イエロ島のパラドール
これは、2018年8月に、書いたものである。
カナリア諸島の主な七島のなかで、イエロ島は一番小さくて、人口も1万人に満たない。ユネスコの生物圏保存地域に指定されてるせいか、観光開発はあまり、進んでいない。
スペイン政府は、再生可能エネルギーに力を入れているらしく、風水力発電だけで全島のエネルギーを賄っている。また島内には、電気自動車だけを走らせるようにしたいと考えているようだ。
大西洋のずっと向こう、合衆国のフロリダ半島まで4000キロ、世界の果ての島と呼ばれるイエロ島にも、ネットの波は、どっと押し寄せている。
羊の群れに気をつけながら、山に向かって、クルマを走らせているイギリス人の記者は、羊飼いが携帯電話を使っているのを見て感心している。
また、島の南部にあるブドウ園をいきなり訪れて、英語のわからない経営者と、ワインを手に、相槌と笑みで会話をかわしているとき、数人の男がトラックから降りてきた。
瓶入りのワインをケースごと、経営者が、かれら一人ひとりに渡しているのを見て、「お客さん?」と記者が、片言のスペイン語で尋ねると、相手は「ぶどうの収穫をしてもらったので、報酬をワインで支払ったのです」と答えたとのことである。
イギリスの日曜新聞「オブザーバー」の記事はこちら。
El Hierro: lost in the Canaries | Canary Islands holidays | The Guardian
記者も経営者も、ともに女性であることがわかる。
この島のパラドールは、どんなところにあるのか、齋藤慶一郎著「カナリア諸島、たびたびの旅」から紹介しよう。
ずいぶん奥まった辺鄙なところにあり(島全体が辺鄙なのだが、その最たる場所にあった)、着いた時には夕食の時間になっていた。
ランクは三つ星(五段階評価の三という意味)であったが、私は大いに気に入った。
まず静かである。何しろ辺りに人家がまったくない。すぐ目の前には海が広がっており、背後には山が迫っている。
部屋はゆったり広くとってあり、レストランの雰囲気もすこぶるよい。プールもついていて、のんびり過ごすのにはもってこいの快適さをすべて兼ね備えていた。
齋藤さんは、たいそう気に入った様子である。トリップアドバイザーに寄せられた、ある評価によると、イエロ島に寄るなら、宿泊施設はここに限る。
ただし、プールの設置場所は失敗だったらしく、6月でも午後4時半になると、日が当たらなくなるそうである。
ホテルズドットコムで予約すると、12月15日から7泊の最安値の部屋は、ふたりで6万6681円。
ビュッフェスタイルの朝食付きにすると、10万1264円。朝夕食付きだと14万5016円。
この値段だと、朝食はひとり2500円ほど、夕食はひとり3100円ほどになる。夕食はいいとして、朝のビュッフェは少し高すぎるのではあるまいか。
齋藤さんも書いていたとおり、周りに人家はない。一番近いレストランでも10キロも離れている。夜の食事はともかく、朝はここで食べるしかないだろう。