みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史

様々な場面で悪い事例として引き合いに出されているみずほ銀行のシステム統合に関する解説書。

当時実際に孫請のような形で実働チームの一部を担っていた金融系SIer企業の経営陣と近い関係にあったこともあり、概要は何度も聞いていました。社内で「例のトラブルプロジェクト」と呼ばれていましたが、エンジニアとして具体的にはどのような技術的なチャレンジがあり、どう乗り越えていったかを知りたいと思い読んでみました。

ただ、現場で起こった技術的な課題や、それをどう乗り越えていったのかという部分の詳細はあまり記載が無い内容になっていました。

3つの銀行の経営陣のITに関する知見の無さとそれに対する危機感の無さを発端に、3行とそれぞれのお抱えベンダーの主導権の取り合いにより、あるべき姿のシステムの検討や定義に時間がかかり、判断タイミングを逸したこと。さらには現場からトップへの情報伝達のエスカレーションの仕組みが正しくなされておらず、危機的情報が現場から即座に伝わってこない、「なんとかなるだろう」や「現場でなんとか頑張ってくれ」という楽観的な考え方や精神論が2010年以降でもはびこっていたことで発生してしまった大規模障害、といった内容が中心でした。

とはいえ、これって規模の大小はあれどDXに課題を抱えている多くの企業で実際に起こっていることであり、それにはやはり陣頭指揮をとるトップのITに対する考え方や価値の置き方、といったところに起因するものだと感じます。それは現場で頑張っている社員の一人一人、さらには取引先、業務委託や派遣アルバイトのスタッフまで伝わっているので、社内にそういった空気が自然とこびりついているというのも事実なのであろうと感じています。

そういう意味ではトップの1つ1つの態度やメッセージ、方向性の示し方と現場スタッフへの伝わり方も含めて、重要であることを改めて実感させられる内容ではありました。

改めて自身の発言や行動、メッセージの仕方を振り返るきっかけになりました。

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