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【生成AI×RPA】Claudeの新機能「Computer Use」 を活用したリサーチ業務の自動化


はじめに

近年、多くの企業が業務の生産性向上のために生成AIの活用を推進しています。そのような中、Anthropic社は先日、Claudeの新機能「Computer Use」のパブリックベータ版を公開しました。

この新機能は汎用的なRPAのようなもので、テキストによる指示だけで、Web検索やデータ分析、ドキュメント作成といったPC上の作業を全て生成AIが代行してくれるのが最大の特徴です。

業務の自動化という観点では従来のRPAでも可能ですが、通常RPAツールの導入には、環境準備や自動化する業務の選定、運用体制の構築といった作業が必要です。一方、Computer Useはこれらの作業を必要とせず、従来ツールの代替として期待されています。

本記事では、Computer Useが現状の業務効率化における課題をどのように解決し得るのか、その特徴や業務活用が期待されるケース、さらに弊社で作成したデモ動画を交えて解説します。

業務の自動化が求められる背景

RPAのような業務自動化ツールが求められる背景として、まず労働人口の減少による深刻な人手不足が挙げられます。

また、貴重な人材が売上や顧客情報等のデータ処理といった単純作業に時間を取られ、より付加価値の高い業務に時間を充てられないケースが多く見られます。さらに、こういった単純作業を人手で行うことで、ヒューマンエラーのリスクも高まるという課題もあります。

人手不足

少子高齢化や労働人口の減少を背景に、多くの企業にとって必要な人材を十分に確保できない状況が続いており、今後も人手不足の状況は続くと予想されています。

また、働き方改革による労働時間の制限柔軟な働き方への対応も求められているため、限られた人材と時間で業務を回していく必要性が増しています。こうした状況から、24時間365日稼働可能な業務自動化ツールへの期待が高まっています。

単純作業の負担増加

多くの企業では売上や顧客情報等のデータ処理や日々のレポート作成といった定型業務を行う必要がありますが、依然として人手で行われているケースが多いのが現状です。

このような定型業務を自動化することで、限られた人材をより付加価値の高い業務に充てることができます。また、単純作業の時間が増えると従業員のモチベーションが低下する恐れもあるため、単純作業を自動化できるツールの需要が高まっています。

ヒューマンエラーのリスク

データ処理のような単純作業を人手で行うことで、入力ミスや転記ミスといったリスクが高まります。

特に複数のシステム間でのデータのやり取りや、大量のデータを扱う作業では、打ち間違えや見間違えによる作業ミスは避けがたく、これらのミスを防ぐための確認作業にも多くの時間が必要となっています。結果として業務効率が低下しているケースも少なくありません。

Claudeの新機能「Computer Use」による業務効率化

冒頭で紹介したClaudeの新機能「Computer Use」は従来のRPAツールとは異なり、生成AIが直接コンピュータを操作できる画期的な機能を備えています。複雑な設定や操作方法の習得が不要で、テキストによる指示だけで全ての作業を実行してくれます。

これにより、リサーチ業務や複雑な表計算、レポート作成といった定型業務に加え、WebページやAIモデル開発といったより高度な業務も自動化できるため、RPAの代替ツールとして期待されています。

Computer Useの特徴と従来ツールとの比較

Computer Useには、従来のRPAツールにはなかったテキストによる画面上の柔軟な操作、複雑な処理への対応、手書き文字や画像の認識といった特徴があります。詳しく見ていきましょう。

操作性

従来のRPAツールでは、ツールごとの操作方法の習得や、自動化する作業の選定、業務フローの作成など、導入までに多くの準備が必要でした。

一方、Computer Useはテキストによる指示だけで業務を自動化することが可能です。生成AIが何を操作すべきか理解しながら処理を実行するため、複雑な設定を必要とせず、シンプルな操作で業務を自動化できます。

複雑な処理への対応

従来のRPAツールでは想定外の状況に対して判断することが難しく、個別に例外処理を設定する必要がありました。また、業務ルールの変更があった場合も、その都度シナリオの修正が必要でした。

一方、Computer Useはエラーが発生した際に状況を自ら理解し、自動で代替手段を実行できます。複雑な処理や業務ルールの変更などに柔軟に対処できる点は、既存ツールにはない特徴です。

画像認識

従来のRPAツールでは、規則性の少ない手書き文字や画像の認識が難しく、別途OCRなどのツールが必要でした。

一方、Computer Useは生成AIを活用しているため、手書き文字や画像を直接認識することができ、画面上のより幅広い作業の自動化が可能となります。

導入が期待されるケース

これまでの説明でComputer Useが既存のRPAツールと比較してより柔軟な特徴を持っていることがお分かりいただけたかと思います。では具体的にどのような業務での活用が期待されるのでしょうか。具体例を交えながら紹介します。

