ゼロから理解する6号機初期ATを支えたやじきたシステムの仕組み
1.記事の概要
この記事でこんなことがわかります。
・やじきたシステム(方式)とは
・このシステムのメリット
・このシステムのデメリット
2.やじきたシステムとは
やじきたシステムとは、ゼロボAT機の当時画期的だったシステムです。
特筆すべき点はゼロボAT機なのにハズレがあること。
ゼロボAT機については以下の記事を参照してください。
2-1.やじきた道中記乙導入前の状況
当時ゼロボAT機ではゼロボの部分を
成立後RTのリプレイで埋めるケースがほとんどでした。
なぜならリプレイで埋めないとゼロボに入ってしまう可能性があるから。
ちぇんくろ学園を想像してもらうとわかりやすいですかね。
まあ一部、ゼロボを作動して消化させる機種もありましたが稀でしたね。
2-2.やじきた道中記乙の登場
そんなゼロボAT機ですが、この機種で転機を迎えます。
それが「やじきた道中記乙(メーシー)」
この台、システムとしては画期的なものを積んでいました。
それが2枚掛けゼロボ。
その名の通り2枚掛けで成立するゼロボです。
ただ普通のAタイプの感覚で言うと、
3枚掛けでも揃うのでは?という疑問が浮かびます。
しかし狙っても揃わないんです。
この説明を6号機ドンちゃん2の配当表を使って説明します。
本当はやじきた道中記乙の配当表が欲しかったのですが、
今更手に入らないので、そこは申し訳ありません。
どこに着目しても良いのですが、
分かりやすく『涼涼涼』にしましょう。
ここには「3BET:12」と書いてあります。
記載の通り、3枚掛け時に表示されると12枚払い出すという意味です。
では1枚掛け、2枚掛けの時はどうなるでしょうか。
おそらくリール制御で止まることはないですが、
仮に表示されても払い出しはありません。
なぜなら配当表にないからです。
ここで2枚掛け時に成立したボーナスは
(上の『涼涼涼』のように)2枚掛け時しか表示する組み合わせがない。
という配当表を作ったらどうなるでしょうか。
当然3枚掛け時は作動しません。
なぜなら2枚掛けで成立したボーナスに相当する
リールの表示がそもそも存在しないから。
つまりハズレが作れることを意味します。
型式試験時はシミュレーション試験において
2枚掛け、3枚掛けをそれぞれ試験します。
この時、掛け枚数を変えることはありませんから、
2枚掛け、3枚掛けともに従来のゼロボAT機のように試験されます。
実際の配当表がないので説得力に欠けますが、
2枚掛けでは最大払い出し枚数が2枚となっており、
どのように試験しても100%を超えることはありません。
ゼロボも成立確率と役物比率だけを
考えれば問題ないようにすればいいだけです。
一方3枚掛けの試験では、
従来のゼロボAT機同様の仕組みで作るため、
シミュレーション試験を封じ込られめます。
そして実際にお店で運用するときには、
店員があらかじめ2枚掛けで
ゼロボを成立させておきます。
ユーザーは一般的に3枚掛けでプレイしますから、
ゼロボAT機なのにハズレが出るという台になります。
つまりそこで初めて
「やじきた道中記乙」という台が完成する
ということですね。
とは言え、型式試験を全く無視できるかというと
そうではないと思います。
俗に人間打ちと呼ばれる試験方法があり、
そこで試験されていると考えられます。
このあたりは業界人に任せますね。
ここは語尾の通り、あくまで個人の感想と考察です。
3.やじきたシステムを導入するメリット
前章でハズレが作れることはわかりました。
しかし、成立後RTのリプレイで埋めるのとどこに差があるでしょうか。
これは2点あると考えられます。
型式試験対策
ユーザビリティの向上
3-1.型式試験対策
型式試験対策についてはオタク界隈では有名なので、
今更取り上げることもないかもしれませんが
