第百八十一回 Gt ヒロト|『月間少年HRT』vol.19

<特集>
アリス九號.凍結について、今思うこと
「19年の中で一番美しい状態にみんなで持って行ったまま凍結を迎えたい」

特別付録
『ブラヒロトin 全国ツアー 〜レンズ越しの世界〜』


ーー現在、LAST DANCE ACT.3「Graced The Beautiful Story」ep.2〝Farewell Flowers〟の真っ只中。なのに、ヒロトさんは現在東京にいらっしゃる。

本来ならまだ函館にいる頃ですね。

ーーというのも、沙我さんがインフルエンザに感染してしまい。

この段階に及んでも色々ありますね。僕はピンピンしてますし、沙我くんももう熱は下がったみたいで一安心。仙台darwinのライブが終わった後、顔が青白かったんですよ。いつにも増して。

ーーそして翌日インフルエンザに感染していることが判り、3月19日、青森Quarterで行うはずだったライブが延期になりました。

青森は色々あるんです。これで3回目なんです、青森Quarterでの公演が延期になるのは。1回目は虎の頸椎ヘルニア。2008年の「A to U」の時。全員メイクも着替えも終わって、虎は病院にブロック注射を打ちに行ったりしてて。ギリギリまでやる方向で進めてたんですね。でもそれが叶わなくて。「君達が表に出て行くとお客さんはもっと混乱するだけだから」と言われて、僕らはスタンバイしている状態のまま、当時の制作スタッフがステージに出て行って、開場時間直前に中止を発表したんです。

ーーええーっ!

って、そりゃあなりますよね。だからあれは悲惨な光景でした。しかもその日、大雪だったんですよ。やっと会場に着いたと思ったら、ライブは中止。それを発表した時のお客さんの光景は今でも忘れられないです。だけどその振替公演をやった時、すっごくいいライブができたんですよね。それもよく憶えてるんですよ。そして、次は2020年にコロナで中止になった「不夜城逃避行」。

ーーそこに今回の公演延期が加わって。

3回目。しかも同じ青森Quarterばかりで。何かあるのかなと思ってしまいますよね。「COVID-19、やっと終わったよね?」という雰囲気の中、「あ、そうか!そっち(インフルエンザ)あったよな」という感じで愕然としました。今回も振替公演はやりますけど、当日しか来られなかった人のことを考えると、そこは心苦しいです。

ーーそうですね。

すっごい余談なんですが、Naoは函館で同窓会がある予定だったらしいんです。

ーー青森の後にまわる予定だった函館club COCOAの公演に合わせてたんですかね。

多分。だけど、行けなかったらしいです。

ーー現在こうしてツアーは進行していますが、いつもと違うのは、これがバンドとしてはアリス九號.“凍結”前のラストツアーであるということ。凍結を発表されて、今の心境を聞かせてもらえますか?

まず、メンバーはファンの人よりも常に半歩、一歩先に進んでいるものだと思うんですよ。リリース作品をファンの人が手に取る頃、僕らは次の制作に進んでるように。そうして、ちょっと先に進んでたメンバーとファンの時間軸がぎゅっと一つになって、帳尻が合うのがライブだと思うんで。将さんがnoteで語っていたように、僕らは一年ぐらい前からこういう話し合いをずっとしていた訳です。それが「凍結」という一つの結果になった。だからファンの人と自分達とは時差があるから、今感じている温度感は僕らと違って当たり前なんですね。そんな状態の中、3月9日、ツアーが始まるまでに2か月の期間があった訳ですよ。

ーー凍結を発表したのが1月9日でしたからね。

その間何も無いと、時差ができたままの状態でツアーがスタートしてしまうなと思ったんですよ。ただでさえ貴重なツアーなのに、このまま始めてしまったら、一本のライブの前半の時間を、ほぼその時差を埋めるために費やしてしまいそうな気がしたんですよ。

