第百九十七回 Ba 沙我|ノーズマウンテン・ラジオ「Singularity 02」とアリス九號.のターニングポイントについて (前編)

現在、LAST DANCE ACT.4「Frozen Waterfall」開催中のアリス九號.。
今回のノーズマウンテン・ラジオは、札幌公演を終えた沙我とリモートで繋ぎ、ツアー前に開催したツーマンライブ企画「Singularity 02」を振り返ってもらった。
さらに、アリス九號.における自身のターニングポイントについてのトークと併せて二本立てでお届けする。

ーー現在、LAST DANCE ACT.4「Frozen Waterfall」の真っ最中ですが、体調はいかがですか。

沙我:大丈夫ですよ。

ーーそれでは、このツアーをスタートする前に行ったツーマンライブ企画「Singularity 02」のお話を伺っていたいと思います。やってみていかがでしたか。

沙我:lynch.、vistrip、DEZERT、とまったくカラーが違う3バンドとやったんですけど。だからツーマン企画とはいえ、一本一本が全然違うもの、といった感触でした。中でもlynch.は別物でした。個人的にはlynch.とはやりたくなかったんですよね(微笑)。

ーーどうしてですか。

沙我:多分ウチにいいことは起こらないだろうな、というのが想像できたからです。カラーが違う者同士でやるというのは対バンの醍醐味でもあるんですけど。今回、どういうセットリストやライブでlynch.とやればいいのかを考えた時に僕は、「まったく意識せずに、lynch.にも寄せず、逆に向こうがウチらの玄関に訪れてくる」それぐらいの感覚でやった方がいいと思ったんですね。意識すると絶対に飲まれてやられちゃうだろうなと思ったんで。lynch.は今まさに脂も乗ってて強いバンドなので。

ーー沙我さんはそんな想定の元で対バンに挑んだんですね。

沙我:そうです。だから、当日来てくれたお客さんの中には「lynch.が相手なんだからもっと暴れられる曲でよかったのに」という人もいたと思うんですよ。でもそれをやっちゃうと、もともと優等生のヤツらがタトゥーシール付けて、アクセつけて、悪ぶって渋谷のクラブに行くようなダサい感じになっちゃうんで。

ーーたしかに。

沙我:それなら、普段通りの自分達のままで夜の渋谷の街に繰り出した方がいい、という考えで。あくまでも自分達は自分達、という感じでやったんですよ。僕は敢えて意識しないように…向こうのライブも本当は気になるんですよ?けど、当日はまったく意識しないようにして。ウチはウチ、という感覚でいつも通りでいったんですけど。結果、飲まれちゃいました(笑)。

ーーそうならないように準備していたのに。

沙我:ねっ。でも引っ張られちゃいましたね。キラキラしなきゃいけない日だったんですけど、熱くなっちゃいました(笑)。lynch.はlynch.で、俺達と対バンをやる意味というのを意識して、同じ時代を歩んできた感を出してくれてたんですよ。

ーー嬉しいことですね。

沙我:そうなんですよ。でもとはいえ、彼らは俺達みたいに何でもやるような訳ではなくて、バンドとして一本の太い筋がビシッと真ん中に通っていて、その中で色々やってる、というタイプのバンドなので。あの真ん中にある激しさにまんまと飲まれてしまいましたね。

ーー懸念していた通りの展開になってしまったということですね。

沙我:そうです。ウチがlynch.に寄せて暴れるライブをやってもね、ペンライト振っちゃってる時点で。

ーーもはや別物だと。

沙我:そうそうそう。暴れる方向にとことん寄せるんなら、それこそペンライトも封印して。ウチらも真っ黒い衣装で揃えて、lynch.のモードでぶつかるならまだ寄せる意味もあったのかなとは思いますけど。そこまでやっても飲まれるだろうなと思ったんで、僕は飲まれないためにも、敢えて火を点けけないようにしたんですよ。対バン前にやってたツアーのモードのままでいけるようにしたんですけど、それでもダメでしたね。

ーー火を点けられてしまった訳ですね。では、その後に行ったvistlipとDEZERTとのツーマンはいかがでしたか。

沙我:2組ともすごいリスペクト感を出してきてくれたんですよ。なので、この2組はlynch.とは逆に、それぞれのバンドに寄せました。だから対バンっていう感じではなかったですね。すごいウチらのことを立ててくれてたんで。

ーーそれはそれで光栄なことですね。

沙我:そうなんですよね。そうなるとこっちも向こうを立てなくなるので。

ーーとなると、激しくぶつかり合う対バンというよりもアットホームな雰囲気のイベントになってしまうというか。

沙我:そうなんですよ。だからずっと課題でしたね、対バンは。アリス九號.にとって。お客さんも思ってるんじゃないですかね。もっとこうしたらいいのに、ああしたらいいのに、って。でも、その意見も十人十色なんですよ。

ーーそこはlynch.とは違って、色々な楽曲の筋を作ってきたアリス九號.だからこそ、そうなってしまうんだと思います。そしてここからは、そんなアリス九號.を沙我さん視点で振り返っていただこうと思うのですが。沙我さんが考えるアリス九號.のターニングポイントというとどこになりますか。

沙我:ウチはバンド単位でのターニングポイントって明確には無いんですよね。メンバーそれぞれのターニングポイント、覚醒したシーンがあって。多分そこがそれぞれのターニングポイントだと思うんですね。なので、あくまで自分視点でしかないんですけど。僕がアリス九號.にスパイスを加えたなというシーンは「RAINBOWS」を作った時ですね。バンドを変えたくて変えた時だったんで。これは想像なんですけど、僕は虎がアリス九號.にスパイスを加えたポイントは「春夏秋冬」だと思うし、ヒロトだと「ヴェルヴェット」や「FANTASY」だと思うんですね。それぞれポイントがあると思うんです。その中で僕が「RAINBOWS」を作った辺りからバンドは急激に変わっていったんですよ。当時は事務所に入ってたんで、周りの大人達的にはその変化にヒヤヒヤしてたんじゃないですかね。今までちゃんと言うことを聞いてた子が突如自我を持ち始めて、中学生になった途端に家に帰って来ない反抗期の子みたいなヤツらになっちゃったんで。でもあの時期はすごくバンドとしてスリルがあったんですよね。攻めてる感じがして。

ーーそもそもなぜそのタイミングで「RAINBOWS」を作り、自我を表現するようになっていったんでしょうか。

沙我:なんでだろうなぁ…。「RAINBOWS」を出す前はシングルがオリコンのトップ10に入ったり、TVに出たりしている自分達を見て、夢見てたことが叶った瞬間というのがいくつもあったんですね。でもそうやって夢が叶った瞬間を体感してても、それは自分達の実力、パワーだけじゃない感じが僕はすっごいしてて。

ーー素直に喜べなかった、と。

沙我:嬉しいんですけど、でもプロデューサーを入れてたんで、そのプロデューサーの力や事務所のサポートとか、周りの大人達の大きな支えがあってこその、メジャーというフィールドでの活躍だったように思うんです。だけどその活躍は元々僕が持っていたイメージとは違ったんですよね。

ーーどう違っていたんですか。

沙我:メジャーのフィールドに馴染んでそこで活躍するんじゃなくて、異物感を出して、出すぎた杭みたいな感じで「なんだこれ!?」というものがトップ10に入る、そういうのに衝激を受けてバンドを始めた世代なんですよね、僕は。X JAPANとかLUNA SEAとか。「え!この曲が1位なの?こんな曲、他に無いけど」みたいな感じでX JAPANの「DALIA」とかが1位になってた時。「なんだこれ」って思った。そういうことがやりたかったんですよ。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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