第百六十九回 Ba 沙我|ノーズマウンテン・ラジオ アルバム「GRACE」全曲徹底解説(2)


『GRACE』

前回から始まった、アリス九號. 11thアルバム「GRACE」全曲徹底解説。今回は2曲目「Funeral」から解説。
これを読みながら、「GRACE」を改めて聴いてみてほしい。

ーー今回はアルバム「GRACE」の2曲目「Funeral」から解説を再開させたいと思います。

これは「Living Dead」と似たような想いで作りました。今やクラシックとなっているフレーズ。だけど、80年代や90年代のサウンドを“これってオシャレやろ?”という感覚で楽曲に取り入れてるアーティストって、たくさんいて。シンセポップやシティポップなんて特にそうなんですね。

ーー80’s〜90’sのテイストを現代にリバイバルさせて。

ええ。その感覚で、90年代に僕が聴いていたヴィジュアル系をリバイバルさせたのが「Funeral」です。だから昔っぽい曲ではあるんですけど、"それを自分達が今やったらこうなりました"という感じです。

ーー確かに、要素的には古き良きヴィジュアル系を匂わせる部分があちこちにありますが、尖ったサウンドに仕上がってますね。

そうなんですよ。

ーーそこは、沙我さん的にはどんなマジックを仕掛けたからだと分析していますか?

僕が当時「ヴィジュアル系ってカッコいいな」と感じていたもの。そのセンスがカッコよかったからじゃないかなと思ってます(微笑)。

ーー当時ヴィジュアル系を聴いてどういうものがカッコいいと思って自分に突き刺さったのか、それを現代に蘇らせても、カッコいいものはカッコよかったということですね。

そうです。"リバイバルで俺らが今こそやってもいいんじゃないの"というのがこの曲で。いつまでもSlipknotやLinkin Parkの延長線上にあるようなサウンドを求めてチューニングを下げてやっていくよりも、逆に当時自分達が本当にカッコいいと感じ、信じたヴィジュアル系をリバイバルさせた方が、今こそカッコいいんじゃないかなというメッセージを込めています、この曲には。

ーーなるほど。この曲のNaoさんのドラミングもカッコよかったですね。

レコーディング時のドラムの音に関しても、今はみなさん素材を張ったような音でメタルっぽい音にしていくんですけど、今回はそれとは逆で。いかに生っぽくするかというところで、生っぽいんだけどしっかりと迫力を持たせて聴かせることを追求して。そこのバランスが難しかったです。生っぽさを求めていくとどうしても物足りなくなっちゃうんですよ。そこを、"いかに生っぽさを最優先しながら迫力を出すか"というのは挑戦した部分ですね。だからドラムの音だけ聴いてもらっても、他のとは全然違うのが分かると思います。

ーードラムが生音に近づいたお陰なのか、ベースの音も、すごく前の方で聴こえてくるような気がしたのですが。

そうですよね。そこは、ベースを目立たせるためにボリュームを上げたとか、そういう訳ではないんですよ。

ーーそれなのに、この曲だけではなくアルバム全体を通して目立って聴こえるのは何故なんですか?

それはアレンジで隙間をすごくしっかり作ってあるからよく聴こえてくる、という仕組みなんです。もう少し解説すると、各パート、役割分担をしっかりと持たせた上で、ユニゾン的なことを一切せず、空間を埋めずに各々の楽器が押し引きしている状態になるようアレンジしているから、いつもよりも各々の楽器の音が際立って聴こえてくるんですよ。あと今回、音数もいつもよりも圧倒的に少なくしたんですね。シンセもほぼ入れてないし。だから、各パートがより浮き立って聴こえてくるというのもありますね。

ーーそんな仕掛けがあったんですね。

ええ。よくね、完成したアルバムを聴いてベースの音が抜けてこないと、自分の音作りが悪いからなのかなってみんな悩むと思うんですが。だけど、そこは最終的にはバンドのアレンジ次第だと僕は思うんですよね。

ーー空間を埋めないアレンジにすれば、必然的に聴こえてくると。

あと無駄な音、必要の無い音を入れない。

ーー物足りないからといって、無駄にシンセを加えてキラキラさせない、とか。

そうそう(笑)。でも、僕らも過去にやってましたから。「IDEAL」や「PLANET NINE」を聴き返してもらえれば、みなさんもすぐに僕が言ってる意味が分かると思います。

ーー「PLANET NINE」は特にそうでした。

もうギターバンドではない、というところまでやっちゃってて。シンセを担当してる人はメンバーに居ないのにギターはうっすらと両サイドで鳴っているような、シンセバンド風になっちゃってましたから(笑)。そこをね、ロックバンドに戻した感じです。なんか、気を抜くとすぐにシンセを入れたがるんですよ。

ーーそうなんですか?

ええ。多くのバンドがそうだと思います。ウチの場合は、全部僕がそれを消すんです。「もうこれいらない」「これはギターに置き換えて」と言って。

ーー特にアリス九號.の場合、ギタリストが二人居ますしね。

そうなんですよ。

ーーでは次は3曲目の「Moondance」へ。

これはヒロト原曲なんですけど、かなり早い段階でデモがあったんですよ。そこから7~8か月ぐらいその後が届かなくて、なかなか作業が進まなかった曲ですね。

ーーデモの段階からこのような雰囲気だったんですか?

いや、デモは全然違うものでした。それをもっとグルーヴィーにしながら、さっき話したように隙間を作っていった感じです。最初はギターやベースのリフで埋め尽くされてて、シンセもすっごい入ってたんですよ。シンセは8割ぐらい落としていって、代用できるところはギターに落とし込んでいったって感じですかね。

ーーアレンジしていく時に沙我さんの中でイメージした方向性というと?

BUCK-TICKさん方面の方々の“妖しさ”みたいなものをアリス九號.風に昇華させたらどうなのかな、みたいなところですかね。

ーーなるほど!

僕の中に、曲のイメージとしてDer ZibetのISSAYさんの顔がずっとあったんですよ。ISSAYさんの顔のイメージなんです、この曲は。

ーーよくご存知ですね。

実は一度対バンさせていただいたことがあるんですよ。アリス九號.を結成した頃、恵比寿かどこかで。当時の僕らからしたらISSAYさんの存在感は「めちゃくちゃカッコいい」「この人、本物や」という感じだったんですよね。その時に感じた妖しさを思い出したのかな。だから、ヴォーカル録りの時も将さんには妖しさを意識した歌い方をお願いしました。この曲はヴォーカル録りもかなり後半だったので、その頃にはもう僕がこの作品で求めている“歌い方”というものに慣れてたので、時間もかからず。歌録りは結構早かった記憶があります。これは、ちょっと前までの将さんだったら歌えない曲調なんですよ。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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