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行政書士の現場 4(家賃未納編)
見えないゴール。
調べれば調べるほど、問題は複雑であることがわかる。
未納となったきっかけ
そもそも、家賃については入居者の子供が支払っていた。 その入金が途絶えたために未納が発生した。 入居者自身はとても元気だが、年金生活者であり、認知症的な症状も見受けられる。 つまり、支払い能力は極めて低い。
子供たちの支援が不可欠だが、彼らとは連絡が取れない。 入居時の保証人の欄に息子の連絡先があったため連絡を試みるも、反応はない。
これらは表面上の事実にすぎない。 問題の奥底を覗き込めば、そこには魑魅魍魎・混沌とした現実が広がっていた。 入居者は近隣とのトラブルを頻繁に起こしており、すでに地域の悩みの種となっていた。
保証人を探す
入居者本人や依頼主である大家さんから情報を集め、保証人の職場を突き止めた。 しかし、そこに保証人の姿はなかった。 保証人は失踪していた。
それでも手を緩めず調査を進めると、別の親族の存在が浮かび上がった。 しかし、彼らもまた、入居者とは完全に縁を切り、関わりを避けていた。
もう、八方塞がりの状態。
結局、この入居者には家賃を支払う能力がない。 ならば、退去してもらうしかない。
しかし、退去すればすべて解決するのか? 答えは否。 入居者が行き場を失えば、また別の問題が発生する。
市役所と相談する
市役所へ相談し、生活保護の申請を進めた。 これにより、未納分の支払いはできないが、今後の家賃は保護費の中から賄うことが可能になる。
生活保護を受けることで、大家側も安定した家賃収入を確保でき、入居者も住み続けることができる。 こうして、一つの道筋が見え始めた。
今までの流れを整理すれば
大家さんから家賃滞納分の整理を依頼される。
入居者の状況を確認するも、支払い能力は皆無。
連絡の取れない保証人を探すも、すでに失踪。
他の親族も関わりを拒絶。
退去という選択肢が浮上するが、入居者の新たな居住先は見つからない。
市役所と相談し、生活保護の申請へ。
生活保護受給により、今後の家賃支払いの道が開ける。
この一件を通じて、行政書士の仕事が単なる契約処理や書類作成ではないことを改めて実感した。
問題を整理し、最適な解決策を導く。
それは、依頼者のためだけではなく、社会全体にとっても意味のある仕事なのだ。
ここからは、その入居者の奥深い部分に触れる話であるので、読み物として読んでほしい。ただ、事態は小説より奇怪だ。
あなたは今、何に最も興味を持っただろうか? 未納の裏にある家族の崩壊か、それとも関係者たちが次々と姿を消していく奇妙な展開か。
もし自分がこの問題を解決しなければならない立場だったら、どこから手をつけるのか。 本当に正しい解決策とは何なのか。
ここから先、さらに深く入り込む準備はできているだろうか?
この業務は秘匿性の高い業務であり、依頼者を含め登場する人たちのとても繊細な部分に触れるため、そこについては慎重な対応が求められる。
人にはそれぞれ、ドラマがあり、それらが幾重にも重なって現実が発生している。 この仕事では、それらをリアルに我がことのように経験として得られる。
これが行政書士のリアルです。
この課題については、ここまでとします。 ただ、結果を一部お話しすればこの入居者は生活保護を受給しましたが、その後も様々なことがあり、別のところへ移り住んでいます。
とても密度の濃い、経験となりました。
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