ーーなるほど。

だから、そこはどうにかしないとなと、発表をする前から僕は思っていて。いざ発表をしてみたら、ファンはまさに寝耳に水という感じで。メンバー的には徐々にここまで来た感じで、ファンにも少しずつ、例えばツアータイトルとかでも示唆してきてたんですけど。でも、そもそもこれまでバンドとして将さんが打ち出してきた世界観の一つに“終わりの始まり”みたいなものが過去にも何度かあったので、誰もこんなものが待ち受けてるとは想像していなかった訳ですよ。

ーー“LAST DANCE”と言っているわりには。

「なんとなく胸騒ぎはするけど、でもアリスだからね」というところで、みんな捉えてたと思うんですね。だから凍結は本当に衝撃が大きくて寝耳に水だったと思うんです。で、個人的に自分で伝えられるメディアとしてVoicyを持っているので、そこでまず話をしました。そうして発表後、この数年ずっと応援して来てくれてるコアファンの人達のコメントを見ようと思って、Twitterをエゴサしたんです。そうしたら、コアな方々のコメントがビックリするくらい少なかったんですよ。コメントしてたのは「10年前、観てました」とか「昔ファンでした」という人達ばかりだったんですね。それで、自分なりにその現象を分析してみたら、コアなファンの人達はまだショックが大きすぎて言葉にならないんだと思ったんです。どう言葉にしていいか分からない、気持ちがグチャグチャになってて表現できないぐらい頭の中でグルグルグルグルしちゃってるんだろうなと思って。これは、なんか場所がないとダメだなと思って、自分のTwitterとInstagramのDMを開放したんです。別にそれが何になるのか分からないけど、「想いや気持ち、文句でもなんでもいいから受け止めます」という気持ちで。

ーーDMを突然開放した裏には、そのような気持ちがあったんですね。

言葉に出せない想いが消化不良のまま残っていったら絶対よくないと思ったから「取り敢えず何でも言って」と言ってDMを開放したんです。FCでそういうものを作ろうとしたらどうしても時間がかかっちゃうんで、最速でそれができる場所はどこだろうって考えて、行き着いたのが自分のTwitterとInstagramのDM開放だったんです。

ーー開放してみていかがでしたか?

とはいえ、簡単にまとまる気持ちではないというのは当たり前の話で。すぐに送って来る人もいれば、そこからさらに1〜2週間後に送ってくる人もいて。

ーーメッセージは随時見ていたんですか?

はい。全部読んでます。そこで、コアファンの本音、温度感を感じられて、自分もここから先に向かう準備がやっとできたかな、という感じだったんですね。だから、あれはすごくやってよかったなと思ってます。

ーー発表後にコアなファンの本音をダイレクトに聞けるというのは、ある意味SNSが当たり前となった今だからこその方法だと思うんです。そして、それをすることでヒロトさん自身の感情が、コアファンの本音に接することで変わっていったというところが。

自分でもやってよかったなと思う部分です。

ーーそこをもう少し詳しく伺えますか?

DMをくれた半数以上の人は、気持ちがまだグルグルしている状態だったんですよ。「悲しい、驚いた、だけどずっと応援してきた人達が長い時間をかけて出した結論だからそれを受け入れたい、受け止めたい。その気持ちはあるんだけど、そんな風に自分はまだできない」って。

ーーみなさんの気持ちはグルグル変わり続けている状態だったと。

だって、10代の頃からずっと応援してきて今30代、という人からすると、人生の半分以上の時間を共にしてしまっている訳だから。そこでこんなことを一方的に言われても「はい、分かりました、そうですか、じゃあ最後の時間まで応援します」ってなれる訳がない。でも、そうしてあげたい自分もいる。そういうものがグルグルグルグルしている状態の人が多かったんですよ。「凍結」という言葉に対しても、「これはどういう意味なんだろう」というのを各々が考えてくれてて。

ーー「凍結」に込められた意味を?

そうです。「凍結」というワードを提案したのは僕なんですよ。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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