即死チートだけじゃ世の中やっていけないらしいです」
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お次の方はぐぅ先さん(https://twitter.com/GooSakiSP)です。ぐぅ先さんの作品「即死チートだけじゃ世の中やっていけないらしいです」は女神キカの管理する世界「ウェドメント」に転移させられた主人公のキョウタが、役に立たない即死チート能力を与えられてしまい、ヒロインのシェーレを始めとした住民と衝突を繰り広げる、といった異能系ファンタジー長編小説になります。ぐぅ先さんの作品には少年心を擽る設定が多く含まれ、特に本作は能力のインフレが顕著であり、ドラゴンボールや遊戯王のような作品が好きな方は是非読んで欲しいです。
【No.14】うみほたるさん「無限彷徉・文字の海」
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お次の方はうみほたるさん(https://twitter.com/Umihotarus)です。うみほたるさんの作品「無限彷徉・文字の海」について、「無限彷徉」は自身の即興詩を歌詞としたアンビエントな楽曲作品となり、「文字の海」はQvPen等で様々な筆記が施されたVRワールドの模様となります。またうみほたるさんは世界各国の言語や文字、記号を楽しむVRChatグループ「プロ𛄡クトバベル PROJEKTO BABEL」を運営しており、多言語朗読劇「ここではないどこかへ」の開催や合同誌「telo sitelen」の発行など、言語に纏わる独創的で唯一無二の活動を行われているので、是非チェックして欲しいです。
【No.15】ニッソちゃんさん「メタバース旅行雑誌「Platform」とは?」
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お次の方はニッソちゃんさん(https://twitter.com/JOICLE_info)です。ニッソちゃんさんの企画「メタバース旅行雑誌「Platform」」はVRChat、Cluster、NeosVRそれぞれのプラットフォームを駅のプラットフォームに見立て、各駅ごとの風景を切り取る旅行雑誌となります。メタバースプラットフォームだけではなくリアルワールドも組み込む点が特徴であり、美麗なデザインや気品の漂う文章が、特集先の「実物以上の実物らしさ」を引き立てます。沈黙は以前個人的にPlatformさんの出店をお手伝いしたことがあり、対面のお客さんもそのコンセプトに興味津々のようでした。
【No.16】sunさん「【コラボ作品】アットホーム 漫画の魅力を小説で引き立てる」
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最後の方はsunさん(https://twitter.com/Hermit_Heaven)です。sunさんの作品「【コラボ作品】アットホーム」はsunさん、リーチャ隊長、涼宮さん、ヒラキハジメさんを登場人物とした小説・漫画作品になります。何気ない四人の日常が小説・漫画共に描かれる一方、メタバース小説家のsunさんには「場面の説明に多くの字数を割ける」「主観的だからこそ読者に寄り添える」といった小説の利点をアピールして頂きました。ちなみに写真はアバターの読み込みに失敗し棒人間になってしまいました……申し訳ありません。
以上、第1回 ライトニング・モノガタリ集会の紹介作品となりました。隠しキャラ(No.17)として沈黙静寂も発表しましたが、大したことは言っていないので割愛します。ただ「語ることよりも創ることが大事、でも語ることも大事」というようなことを偉そうに語った記憶はあります。
今思うとスライドやサムネのデザインはもう少し綺麗に仕上げるべきでしたね。初めての経験だらけだったので仕方ないかな、と言い訳を添えます。後編(第2回)については以下から読めますので、是非ご覧ください。それでは、また。
文責:沈黙静寂(A-Literary Works.代表)