錦雲
青さを輝きと思い違っていた頃に
よく貝殻へ恋を説いたものだ
口付け、肌音、
酔い患いのあれやそれを
後生大事に抱える側で
からからと鳴く野の花へ
嘯くように憧れた
二十の秋
腹をぎっちり満たすのではなく
ちまちまとつまみ食うものだと
日々に鍵をかけるのではなく
瞬きに寄り添うものだと
踵に意地を張るのではなく
爪先が軽やかなものだと
それだけでよいのだと
それだけでよかったのだと
割れた貝殻を拾いながら
指先を吸った
すこし
しおからかった
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