第百九十四回 Vo 将|将さんの言葉紡ぎinterview「アリス九號.のターニングポイントを振り返る(前編)」

デザイン的な側面、アートワーク全般を振り返ってもらうことで、アリス九號.の歴史を次々と紐解いたこれまでのインタビュー。
今回からは前編、後編に分けて、バンドを軸にアリス九號.のターニングポイントをテーマに話を聞いていく。


ーー9月3日まであと2か月と少し。将さんの中で、カウントダウンは始まっていますか?

将:自分としては9月3日へ向けて、武道館公演をもう一度やるような感覚で、今年の1月からずっと準備をしています。ボイトレもりょんりょん先生のところにまた通い、歌の根本から向き合っています。そうやって自分を追い込んで追い込んで、9月3日を目指しています。それまでのライブが繋ぎだとかただのプロセスではないですが、一つ一つのライブを終えるごとに、試合が近づいている。自分の覚悟と能力を最大限に発揮する真剣試合の舞台が近いなと。そういった感覚で9月3日が近づいているのを感じています。

ーーその9月3日に繋がるラストツアー、LAST DANCE ACT.4「Frozen Waterfall」が7月1日から始まります。このツアーはどのような位置づけのものになるのでしょうか。

将:沙我くんとは、「Waterfall」「the beautiful name」「Grace」という楽曲がすごく象徴的なものになるメニューにしたい、という話だけはしていて。それを汲んでツアータイトルに「Waterfall」を使ったんですけど、内容を詰めるのはこれからになります。

ーー「Waterfall」は春のツアーでもセットリストの中で重要な役割を担っていたと思うのですが、そもそもこの曲の歌詞はどんなコンセプトで書かれたものだったんでしょうか。

将:走馬灯なんですよね。自分の死を覚悟したり、晴れ舞台に立った時、自分の生い立ちを振り返る感じで自分の人生を思い返していく。流れ落ちる水がスローモーションになって、その流れ落ちた水が逆再生で戻っていくように、自分がそれまで歩んできた道を戻っていくイメージで書いたのがこの歌詞です。

ーー曲がそういったものを呼び起こしたんですか?

将:この曲だけの特別なエピソードがあって。沙我くんの曲でも、俺がメロディーを作っているものは多いんですね。「銀の月 黒い星」とか「jelly fish」とかもそうです。この曲も本当は俺がメロディーを作っていたんですよ。でも沙我くんが「それならもっとこうしよう」と、俺がつけたメロディーをブラッシュアップして。沙我くん自ら熱唱しているデモを作って持ってきたんですよ。そうしたら、明らかにそちらの方がよくて。後にも先にも、俺がメロディーをつけた後に沙我くんがさらにメロディーをつけ直す、という遣り取りをして作ったのはこの曲くらいで。「Heart of Gold」と「MEMENTO」は沙我くんが作ったメロディーを俺が手直ししたんですけど、それはバトりながら直したものだったので(笑)。美しい形でバトンタッチしながら作ったのは「Waterfall」だけなので感慨深いものがあります。わざわざ沙我くんが歌って入れてきた、というのが俺的にはポイントが高くて。だから歌っていてもめちゃくちゃ気持ちいいんですよ。この曲みたいに、メロディーは全部自分で歌って入れてくれればよかったのになって。まあそういうのは置いといて(笑)、「Waterfall」は歌っていても気持ちいいし、心からいい曲だなと思います。ステージで歌っていると、自分が歩んできたバンド人生が降ってきますからね。

ーー例えば、将さんが歌っていて、壮大な気持ちになって至福を感じられる曲というと?

将:昔の曲ですけど「無限の花」とかはそうですね。歌う立場として、「ここはこういったメロで歌ったら想いがもっと乗るのに」というラインがあるんですけど、歌わない人がつけたメロディーだとそこにいくのがなかなか難しいんですよ。その中でも「無限の花」や「Waterfall」は、歌っていて魂がどんどん引っ張られていく。それがステージでは気持ちの波動となってみんなに伝わっていく。そういった実感がすごくある曲です。

ーーそれではここからは、今回のテーマであるバンドとしての転機について、将さん目線で振り返っていただきたいと思います。

将:では時系列順に話していきますね。最初の転機は、すごくビギニングなところの話になるんですけど。このバンドのギターは最初、ヒロトじゃなかったんですよね。沙我くんとNaoさんが一緒にやると言っていたスレンダーなギタリストがいて。その3人と俺と虎で池袋のスタジオに入ったんです。その後、「面白いギターがいるぞ」と周りの人に教えてもらって、BAQUEPIAの解散ライブを、スレンダーなギタリスト以外の4人で観に行ったんです。そのライブがあった直後だったかな?BAQUEPIAでギターを弾いていたヒロトを日高屋に連行して(笑)。4人の熱い想いを伝えたら、その場で加入することが決まったんです。

ーーヒロトさんに声をかけたポイントは?

将:当時から、ボーカルがいようが関係無しにプロレスのようなマイクパフォーマンスをしていたようなヤツで、「面白いなぁ」と思って。あと「いい曲を作るらしい」というのもNaoさんと僕を他のバンドに誘っていたベーシストから聞いていたんですよね。なので、ヒロトを4人で誘いに行ったところがバンドとしては一番最初の転機だと思います。実は昔、俺と虎で「餞ハナむケ。」というバンドのメンバーとセッションをやった時、そのライブにヒロトも来ていたらしく。ヒロトはヒロトでこっちに目をつけていたみたいなんですよね(微笑)。

ーーお互い「アイツいいな」と意識していたメンバーが一緒にやることになったところに、素敵な縁を感じますね。やはり、先に組もうとしていたギタリストは何かが足りなかったんですか?

将:そうですね。パフォーマンスが大人しくて、パッションが足りなかったんじゃないですかね。虎は元からパフォーマンスが派手なタイプで、当時の横浜バンドはみんなそうだったんですよ。

ーーそんな地元の歴史が。

将:はい。虎も反復横跳びしながら、あのデカい身体でステージを俊敏に動き回りながら観客をめちゃくちゃ煽っていたんです。

ーーそれで、ヒロトさんのステージを観に行ってみたら。

将:本当に今と変わらない派手なステージングだったので。

ーー「これならバランスが取れるのではないか」と思った訳ですね?

将:ええ。みんなピンときたんです。

ーーそれでヒロトさんを引き入れたのが最初の転機。

将:そうです。ヒロトでなければその後の運命も変わっていたと思いますから。そういった意味でいうと、沙我くんとNaoさんも実は、次のバンドと既に初ライブまで決まっていたんですよ。所属する事務所の社長に叙々苑で焼肉をご馳走までしてもらっていたから(笑)、沙我くんが「でも叙々苑食わしてもらったからなぁ…」と言って、一緒にやるのを渋っていたのを今思い出しました(微笑)。Naoさんと沙我くんは周りから「アイツらとはやらない方がいいよ」と言われていたらしくて。俺らは俺らで「アイツらはやめた方がいい」と言われていたし。だから、メンバー各々そういったものを全部スルーしてアリス九號.を組んだ、そこがビギニングの転機ですね。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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