第十五回 Gt 虎 ｜MOVIE TORAVIA「 気づいてしまった『セブン』と『ダークナイト』の類似点と、食べまくるブラッド・ピットの仕草について」

最近、午後のロードショーでちょっと旧いんですけど『セブン』をやってたんですよ。ブラッド・ピットが出てる有名な映画なんで、結構観たことある人もいると思うんだけど。
それを観てて、改めて思うことがあったんで、今回はその話をしようかな。

セブン（1995年/アメリカ）

『セブン』はサイコ・サスペンス映画で、自分は神の申し子だと勘違いしている人が、キリスト教の“七つの大罪”をモチーフに猟奇的な殺人を犯していくというものなんですね。

まずこの映画ね、七つの大罪がテーマだっていってるわりには、そもそも７人も人が死なない訳。この時点でおかしいでしょ？
だから、この映画が公開されるときのキャッチコピーも確か“７つのSin（罪）をもって完成する”みたいなものだった気がするだけど。
それも、俺は日本人が間違ってつけてしまったんじゃね？と思ってしまったんだけど。
そういうのも含め、この映画は公開された当時、ラストシーンが衝撃的すぎて話題になった訳ですよ。

ここまで５つの大罪をモチーフに殺人をおかしてきた犯人、ジョン・ドウは、最後、刑事役を演じてこの犯人を追いかけてたブラッド・ピットの奥さんを殺してしまうんですよ。
そうして、犯人は最後、ブラッド・ピットに殺されてしまう訳ですけど。
ここで、残っていた２つの大罪、嫉妬と憤怒がどうモチーフになっていたのか。

幸せな家庭を持つブラッド・ピットへの“嫉妬”で犯人が奥さんを殺したとしても、犯人からは「嫉妬なのかなぁ？」ぐらいのテンションしか感じられない訳ですよ。
それを嫉妬の大罪としたとしても、じゃあそのとき奥さんのお腹の中にいた赤ちゃんの死はどう解釈すればいいのかとか。
ここの解釈はいろんな考察があるっぽいですけど。

最終的に七つの大罪の残りの一つのモチーフである“憤怒”、これを完結させるために、犯人は奥さんを殺し、ブラッド・ピットに自分を殺害させる。
そこで、七つの大罪をコンプリートしたという映画なのかなと思ってたんだけど。そこで終わらないんですよ。

結局この映画、実は最後の最後に“憤怒”をブラッド・ピットに抱かせるための映画だったんだということに、改めて観たら気づいたんですよ。
全然あそこで終わってないの。

もし続きがあるとしたら、憤怒で刑事なのに殺人まで犯してしまう精神状態まで追い込まれてしまったブラッド・ピットは、きっとここからまた犯人と同じようなことをループして始めてしまうんじゃないかなと思って。
そうして、また七つの大罪をモチーフに罰を与えていくというものが延々とループして続いていく。
だからね、全然七つの大罪はあそこでコンプリートはできても“完結”はしていないんですよね。

この映画は、これはどこにも書かれてないけど、バッドマンシリーズの影響をすごく受けてると思うんですよ。しかも、めちゃくちゃ受けてるの。

バッドマンに出てくるゴッサム・シティってあるでしょ？
あそこって、いつも薄暗くて霧が立ち込めてて、どんよりしてるんですよ。
『セブン』はラストシーン以外、ずっと雨が降り続いてるんです。

『セブン』はどこの街とは具体的にはいってないけど、悪がはびこるような治安の悪い街といっていて。それってゴッサム・シティと一緒なんですよね。
それで、そんな悪い街が作ってしまった悪魔の象徴という意味では、バッドマンのジョーカーとジョン・ドウはまったく同じなんです。

『ダークナイト』でゴッサム・シティの悪と戦う市民の希望の星だったハービー・デントは、ジョーカーに愛するレイチェルを殺され憤怒し、その後ハービー・トゥーフェイスになってしまう訳だけど。
最初はいい人だった人が愛する人を殺され、悪へと覚醒するというところは、妻を殺され憤怒するブラッド・ピットと境遇的には同じなんですよ。

ダークナイト（2008年/アメリカ)

だから、最終的にこの２つの映画がなにを訴えているのかっていうと、世の中は腐ってて、しかも俺が死んだところで次の“俺”が出てくるんだという悪人のあり方を通して、人間の本質を見ろっていうことをいってるんですよね。

誰もが罪を犯してしまう要素を持っている、それが人間なんだ、そこを分かりなさいということをこの２つの映画はいってて。
そこも、全く同じなんですよ。
ね、すごく似てるでしょ？

そもそもバッドマンって、アメコミの流れで生まれたものだから、昔は明るくてポップな映画だった訳ですよ。
なんだけど、俺、監督が『セブン』を観て、そこからインスパイアを受けて『ダークナイト』が生まれたんじゃないかって気がするんですよね。