華アワセ蛟編姫空木√感想 砂上のホラー王子様
蛟編姫空木√のネタバレ感想です。
ここは私が姫空木さんに転んだルートです。
心理の読解が最も難しい男。姫空木さんは望まれるままにみんなのお姫様を演じていますが、その実王子様に憧れる男です。みことちゃんにとっては優しく信頼できる蛟さんの友人で、姫空木さんが男でみことちゃんに片想いをしているとは夢にも思っていません。
姫空木さんは最初、お姫様としてみずみこを応援するつもりだったはずなんですが、みことちゃんの誘い水で秘めた恋が顕になっていきます。具体的には徐々にみことちゃんを泉姫へ覚醒させることを口実にキスをするなど、パートナーという大義名分を掲げてみことちゃんの「王子様」のように振る舞うようになります。
みことちゃんはもちろん困惑し、そんな姫空木さんを受け入れられません。そもそも貞操観念ガチガチなみことちゃんは求められるままに水妹にキスをする姫空木さんの態度自体受け入れられないものです。
ぎくしゃくしてしまった関係を元に戻すべく、姫空木さんが夜中の2時まで出待ちしてみたり(重い!)、みことちゃんから姫空木さんに歩み寄ったりしてお互いに関係を維持しようとします。
が、みことちゃんは姫空木さんの片想いには気付いていませんし、姫空木さんもみことちゃんの振る舞い(他意はない)からこちらを見てくれているかも、と期待してしまいます。お互い相手の感情を自分の都合で解釈して、表面上で上手くやっているに過ぎないのでうまくいく訳がない。
ところで姫空木作のキスマークを蛟作だと誤解され、蛟さんとみことちゃんは斧定先生に雑用を言い渡されます。ふたりきりで会えるチャンスをつくって貰ったのに真面目に仕事する堅物ふたりが可愛い。どうしてこのみずみこはハピエンになれないんですか?
ここでも蛟さんはみことちゃんに優しくて誠実で、みことちゃんは蛟さんへの恋をはっきりと自覚します。
微笑ましいイベントにプレイヤーの心が緩んだ、その瞬間に「どうして?」メールが送り付けられ、ほぼ同時に同じ文言の台詞を吐かれます。みんなのトラウマ。シーンの落差が激しすぎる。どうしてはこっちの台詞だよ!しかも蛟さんとのやり取りを最初から全部見ていていちいちコメントつけてくる、そのストーカー気質にぞわっとします(誉めてる)声優さんの演技もぞわぞわする。優しい声なのにちゃんと狂ってる風味も混ぜ込めてるの凄い。怖い。
姫空木さんの言いたいこともわかるよ。姫空木さん視点ではみことちゃんの手伝いを断られたのに、蛟さんには頼んでいたように見えますからね。どんなに望むお姫様を演じてみても、みことちゃんの心は手に入らない。結局みことちゃんを助けて、心を寄せられる王子様は蛟さんだって突きつけられた心地なんでしょうね。…だからって午前4時30分に突然背後に立つのはやめて下さい。
ここから姫空木さんはヤンデレ化しみことちゃんを監禁。表向きはさも行方不明のみことちゃんを心配しているように振る舞います。でもやけに冷静だしみんながみことちゃんを探しているのに部屋に引きこもってるしで普通に怪しいポジション。意識がないみことちゃんで王子様とお姫様ごっこをする姫空木さんがホラーすぎる。
でも同時に切なくもあるんですよね。かつてみことちゃんは姫空木さんが周囲に求められるままに軽くキスするのを嫌がり、「自分でしたいと思ったことはないのか」と問いかけた。だから今この場で姫空木さんはたったひとりの、好きなひとにしかしないキスをみことちゃんに捧げる。けれどみことちゃんは答えない。
みことちゃんが目覚めるのは蛟さんのキスです。結局どこまでいっても蛟編は蛟さんがメインヒーロー=王子様で、姫空木さんはお姫様を呪う魔女ポジションという構図。単純に好きな子の王子様でありたかった、それだけの姫空木さんを思うと悲しいけど仕方ない。
エンディングは姫空木さんを一人で追うか蛟さんと一緒に追うかで分岐。一人で追うと意識がある状態で王子様とお姫様の結婚式(意味深)をさせられるメリバです。「感じてるのが見たい」とかいうとんでもねぇ台詞がSwitchでも修正されてなくて私大歓喜。くれなゐ様は不能疑惑が出るくらい修正入ってるのに。世知辛い世の中です。
蛟さんと追うと堕ちた姫空木さんを枯らすエンド。ヘキ的には前のエンドが好きだけど、話としてはこっちが好き。砂場のお城も姫空木さんにとってはキーになるアイテムです。砂場のお城は崩れやすい王子様ごっこの舞台で、それを粉々に破壊した先に姫空木さんの本心(=歌が詠まれた携帯)がある。
このエンドは蛟さんもみことちゃんも生存しますが、お互い関わらないようにして生きていきます。蛟さんが「一目惚れは僕が先だ」と主張する姫空木さんにみことちゃんをある意味譲った形です。蛟さんは死んだ親友のために好きな子を譲れる義理堅い男なのが、「親友でも譲れないものはある」姫空木さんと対照的でいい。
姫空木さんは決して蛟さんが嫌いな訳じゃない、それどころか親友だとちゃんと思っているところがミソだと思います。部屋に行ったのに√侵入を蹴ると蛟さんを思いやってみことちゃんを応援してくれる、その気持ちも本心なんですよね。
友情と恋の板挟みになってよくわかんなくなってる男。綺麗に取り繕われた外面とごちゃごちゃして面倒臭い内面を持つのが姫空木さんらしくて好きです。