技術上の規格を読みましょう。(技術上の規格大好きです。)
現在は6号機の規格になっていますが、
結論は変わらないのでそのまま引用します。
また解釈基準も引用します。
再遊技について解釈基準に則り確認します。
技術上の規格では、
「入賞によらずに遊技メダル等を獲得することができるものでない」
また解釈基準では、
「再遊技~の作動は、「入賞」でない。」
つまりリプレイは入賞ではないので遊技メダル等を獲得できません。
そのためリプレイで戻ってきた掛け枚数は獲得にあたりません。
次に
つまりリプレイは投入にあたりません。
最後に
ロ(ホ)と同様の試験がいくつかありますが、
結論に影響しないのでロ(ホ)を引用します。
型式試験の出玉試験では
「獲得する遊技メダル等」と
「投入をした遊技メダル等」
を比較します。
ここでリプレイの立ち位置を思い出します。
・リプレイは入賞ではないので遊技メダル等を獲得できません。
・リプレイは投入にあたりません。
これらから出玉試験上、
リプレイは3枚out3枚inではなく0枚out0枚inとして計算されます。
(out,inはそれぞれ、獲得する遊技メダル等と投入をした遊技メダル等)
これがどのように影響するか見ていきましょう。
例えば、3枚掛けで5ゲーム遊技したとしましょう。
このとき結果が
9枚ベル、リプレイ、リプレイ、リプレイ、9枚ベル
とします。
①3out3inの場合
投入枚数は5ゲーム遊技したので3枚×5ゲームで15枚
獲得枚数は9枚×2ゲーム+3枚×3ゲームで27枚
すなわち機械割は27枚/15枚=180%
②0out0inの場合
投入枚数は3ゲームリプレイだったので3枚×2ゲームで6枚
獲得枚数は9枚×2ゲームで18枚
すなわち機械割は18枚/6枚=300%
これらの結果から②の方が100%より遠い値が出ることが分かります。
今回は機械割が100%を超える値を確認しましたが、
100%未満の場合も同様、100%より遠い値となります。
(気になる方はベルをハズレ1枚役に置き換えて確認してください。)
20240317 追記 ハズレだとどちらも0%になりますね。すみません。
1枚でも払い出せばわかります。
つまりハズレとリプレイを比較すると
ハズレの方が出玉試験上、有利ということになります。
これは6号機初期のAT機で重宝されました。
リゼロや聖闘士星矢SPなどは有名ですよね。
やじきたシステム+アクセルATで
シミュレーション試験を突破しています。
アクセルATについてはこちら。
3-2.ユーザビリティの向上
こちらについては、読んでくださってる方も実感があると思います。
ART機からAT機への過渡期、
これらの台を触ってどう感じたかということです。
私はリプレイが多く、間延びした感覚がありました。
実際1/7.3→約1/3程度まで確率が上がっていたので、
これが原因であると考えられます。
そのリプレイをハズレに変えることができると、
当然他の台よりもメダルの投入等でメリハリがつきます。
たったこれだけですが、遊技が快適になったと思います。
(ただ一方で後述するリプレイ時の投入や、
リプレイだらけの台に慣れたユーザーは、
あまり恩恵を感じなかったかもしれませんが…)
「ちなみ」な話
上でも述べましたが、当時5号機ATでは
リプレイで間延びした感覚がありました。
過去にはその間延びと戦う台がありました。
それが「攻殻機動隊S.A.C.(サミー)」
間延びを克服するために「ベルリプレイ」が初搭載されました。
本機は、
「ベルリプレイ」時にフリーズ→MAXベットボタン押下でフリーズ解除
という、すこし凝った作りをしていました。
サミーの苦肉の策だったかもしれません。
しかし評判は悪かったようです。
これはリプレイ時の仕様にありました。
当時はリプレイ時はメダルを貯留装置(クレジット)に入れることができず、