定型化が困難な業務への対応

統一されたルールやフォーマットが存在しない業務に効果を発揮します。例えば、取引先ごとに異なる形式の請求書処理や、様々なフォーマットの報告書からのデータ抽出など、これまで定型化が難しく自動化できなかった業務に対応することが可能です。

仕様変更やエラーへの対処

システムの更新や業務ルールの変更が頻繁に発生する業務、予期せぬエラーへの対応が必要な業務に活用できます。例えば、定期的にUIが更新されるWebサービスからのデータ取得や、処理中のエラーへの対応など、従来は変更やエラーが発生するたびに人手による介入が必要だった業務を自動化できます。

手書きのドキュメントや画像への対応

手書き文字の読み取りや画像の読み取りが必要な業務に活用できます。例えば、紙の資料のデータ化や、手書きの申込書の処理、画像を含むWebサイトからの情報収集など、従来のRPAツールでは自動化が難しかった業務にも対応可能です。

Computer Useを活用したデモ

これまで見てきたように、Computer Useは様々な業務での活用が期待される機能です。具体的にどうComputer Useを活用できるのかについて、実際の利用手順だけでなく、ビジネスシーンでよく見られる業務(今回はリサーチ業務にフォーカス)を自動化したデモ動画を通じて紹介します。

Computer Useの使い方

導入手順はシンプルで、わずか数分で利用を開始することが可能です。
以下、参考までにnpakaさんによる解説記事を添付しますので、ご自身でも実際にお試しいただくと活用のイメージが湧きやすいかと思います。

実際のビジネス業務への導入デモ

早速Computer Useのデモを見ていきましょう。今回はビジネスシーンでよく見かけるリサーチ業務を想定し、コンビニ大手の財務分析を例に紹介します。

まだベータ版のため、期待通りに動作しないケースも見られますが、生成AIが画面上を操作する非常に強力なツールであることがお分かりいただけると思います。

【リサーチ業務の自動化その1:インターネット検索による情報収集】

まず、コンビニ大手企業の財務分析を自動化した例を紹介します。テキストによる指示だけで、インターネット検索による情報収集を行うことができています。

【リサーチ業務の自動化その2:リサーチ結果のWord上での整理】

一部文字が欠落していたり文章が読みづらいなどの改善点はありますが、先ほどのリサーチ結果の内容をWordに整理するまでの一連の作業をテキスト指示だけで実行できているのが確認できます。

Computer Useはまだベータ版であり、日本語テキストの認識精度や文章の見やすさには改善の余地があります。しかし、先ほどのデモで示した通り、テキストによる指示だけで複雑な作業を実行でき、さらに作業中に発生したエラーも追加指示なしでAI自身が解決できることが確認できました。

さらに、Anthropic社の公式ページによると、Computer Useの性能は数ヶ月以内に大幅な向上が見込まれています。

例えば、スプレッドシートのデータをフォームに入力する作業や、Googleカレンダーでのスケジュール調整、Webサイトの構築まで、私たちが普段使用しているブラウザ上で実行できるようになる予定です。生成AIによる業務自動化の新時代は、もうすぐそこまで来ています。

最後に、Anthropic社公式によるComputer Use活用デモ動画もご紹介します。

・フォーム入力の自動化

・スケジュール調整の自動化

・コーディングからWebサイト構築の自動化

おわりに

本記事では、Anthropic社が提供する新機能Computer Useの概要と、それを活用した業務効率化の可能性について紹介しました。

従来のRPAは多くの事前設定が必要で、複雑な処理への対応が難しいという課題がありました。一方、Computer Useはテキストによる指示だけで複雑な業務を自動化できる画期的な機能を備えており、より汎用的な業務自動化を実現する新たな選択肢として期待されています。

記事でも触れましたが、現状のComputer Useには一定の誤作動や限界があるのも事実です。例えば、スクロール、ドラッグ、ズームなどの操作を効果的に処理できないケースや、通知や短時間の動作を見逃す可能性があるなどの課題が挙げられます。

しかし、類似サービスと比較すると倍以上の精度を実現しており、有害なコンテンツに対する安全機能も備えています。Anthropic社は、これらの課題改善に取り組んでおり、今後数ヶ月以内により使いやすく信頼性の高いツールへとアップデートする予定です。

弊社のAI Transformation(AX)事業部では、今回紹介したComputer Useをはじめとする最新の生成AI技術を活用した業務効率化の支援を行っています。貴社のニーズに合わせた最適なソリューションを提供し、AI活用による業務変革(AX)をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。