第百三十九回 Gt ヒロト|『月刊少年HRT』vol.13
<特集>
PROTOTYPE始動①
「誕生秘話からリハまでをドキュメント」
<特別付録>
HIROTO Guitar Channel Vol.xxx
「憧憬。LIVE IN AMANOHASHIDATE」
ーーまず最初に、「PROTOTYPE」がどんな経緯で始まったのか伺えますか?
今年上半期、アリス九號.として夏まではアルバム制作に集中してライブ活動は控えようという話になったんですね。でも、何もアクションを起こさないのはアルバム制作をやるにあたってプラスではないなと思って。かといってアリス九號.でライブをやるとなると、アルバム制作に集中できなくなってしまう。「じゃあその間に個別イベントができる人がいるならやろうよ」という話が次に出てきて。リズム隊は「THE ALTERNATIVEだったらやれるよ」となって。
ーーすでに形がありますからね。
「じゃあヒロトは何かやれる?」という話になった時、僕は一人でやるのはちょっと違うなと思って。
ーー今までソロライブはやってきましたけれども。
そうなんですけど、肌感覚で今はやるタイミングではないなと思って。何でかっていうと、自分一人でやる時はギターにはあまりフォーカスしていない感じになってしまうんですよ。自分的には、このタイミングでやるなら次のアルバムに向けての何かをやりたいと思ったんですね。
ーーアクションを起こすなら、アルバムに繋がる、プラスに働くものをやりたかったと。
そう!それで自分が最初に提案したのは、あるファンの方から長年リクエストをもらっていた企画がありまして。それは、「ギター隊二人でギターに関する何かをやって欲しい」という要望で。それを3年間ぐらいずっと言ってくださってて。自分は過去に一度だけタイでギタークリニックをやったことがあるんですけど。
ーー2017年にギターワークショップとファンミーティングを兼ねた「Exclusive Guitar Party with HIROTO」をタイ・バンコクで開催されていましたね。
それがすごくよかったんですよ。だけど、「日本でこれをやるぞ」という感じにはなってなかったんです。でも今回「やるなら今だ」と思って。ギターにフォーカスしたイベントをやることは自分にとってもバンドにとってもファンの人にとってもいいタイミングだから、ここで今一度ギターのことについてお話をして、理解を深めてもらって。それがアルバム制作の途中にあって、その後僕らは再び制作に戻ってアルバムを完成させる。そうして、イベントに参加した人たちは新しいアルバムの音源を聴いた時、今までとは違う聴き方ができると思うんです。そういうストーリーが自分の中で想像できたから、僕は「ギターにフォーカスしたことを虎さんとやりたい」と提案したんです。ギターのことだけを知ってもらうなら僕一人でもいいけど、二人のアンサンブルをより可視化したくてそういう提案をしたんですが、「いまいち見えない」と虎さんに一度却下されて。
ーー虎さん自身、そこまでギタリストとしての自分を主張したい人ではないですからね。
そうなんですよ。「ヒロトには向いてると思うけど、俺はギターについて語りたいこととか無いし。ギターだけのイベントとか、俺には見えない」と虎さんも言ってました。それで、虎さんの方から「俺がPATAやるからヒロトはHIDEをやってよ。それだったら見えるわ」と言われたんです。「ヒロトがセンターに立ってボーカル&ギターをやって、俺がギター弾いて。バンド形態でがっつりロックをやるんだったら見えるわ。それがあってのギタークリニックでいいんじゃないの?」と言われて。逆に、自分はちょっとそれが嫌だったんですよ。
ーーどこが嫌だったんですか?
ギターにフォーカスしたいのに、自分が歌わなきゃいけないのが。でも、自分はこの間にライブというリアルなコミュニケーションが無いと、アルバムを作り切れない。3月にやったツアーだけではエネルギー的に最後までもたない、途中でガス欠になるな、というのが見えていたので、ギター二人で動くためにはそれをやるしかねぇなと思ったから「やりましょう」と。それが始まりです。
ーーつまり、ヒロトさんの意図しないところから始まったプロジェクトだったんですね。
そうです。それで、虎さんからキーワードとして「ロックでパンクな感じがいいんじゃない?その方向でヒロトも考えてみてよ」と言われたので、やるならまず名前とコンセプトと曲を考えようと。曲は僕がソロでやってた曲を「一度全部聴かせてよ」と虎さんに言われたので送って。「これとこれとこれはいいんじゃない?」と言われてやる曲が決まり、さらに、僕がソロでやってたオリジナル曲「and U」と、「FlyME project」に楽曲提供したDRINK MEの「The New World」と「EAT EAT EAT」はやろうということになったんですね。
ーーそれは虎さんの提案で?
