映画って、いいですね

 作業の合間、音楽かラジオを聴く。ラジオといってもネットラジオとかYouTubeで、主に声を聞く。映画評論家の町山さんのトークがとても面白い。彼のアメリカの現在について語る番組も好きだけれど、彼の真骨頂はやはり映画評論家。どんな映画評も必ず聞いたあと観たくなる。そしてすべて映画評は、常に映画が好きな彼の愛にあふれている。なにごとでもそうなんだなと、人生のある一時期から気づいたけれど、やはり誰でも何か愛をもって語ってる人たち、愛をもって作る人たち、それこそが人間の本来あるべき姿で、そこにこそ一番の能力を発揮してキラキラしていると思う。消耗してもされてもいけないんだよね。そう考えると人間だけに限らなくて、万物にあてはまるかも。


 というわけで、最近見た映画はパラサイト、Ford V. Ferrari、I’m sorry, we missed you、I, Daniel Blake、37seconds。二本は引退宣言をしたイギリス社会派映画を撮って訴え続けたケンローチ監督の、「いやいや、まだ引退する前に世界に広しめなくてはいけないことがたくさんある、これらを観てくれ!」という思いがヒシヒシと伝わってきて、所々で涙がぽろっと不意打ちされたように流れてしまう、英国貧困層を描いたI’m sorry, we missed youとI, Daniel Blake。
 働いても働いても豊かになれないという社会構造が出来上がってしまっている今の世界では、貧困層の人々が一番困難な生き方をさせられている。これが普通にまかり通っている世の中のがおかしいということを突きつけなくてはいけない。誰に?すべての人に。こんなに狂っているのにこれが普通だと受け入れるしかない。日々のお金にも困っているというのに、お金をもらえる仕事を休んでまでこんなのおかしいと言っても誰が聞いてくれる?時間に追われ、一番大事な人や家族との時間が削られる。子供はあっという間に成長してしまうのに。
 そんな中にもこれらの映画には人と人との優しい結びつきが描かれていた。そしてそれがとても美しく印象に残っている。それこそお金では決して買うことのできない尊いもの。いつまでも、いつの時代の人たちの心にも響くものが描かれていました。


 わたしは自分の描く絵からは想像できないような男前なものをこのむ傾向があって、その部分が大興奮したのがFord V. Ferrari。速さに生きる漢たちの熱苦しく、カッコ悪いまでの潔さみたいなものが描かれた映画でした。すごい子供の喧嘩みたいなので笑えたのはFord陣営がFerrariマフィアに交渉しにいくシーン。でもあの「お前のカーチャン、デーベーソ!」みたいな事言われなかったら、この映画の物語自体がなかったのですから、とても重要であります。後半のレース終了間際、速さのことより会社第一の流れに向かっていく流れは歯軋りする思いで観ていたけれど、終わったらすぐに来年のレースのことを語り始めて、そういうドロドロが一気に拭い去られるのは素敵な演出だったなぁ。(愚痴らない、それが漢だ!みたいな。)
 お話は本当にあった出来事を元にしているそうですが、カーレーシングのことなんてまるっきり興味の範疇外なのと、映画鑑賞後にWikipedia教授にあれこれ聞いてないので詳細は知りませんが、Ken MilesがTa-raと言ったり、Typhoo Teaを飲んだり、そこかしこかに散りばめられた英国臭の細かい設定も好感持てました。


 珍しく日本映画!37 seconds。これは英語映画よりも集中しないで観れるから、編み物しながら観出して、区切りのいいところでまた作業に戻ろうと、最初から作業合間に30分くらいずつみようと思ってたのに、ダメだった……。一気に最後まで観てしまった……。すごくおもしろかった!
 車椅子の障害者のユマちゃんといううら若き乙女が主人公。でも、乙女は障害者だからということで、誰も言葉に出して言わないけれど、「一人じゃできないんだから、私が手伝ってあげるよ」という透明なオブラートに包まれたような生活をしている。でも彼女はすでに独り立ちできる力を持っているということに気づいているのだ。その彼女がどうやって殻を破って自分自身の人生を始めていくのか、その瞬間を描いているのがこの映画。
 物語の中で出会っていく新しい人たち、そこから広がっていくまだ観ぬ世界。それらをそっと見守ってくれる人がいて、手助けしてくれる人もいて、でも引き留めようとする人もいる。一筋縄じゃ行かないけれど、面白おかしく、ときには深刻に、人間っていいな、いつでも成長ってできて、いつだって新しい友達は作れるし、みんないいやつが多いじゃん?!って観てる側に、人生楽しむべし!と伝えてくれる映画でした。


 パラサイト、これはとても話題になって何かの賞もとった映画なのですが、残念ながらわたしの観たこの他の映画のなかでは一番心ときめく要素がなかったかなぁ。これもまた貧困層を描く韓国映画で、格差社会をまざまざと見せつけてくれます。ケンローチの英国貧困層の映画との差はなんだろうね?もっと物語がコメディ調なのかな?笑わせてそこに実は今の恐ろしい現実を盛り込むという表現だからかな。わたしは単純なので、直球で訴えてくる方がグッとくるということなのでしょう。
 あぁ、映画って素晴らしい。実はこの数ヶ月あまり映画観てなかったので、観るリストがいっぱいなのです。たまると放置してしまう性格なので、じわじわ適度にっていうのをできるようにしたい、なにごとも……。

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