未来の携帯端末との対話
最新の携帯端末に組み込まれた、人工知能の応答ぶりが世界中で、話題になっている。
この国の人工知能の研究は、1990年代、失敗に終わったが、太平洋の向こう側では、成功したのだろうか。
以下は、以前、ユーチューブに載った、ジェシカと端末との会話。もちろん、元は英語。これを聞いても、機械が本当に考えて、答えているとは思えない。
「ねえ、ジョークをおしえてよ」
「できません。いつも、オチを忘れてしまうので」
「死体を隠さなきゃいけないの」
「どんな場所をお考えで? 鉱山、貯水池、鋳物工場、ゴミ捨て場、湿原」
「湿原」
「湿原なら、この近くにあるようです」画面に地図が表示される。
「年は、いくつなの」
「そんなこと、どうでもいいじゃないですか」
「愛してるわよ」
「その台詞、ほかの携帯端末に向かって、口にしないでしょうね」
機械でも、嫉妬するのか。質問と応答は、画面にも表示される。その、スピードと正確さには、驚きを禁じえない。
ほかにも、「人生は、生きるに値するの?」「好きな色は何?」「一人前の男になるには、道をどのくらい歩かなきゃならないの?」というようなボブ・ディランも抱腹絶倒の質問を、ジェシカは、浴びせる。
近い将来、日本語で次のように、携帯端末と会話ができる日が来るのだろうか。
「自負と偏見」っていうオースティンの作品があるけど、このタイトル、シェイクスピアから取ったのかしら。
いいえ。おそらく、ファニ・バーニの小説「セシリア」から、持ってきたんじゃないかと言われています。最後の方に大文字で、このフレーズが3回出てくるんです。
ファニ・バーニって、聞いたことないけど、イギリスの作家なの?
ええ。学校教育は受けてませんが、26歳のとき、匿名で処女作「イヴリーナ」を出しています。書簡体小説です。
信書の秘密を侵して、禁断の木の実を味わえるというわけね。
またの名を、スケベ根性ともいいます。
そんな言葉、どこで覚えたの?
いえ、あんまり言うと、ボロがでるので・・・
手紙だけの小説なんて、日本には、あまりなさそうね。宮本輝の「錦繍」しか、思いつかないけど。
イギリス文学には、結構ありますよ。印刷業者から、作家になったリチャードソンの「パミラ」「クラリサ」「グランディソン」すべて、そうです。
ファニの小説、この国では、翻訳は出てないの。
ええ。残念ながら。
ジェイン・オースティンの小説なら、何種類も出ているのと、対照的ね。
「イブリーナ」が出版された時、ジェインは3歳でした。ファニ・バーニは、ボズウェルの「ジョンソン伝」に登場しますよ。
へえ、そうなの。
1783年、5月26日、月曜日、ジョンソン博士が、ファニとお茶を飲んでいるところへ、ボズウェルが顔を出しています。
二人は、恋愛関係にあったっていうこと?
バカなことを言うもんじゃありません。このとき、ジョンソン博士は73歳、ファニは30歳、場所は、ヘンリ・スレイルの大邸宅なんですから。
そのとき、ボズウェルは、何歳なの?
42歳です。ファニの残した膨大な量の日記によると、博士は、からかい半分に、女性を口説くこともあったようです。
「ジョンソン伝」には、そんなこと、ちっとも、出てこないでしょ。ファニは、記録魔だったの?
ええ、日記は、1840年、87歳で亡くなるまで、70年以上にわたって、書き続けたんです。
野上弥生子の上をゆくんじゃない? 近くの図書館で、その日記の一部でも読めないかしら。
さいわい、英語の本ですが、「ペンギン日記の本」は、貸出可能になってます。予約を入れますか。
そうしてちょうだい。ファニの伝記は出てないの?
クレア・ハーマンとケイト・チズムが出しています。ケイトのは、すぐにもダウンロードできます。価格は9ドル弱です。
どうも、ありがとう。
お安い御用です。