そう。これらを軸にして、カバー曲を入れていって。アリス九號.のオリジナル曲はヒロト作曲と虎さん作曲の曲を入れて。あとは、お互いの地元が会場として入っていたので、自分のルーツとなるもの。そこはギタークリニックで出てくる話にも繋がっていくだろうなと思ったので、お互いのルーツミュージックを入れよう、というので曲をセレクトしていったんです。
ーーなるほど。ヒロトさんはなぜ虎さんが最初に“ロック”“パンク”というキーワードを挙げたんだと分析していますか?
それは直接虎さんから言われました。「フロントにヒロトが立つなら、熱い感じ、ロックな感じを全面に出した方が面白いし、ヒロトに合うと思うんだよね」って。
ーーフロントマンとして歌うヒロトさんを、虎さんがプロデューサー視点で分析していった上での言葉だった訳ですね。
うん。「そうしたらアリス九號.ともまったく違うものになるから」とも言ってました。それで、初日のリハ後に「歌が将くんっぽいんだよね。ちょっと将を捨てよう」と虎さんに言われたんですよ。「もっとヒロトっぽいものがあると思うから、将は忘れよう」と。そういうことを言うようになったのは、リハに入る前、曲決めやプロジェクトの名前出しをしてた頃だったかな。自分はやりたいこと、アイディアをバンバン出していくから、それを虎さんがまとめ上げる。このプロジェクトはそういう立ち位置、役割分担でやろう、ということになったんです。
ーーその段階で虎さんがまとめ役、プロデューサーになった訳ですね。
はい。だからMCでも、これはサポートメンバーの優一さん発信の言葉ですけど、虎さんを「親方」と呼ぶようになっていったんです。
ーーなるほど。
虎さんは基本、自分が与えられた役割は責任を持って完遂するタイプなんですよ。破天荒に見えて、実はそういうところはめちゃくちゃきっちりやるタイプなんですね。で、虎さんは「ヒロトには色々考えさせない方がいい」というプロデュースの仕方で。ちょっと自分が考え出すと「いいからそこは」って言われるんですよ(微笑)。リハとかで声が潰れそうになって気にしてたら「そんなのいいじゃん」って。自分が時間をかけて考えなきゃいけないところはそこじゃない、ってことをちょこちょこ言ってくれてたんですよね。
ーーヒロトさんの取説を知っているメンバーだからこそのプロデュースですね。では、プロジェクト名が「PROTOTYPE」になった理由は?
僕はデザインでもそうですけど、「この中のどれになってもいい」というものを3つ作って、候補として出すんです。これも3つ候補を出した中で、虎さんが「これがいいんじゃない?」と選んだものです。最初は「H+T」、HIROTOとTORAで「Half Time」にしてライブも「Half Time Show」にしよう、というアイディアもあったんですけど、「PROTOTYPE」の方がウチらっぽいだろう、というのでそうなりました。「でもそっちのアイディアも捨てがたいよね」というので、「H+T」はロゴマークにして残したんです。
ーーあの「PROTOTYPE」に重なっていたロゴマークは「H+T」だったんですね。あれはヒロトさんがデザインを作ったんですか?
自分が作りました。「PROTOTYPE」というのは「試作品」という意味じゃないですか。何も考えないで作った最初の作品。もしかしたらこれが今後の何かになるかもしれないし、アルバムの何かになるかもしれない。だからこそ、自分的には制約無く何かをやる場所となって欲しかった。と同時に、自分のこのプロジェクトを今やる本テーマとして、これはアルバム制作に入る前に出てた話なんですけど、「アリス九號.らしさってこうだよね」というのが自然とできていて。自分たちも無意識のうちに自然とそれを意識してしまうところが癖としてでき上がっていて。
ーー長年同じバンドを続けていると。
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アリス九號.オフィシャルnote
限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…
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