
迫さんのSAC炎上をきっかけに考える「暗号資産交換業」の法的境界線
こんにちは、Scentプロジェクトのファウンダー、Alexです。
2023年に「Scent Store」を公開し、香りのデジタルストリーミングサービスとして、香りのデジタル化に挑戦を開始。同年4月には、マーケティング戦略の一環として暗号資産「Smell Token」を上場させました。
2024年には、FiNANCiE上で「Scent Japan DAO」が発足し、香りのデジタル配信の未来を共創するコミュニティが誕生。これまでにデジタル大臣賞を受賞し、500とJETROが主催するアクセラレータープログラムにも採択されました。2025年2月には、シャネルをはじめとするハイブランドの特集を組み、香りの文化・科学・トレンドを発信するメディア「プルースト」を立ち上げ、香りの可能性をより多くの人に届ける活動を開始。最高のチームと共に、「香りのデジタル化」で世界を変える挑戦を続けています。

1. SAC炎上の背景と論点
SAC(サコイン)は、あるインフルエンサーが発行した独自のトークンです。しかし最近、SNS上で「SACは無登録の暗号資産交換業ではないか?」という批判が巻き起こり、大きな話題となっています。この問題の背景には、SACが分散型取引所(DEX)上で取引されていることや、発行者がユーザーとの間で相対取引を行っている疑惑があることが挙げられます。これにより法的解釈が曖昧となり、議論が広がっています。
2. 暗号資産交換業の法的な定義
日本では、暗号資産交換業は資金決済法に基づいて厳格に規制されています。具体的には、①暗号資産の売買行為、②売買や交換の媒介・取次ぎ・代理行為、③利用者の資産を預かるカストディ業務のいずれかを「業」として行う場合、金融庁への登録が義務付けられています。これは、顧客保護や犯罪防止の観点から設定されています。

3. 何をもって「業」と判断されるのか?
法律上「業」として判断されるには、以下の要素が考慮されます。
反復継続性:単発ではなく継続して事業として提供されていること。
公衆性:特定少数ではなく、不特定多数の人に向けてサービスが提供されていること。
営利性:手数料収入など、経済的利益を目的として運営されていること。
これらの基準に該当する場合には、「業」として登録が必要になります。
4. 過去の摘発事例から見る違法性のポイント
具体的な事例から違法性のポイントを解説します。
ワールドフレンドシップコイン事件
この事件では、運営者が独自の暗号資産を無登録で公衆に販売しました。具体的には、多数の人に対して継続的に暗号資産の販売や取引サービスを提供し、対価として金銭や他の暗号資産を受領していました。これにより「反復継続性」「公衆性」「営利性」が全て認められ、資金決済法における無登録の暗号資産交換業として違法性が認定されました。
ジュビリーエース事件
この事件では、高い利益を約束した投資スキームを無登録で多数の投資家に勧誘し、資金を集めていました。集団投資スキームへの勧誘行為は金融商品取引法の規制対象であり、無登録でこの行為を行ったことが違法とされました。特に、多数の投資家から資金を反復・継続的に集め、投資家に対して利益を約束した点で違法性が明確でした。
これらのケースから、無登録での公衆向け販売行為や投資勧誘行為が違法行為の中心的なポイントであることが理解できます。
5. SACの取引形態と法的リスク
SACは分散型取引所(DEX)を利用しており、取引の主体はユーザー同士ですが、発行者本人がユーザーと直接相対取引を行っているとの指摘もあります。この相対取引が頻繁に行われ、営利性が認められる場合、「交換業」と判断される可能性があります。
実際、過去にはAster(旧Plasm)が相対取引によるICOを行っていたケースもあり、相対取引による資金調達は法律的にグレーな領域となっています。従来の摘発事例と比較すると、相対取引が確認された場合は法的リスクが高まると考えられます。
6. 分散型取引(DEX)と法規制のグレーゾーン
現状の法律は中央集権的な取引所を想定して作られており、DEXやコミュニティ主導型のトークン運用については明確な規定がありません。しかし相対取引については明確に交換業の定義に該当する可能性が高く、今後法的な整理や摘発対象になるリスクがあります。プロジェクト運営者は法的リスクを明確に把握し、適切な対応を取ることが求められます。
7. 暗号資産業界が今後注意すべきポイント
SACのケースから分かるように、暗号資産における「業」の判断は「反復継続性」「公衆性」「営利性」の3点が重要なポイントとなります。特に相対取引が存在する場合には交換業として規制対象となる可能性が高まります。トークンの発行者側もユーザー側も、この法的な境界線を十分理解し、自身の活動や投資行動を行うことが求められています。