第百三十四回 Ba 沙我|ノーズマウンテン・ラジオ「次のアルバムは過去イチでメッセージ性がある。このシーンの現状をぶっ壊そうとしてるから」

Naoと行う「THE ALTERNATIVE」のツアーに向けた準備で大忙しの沙我。現在制作中のアリス九號.のNew Albumで彼は、レコーディングの工程に立ち会いヴォーカルディレクションをするなど、制作全般に渡って指揮をとっていて、こちらの方でも作業に追われている。今回のノーズマウンテン・ラジオは、そんな沙我が、現在制作中のアルバムの核となるメッセージ、その背景に流れるマインドを語ったファン必読の貴重な回となった。

ーー前回はU2が「ユシュア・トゥリー」をぶった切って「アクトン・ベイビー」を作ったように、次のアルバムは"「VANDALIZE」、「GEMINI」を作ったときのように冒険しようぜ"というお話でしたが。

「そうですね。あと、冒険したかった理由についてなんですけど。俺達、昔話が多いなと思ったのもきっかけとしてあったんです。15周年が終わったぐらいからずっと、MCでも昔話に花咲かせてるじいさんみたいに思えちゃってて」

ーーいやいや、沙我さん。それはどこのバンドもそうなりますって。

「そうなんですか?でも俺はそれがめちゃくちゃ嫌だったんですよ。それも冒険しようと思った要因の一つです。“昔話ばっかしてる俺、ダッサ~”って俺は思っちゃうんですよね。俺は常に今の話だけをしていたいんですよ。過去を振り返る場でそういう話をするのは全然いいと思うんです。でも、曲の話をする時も結局は昔の話になっちゃって、今を見るというよりも"過去を振り返る瞬間"というのがめちゃくちゃ多かったんですよ。「絶景色」や「GEMINI」、ベスト盤もそうですけど、昔を振り返ることが実際に多かったから仕方がないのかもしれないですけど。とにかく、そうやって過去を振り返るのはもういいだろうと」

ーー沙我さんはそんな風に感じていたんですね。

「ええ。ウチの親父とか、昔話になると同じ話を5回ぐらいする訳ですよね。親戚のおじいちゃんとかおばあちゃんもそうですけど、お年寄りって何回も何回も同じような話をしますよね?そういうものがすでに俺はインプットされてしまっているんで、それに似た感覚を感じたんですよ」

ーー昔話ばかりしている自分たちに。

「ええ。“うわっ、またこの話かよ”って。そこは曲に置き換えても同じなんですよ。“またこの曲かよ”って。それらをすべて全否定している訳ではないんですよ?あくまでも俺の個人的な感覚としてそうだったということです」

ーーそうでしたか。では、ここからは"冒険しようぜ"の合言葉の元、制作中のアルバムについて聞かせてください。楽曲作りに関して、沙我さんからメンバーにオーダーしたことはあったのでしょうか。

「ありました。具体的には、"シンプルに5人の音だけで成立するような生々しいもの"ということですね。僕らはどういう音楽を聴いてカッコいいと思ったのか、それを思い出して作ってみて、と言いました。例えばですけどね、僕らはヴィジュアル系というシーンにいますけど、“ヴィジュアル系っぽいよね”という人達って、今めちゃくちゃ多いんですよ。そこがすごく違和感であり、チャンスだと思っていて」

ーーそれはどういうことですか?

「だって、例えばヒップホップの人は“これヒップホップっぽくない?”って話をしてヒップホップを避けたりしないでしょ?だけど、このシーンは“これヴィジュアル系っぽくね?”ってなると“ダサっ”といって、それを避けたがる傾向にあるんです」

ーーなるほど。

「ヴィジュアル系シーンだけは、不思議とヴィジュアル系っぽいのを避けたがるんですよ。そこにJ-POPを取り入れたり、洋楽、ヘヴィロックやラウドを取り込んで、他のシーン、ジャンルと比較しても肩を並べられるもの、恥ずかしくないものを作りたがるんですよ。だから2022年の今、俺はこのシーンが空洞にしか思えないんですよ。みんながみんなそうなっちゃってるから、空っぽにしか思えないんです。このシーンの真ん中には一体誰がいるんだろうって思うんですよね」

ーーまるで主役のいない舞台を見ているような。

「そうそう。そういう違和感をとても感じていて。なんなんですかね、この現象は。90年代とか2000年代にこのシーンでやりまくっていた曲調とかアレンジとか、そこに最も人(=リスナー)が集まってきていたはずのものを、みんな“ダサい”といって避けるんですよ。でもそれを今風にカッコよくしたからって、ヴィジュアル系がまたブームになったかっていうと流行ってないんですよ。他ジャンルのものを色々取り入れて洗練されていって、ヴィジュアル系が他のシーンと肩を並べるぐらいの音楽になっても、爆発的に売れた感覚は俺には無いんですよ。だから結論から言うと、すごく行き詰まってるなと思うんです」

ーーヴィジュアル系シーンが?

「はい。もう完全に行き詰まり感がある。"チューニングを低くしてなんとか音で誤魔化そうとしてるでしょ"ってところも正直あると思うんです。それか、他ジャンルのカッコいいものをどんどん取り入れて、それっぽい音にして生き延びようとしてる。そういうのをもうすべて止めようと」

ーーそれは興味深いですね。

「そういうのはすべて止めて、僕らはバック・トゥ・ベーシックでいこうと。今の僕らのここまで経験を重ねてきた感覚でやれば、絶対にダサくはならないので。逆にすごく新しくなるんじゃないかなと思うんですよ。だから俺はそれをやってみたいんですよね」

ーー沙我さんがヴィジュアル系シーンに対して、今話してくれたような違和感を抱き出したのはいつ頃からだったんでしょうか。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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