入れたメダルはカラカラと下皿へ返されます。
つまり入らないメダルを入れる虚無感が襲います。
さらにフリーズ解除するにはmaxベットを押す必要があり、
ユーザビリティはよくなかったですね。
その後の台では「ベルリプレイ」はフリーズしなくなりました。
ただベルリプレイ自体は評判がよく、
光や音であたかも払い出しがあるかのように
演出する台が増えていきました。
昨今の6号機ではガメラのギャオスリプレイがそうですね。
本機はゲームバランスがかなり良かったので
AT機としては重宝されましたが、
ユーザビリティという点では失敗でしたね。
さらに「ちなみ」な話
リプレイ時にメダルを貯留装置(クレジット)へ
入れられるようになったのは2013年。
市場に出回ったのは、
「キャッツ・アイ -コレクション奪還作戦(オリンピア)」が初です。
当時の技術上の規格が残ってないので、
どのような記載だったかは分かりませんが、
貯留装置への「投入」と、掛け枚数への「投入」と
同じ言葉を使っていたため、できないと思われていたと考えられます。
これのお陰でゼロボAT機はリプレイ時もメダルを入れて
返ってくることはなくなりました。
これはユーザビリティの向上ですね。
4.やじきたシステムのデメリット
メリットがある一方でデメリットも存在します。
大きく分けて3点あります。
誤って2枚掛けしてしまう
2枚掛けゼロボを作動させる嫌がらせ
朝一恩恵が付かない
1つずつ見ていきましょう。
4-1.誤って2枚掛けしてしまう
これはユーザが意図せず2枚掛けしてしまうパターンです。
これには一応対策がしてあって、
貯留装置(クレジット)が2枚以下の場合、
MAXベットが押せないようになっています。
ただし手入れで2枚だけ入れると2枚掛けできてしまいます。
ちなみに2枚掛けすると以下のような画像が出ます。
これを見るために2枚掛けした人もいるかもしれませんね。
4-2.2枚掛けゼロボを作動させる嫌がらせ
これは店もしくは後任者に対する嫌がらせですね。
やじきた道中記乙の導入時にはあまり聞きませんでしたが、
6号機になって比較的散見されましたね。
特に6号機初期は配当表も公開していたので、
簡単にゼロボを作動させることができました。
まあ後任者が知識を持っていれば直せましたが…
実際に「猛獣王 王者の咆哮(サミー)」は自分で直した記憶があります。
一応台からもパネルが消灯・点滅したり、
液晶に表示したりと伝えるようにはなってますが、
知らない人からすると怪しいですよね。
営業中は店員が遊技を行うことができないので、
電源を落とす店が多い印象です。
4-3.朝一恩恵が付かない
やじきた道中記乙は有利区間の概念がなかった+サブ基板制御なので
全く問題ありませんでしたが、
6号機で使われるようになってからは大きな障害となりました。
特に6号機初期で高純増ATにするためには、
やじきたシステムを使わざるを得ない場合が多く、
6号機=朝一恩恵なしという固定観念を定着させるには十分でした。
ガルパンGあたりからゼロボを小役と重複させる方式が登場し、
やじきたシステムから小役重複方式に移行していきました。
これにより朝一恩恵を簡単に付けられるようになりましたが、
それまでは規約上どうしようもなかった部分になります。
5.終わりに
以上がやじきたシステムの全貌になります。
リゼロや聖闘士星矢SPで初めて知った方も多いと思いますが、
初出はやじきた道中記乙ですね。
最初はただのバカ台(褒め言葉)だと思ってました。
実際当時のティザーはホントにぶっ飛んでたので。
パネルからもわかりますよね。
小さく
※この台に忍法勝負は出てきません
とか書いてありますし、
パロディも多いですね。
ただシステムとしては、かなり画期的な
そしてチャレンジングな台だと思います。
結果として高純増ATを生んだという点でかなり偉大な1台ですね。