恩返しができる人がほしい
会社説明会での私の話の中に「バックパッカー精神を持つ人募集」という話があります。バックパッカーのようなマインドを持った人が当社はほしいのです、という話なのですが、バックパッカー精神の説明の中でも最近強く言っているのが「恩返しができる人がほしい」ということ。
留学やワーホリ、バックパッカーで海外にいる間に、数多くの人が、だれかに助けられた経験をもったと思います。私もエジプト留学中、多くの人に助けられました。そのときの話です。
留学初日、バックパックを背負ったまま、アレクサンドリアの町をバスターミナルから大学へ、歩いて向かっていました。重い荷物を背負って、暑い真昼間の道路を、とぼとぼ歩くアジア人の若者を見て、通りすがりの老紳士が声を掛けてくれました。「大学へ行きたいんです」と話すと、そのおじいさまは「ついて来なさい」と言うと、近くの大きな施設の中へ私を連れて行ってくれました。そこは町のスポーツクラブで、ゴルフ場やクラブハウスが併設された、町の紳士の社交場、という趣の場所。おじいさまはクラブハウスに入ると、私に紅茶を注文し、同時に、「この若者を大学へ連れて行ってくれ」とクラブハウスの人に伝えたまま、どこかに消えてしまいました。
私はどうすればいいのかわからないまま、出された紅茶を飲んでいると、クラブハウスの執事(のようないでたち)の人から「それでは行きましょう」と言われ、言われるがままに車に乗せられ、大学の門の前で下ろされました。丁寧にもその執事(のような人)は、守衛に「この人を学生部に連れて行ってくれ」とことづけをして、そのまま車で立ち去ってしまいました。
名前もわからず、どんな人かも知らず、こちらがどんな人間なのかも聞かれず、ただただ親切にされ、「ありがとうございます」も言えずに消えてしまった老紳士。留学初日の私には大きなカルチャーショックでした。「人に親切にする」というのはこういうことなのか、と初めて経験した感覚でした。
このような、名も知れない人からの親切を、海外滞在者は多く受けたと思います。そういう経験がある人は、自分が成長したら、今度は自分が周りの人を助けることをしてほしい。
「いつか恩返しを」という気持ちを、当人に対してだけでなく、周囲に対しても考える。私が「留学生を活かしたい」と思っているのも、このしがない留学生を助けてくれた老紳士の気持ちに少しでも恩返ししたいという意思なのかもしれません。
助けられた人は、自分が成長したら今度は周りを助ける。後輩に教えたり、勉強会をしたり、講師をしたり。当社の評価制度はそういうまわりを助けることに、大きなポイントを与えています。ぜひ、「海外で受けた親切をまわりに恩返しできる人」といっしょに仕事をしていきたいと思います。