第五十五回 アリス九號. Gt ヒロト|『月刊 少年HRT』 vol.01
特集
新作『黒とワンダーランド』リリース直前、ヒロトが読者の皆を連れて、前作『不夜城エデン』を聴き語る
<付録動画>
HIROTO Guitar Channel②
「 光環 」を弾いてみた
新作『黒とワンダーランド』を更に楽しむためにも、今回は改めてヒロトさんに前作『不夜城エデン』をじっくり語っていただきました!
読者のみなさんも『不夜城エデン』の音源を聴きながらお楽しみください。
<付録動画 Sample>
※アリス九號.オフィシャルnote定期購読者様はノーカットにて記事下部よりお楽しみください。
ーー最初はアルバム全体像の話なんですが。『不夜城エデン』、今振り返るとどんな印象の作品ですか?
作り終わった瞬間に、ポロッと言葉として出たのが「ここにたどり着くためにいままでがあったんだな」ということでした。
ーーTwitterにも書かれてましたよね。
うん。それが本当に(アルバムが)出来た直後の思いだったんですよ。
これまでの物語が集約されたものという気がしたんですよね。
でも、それは集大成という意味ではないんです。
これまでやってきたことの全要素が含まれてるという話ではなくて、それらの要素をたどっていってたどりついた場所、という意味です。
しかも、それがすごくいい空気、いい雰囲気の場所という感覚でした。
全く未知なるところというのではなく、地続きの先にある場所だったからそう感じたんですよね。
僕らがやってきた要素がすべて詰まった作品というものというよりは、僕らがたどってきたルート、一つ一つの物語の先にある地続きの新しい場所。
そう僕は解釈しています。
ーー今作を作るにあたって、新しく挑戦したことはありましたか?
ちょっと話が長くなるんですけど。
まず、ベストアルバムを作ることで、僕はずっと過去の自分と向き合ってきたんです。
それが予想以上に自分にとってはしんどい作業だったんですね。
人は新しい困難にぶち当たると、まず必死に戦うんですよ。
そこで戦って、勝ってきたからこそ、このアリス九號.というバンドの物語も今まで続いてきてるんですけど。
ーーそうですね。
例えると、ウイルスとかもそうですけど、人は勝つとそこで抗体を持ちますよね?
だから困難と戦って勝ったときも、人の体には困難だったという苦しい記憶より「困難を乗り越えて俺は新しい武器を手に入れて強くなった」といういい記憶の方が残っていくと思うんです。
でも、その困難だったという記憶は根絶した訳ではないんですよ。
だからベストアルバムに入った作品と改めて向き合うことによって、『バイオハザード』の研究所の危険領域に保存していた「過去の困難だった記憶」と僕は再び向きあうことになってしまって。
ーーそれで、当時戦っていたウイルスに、再度襲われてしまったとか?
ええ。個人的には本当にそういう感覚で、もう1回当時の困難だったウイルスに感染しちゃったんですよ。
だから、この1年半ぐらいはむちゃくちゃキツかったんです。
ベストを出して、去年の野音のライブが終わるまでは。
たぶん、困難を感じていた当時は目の前のことをやるだけで精一杯だったから、勝ったといってもそれを根絶するところまでは至ってなかったんですよ。
それでも、勝てるギリギリの抗体は持てたから、なんとかそれで先に進めたんです。
だけども、10年も経つとその抗体の効力は薄れてしまって。
そういう意味で、ベストアルバムのツアーは毎ライブ本当にキツかったんですよね。
ーー精神的にそんな時期があったんですね。
ええ、そして
それをまたやり切れたことで、より一つ強くなれた。
そういう時期を経て『不夜城エデン』の制作に入ったんですけど。
この時には、ギタリストであるヒロトというよりも、もっとその前、なんだかわからないけど、音楽が好きっていう自分というところで制作に向かえたんです。
なので、今回はギタリストとしてというよりは、もうちょっと“音楽芸術”
そういう視点で1つ1つの楽曲と向き合うことができたんですよ。
その向き合う手段として自分はギターを弾いているという感じなんですよね。
ーー『不夜城エデン』自体、ギターがバキバキに鳴ってる作品ではないですもんね。
うん、そうなんですよ。ベストアルバム、ツアーで過去の自分と向き合ったことによって、「ギターでがむしゃらに弾き倒す自分」をようやくコンプリートできた感があったんですよね。
ーーほほぉ。
だって、初期作品になればなるほど、ずーっとギター弾いてるんですよ。
ギターから始まってギターで終わって、その間もずっとギター弾いてるんです。
で、『Supernova』あたりになってくると、シンセとか5人以外の音がどんどん入ってくるからちょっとお休みのセクションがあるんだけど。
それでも曲の8〜9割ぐらいでギターを弾いてるんですよ。
そんなギターを弾き倒す状況で2時間半のステージをやってると、弾いてることが当たり前のなかで気持ちの抑揚を表現することになるんですよね。
だけど自分が一番表現したいのは、ギターが常に鳴っていることがマストなのではなくて、音楽を通して心が共鳴したり景色を共有することなんですね。
ギターはあくまでもそういう空間を作り出すための手段なので、ずっと鳴ってる必要はないんですよ。
逆に、ギターが鳴ってたら作り出せない景色や匂いというものもあって。
ベストアルバムのツアーをやっていく中で、改めてそれに気づいたんですよね。
それは怪我の功名じゃないですけど、さっきも話したように、このツアーは気持ち的にすごくしんどい中でやってて。
もちろん、最高に幸せな瞬間というのもアップデートされていってましたけどね。
ただね、ライブ中にも、困難だったときの記憶がフラッシュバックして、それは本当にしんどかったんですね。ある意味音楽ってすごいなと思ったんですけど。
当時と同じ曲を同じライブハウスで演ってると、パチーンと記憶が結びついて、その当時の辛かったことが全部鮮明に蘇ってくるんですよ!
ーーあふれ出るように。
そう。
でも、それが起こったことによって、本来は弾くべきフレーズがあるところを弾いてない瞬間というのが結構あったんですね。
あのツアーでは。
ーーもう、苦しくて無理。弾けませんって。
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アリス九號.オフィシャルnote
限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…
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