第百六十二回 Ba 沙我|ノーズマウンテン・ラジオ アルバム「GRACE」全曲徹底解説(1)
「『GEMINI』を作った後はうまくいかなくて、辞めようかなと思った時期もあった。その時の心残りをやっとこのアルバムで回収できた」
今回は11月2日にリリースしたアリス九號.の11thアルバム「GRACE」について、全曲解説を敢行。
アルバム、楽曲の方向性、アレンジのみならず、レコーディング現場では楽器隊、ボーカルディレクションまで行い、トータルプロデューサーとして本作の制作をリードした沙我。
ここではプロデューサーならではの視点から曲を詳しく分析しながら解説。
制作時のバックストーリーを含め、ここでしか読めない内容になっているので、これを読んで改めてアルバム「GRACE」を聴き、ツアーにも駆けつけて欲しい。
ーー本作はトータルプロデューサーとして制作をリードされたそうですが、歌詞に関しても一貫したテーマを感じまして、沙我さんから明確な指示などがあったのでしょうか。
今回はアルバムを作る前に、「どういう作品を作ろうか」というところをちゃんとみんなに話してから制作に入ったんですね。だから、これまでのアルバムやミニアルバムよりも、将さんの中で一つのテーマ、その方向性が定まった状態で書いてるからそう感じたんだと思います。
ーー「VANDALIZE」「GEMINI」にはシングル曲がありましたけど、今作はそれが無いので、方向性がブレることが無いですね。
はいはいはい。そうですね。
ーー息つくところなく、一貫したテーマが色濃く流れているので、歌詞のテーマも含めてアルバム全体が醸し出す圧がすごいです。
ははっ。なるほどね。シングル曲が無いので、違うところへ振り回されたりしてないですからね。
ーーそうなんですよ。沙我さんは仕上がった今作に現段階でどんな感想を持たれているのでしょうか?
うーん、まあ今回は制作の段階から順調ではなかったんで。
ーーそうなんですか?
全然順調じゃなくて、押しに押した感じなんですよ。途中から本当に僕への負担がすごくて。結構しんどいのが後半はずっと続いてたんですよね。なので、作りたいものが作れたかというと、ちょっと分からないなというのが正直なところなんですけど。でも、大枠から逸れることなく、やりきることはできたなというのは今のところ感じてます。だから、今までのアルバムには無かったような一貫したものが作れたと思ってます。
ーーなるほど。制作が押しに押した理由はなんだったんですか? 曲が上がらなかったんですか?
うーん、曲はあったんですけど、それが進行するのに半年以上かかったりしてたんですよ。マイペースなヤツらが多すぎて(笑)。
ーーその皺寄せが「あとはよろしく」という感じで最後に沙我さんのところに来てしまったんですか。
「よろしく」とも言われないですけど(笑)。
ーー沙我さん的にはその最後の詰めの作業が大変だったと。
一番大変だったのは、制作が押せ押せになって遅れているとはいえ、一曲一曲にかけるアレンジ、プリプロの練り具合というところでは、何回も聴かないと気づけない穴がある訳ですよね。時間を置かないと見えてこないとこもあるし。そういう意味では「本当にこれでいいのかな?」と何度も何度も練る作業が必要だったところですかね。まあ、よくはない環境だったってことです(笑)。
ーー収録曲を10曲にするというのは早い段階から決めていたんですか?
いや。最低ラインが10曲で、理想は13〜14曲だったんです、最初話してた時は。今度のアルバムは一本のツアー、半年ぐらいで終わらせるんじゃなくて、一年とか長いタームをかけて、アルバムをちゃんと届けたいと言ってたんですよね。なので、それだけ濃いものを作るには13曲ぐらい必要かなと言ってたんですけど。蓋を開けたら10曲になりました。曲はまだあったんですけど、もうこれ以上は無理だなという感じで。
ーーアルバムの方向性としては、今のヴィジュアルシーンに対して自分たちが物申す作品を作るというのは制作段階から宣言されてましたよね。
はい。言ってました。
ーーそんな精神的テーマがあった中で、制作途中に「Grace」という楽曲が降りてきてしまったのは、沙我さんとしては想定外というかイレギュラーなことだった訳ですよね?
イレギュラーでしたね。
ーー「え、コレ今出てきちゃうの?」という感じだったんですよね、きっと。
そうですね。だから、他にこれ以上にリード曲になるものがあれば、そっちが良かったんですけど。
ーー最初、リード曲はダークなものを想定されていたんですよね。
ええ。だから最初は「Exodus:」とか「界」でもう一本出そうかなというイメージではあったんですけど。ただ、「Grace」という曲があまりにも強くて。これをアルバムの中の収録曲のみで収めるのもどうなのかなというところで、すごく悩みました。でも他に「Grace」を超えるものが無かったので。
ーーいやいや、「Grace」を超えるものって、なかなか作れないのではないでしょうか。
そうなんすよねー。
ーーしかも、そんな楽曲がこのタイミングでできてしまった。そこと沙我さんはどう向き合っていったのかをお聞きしたいです。
別に誰か偉い大人に言われてこういう曲を作らなきゃいけなかった訳でもないし、本当に自然発生的にできてしまったんで。自分もバカじゃないんで、分かっちゃったんですよ。「これは表に出さなきゃいけない曲だな」というのが。これは出さなきゃいけない、なおかつアリス九號.のお客さんたちもきっとこういう曲を待ってる部分はあるだろう、というのも分かってるんで、色々悩んだんですけど「Grace」を2本目のリード曲として出すことにしたんです。この選択が果たして正解だったのかどうか。「界」にしといた方がよかったのか。そこは未だにちょっと分からないです。
ーーでも今、「Grace」が自然とできたというお話を聴いたら、なおさらこれを出すべきだったのだろうなと思いました。
作っててもしっくりきたし、楽しかったんですよね。僕の頭の中にはずっとバンドの核として「VANDALIZE」と「GEMINI」があるという話は、以前のnoteでもしたと思うんですが。僕的には「VANDALIZE」と「GEMINI」は繋がってて。バンドの進化がすごくよく表れた2枚だったなと思ってるんですね。で、「GEMINI」を出した後、一度僕の中では終わったんですよ。だから「“9”」以降は全然うまくいかなかったというのが正直な話で。別に作品を否定している訳ではまったく無いんですね。だけど、「“9”」以降は振り回されたなという感じがすごく僕の中にはあったんです。迷いが自分自身あって。当時はメジャーで出してたから、「GEMINI」を出した後、「BLUE FLAME」をシングルで出したんですけど、またそこでガラッと変わって。そこから「“9”」「Supernova」と繋がっていくんですけど。僕の中で、バンドとして「VANDALIZE」「GEMINI」で核ができたと言ってる割には、その核からすぐに逸れていっちゃった印象なんですよ。
ーー「BLUE FLAME」がきっかけとなって。
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アリス九號.オフィシャルnote
限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…
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