
相談者と向き合う覚悟——行政書士としての心構え
今日は伊豆半島・下田にいる。
私の住まいは福島県二本松市。距離にして500km以上——遠く離れた場所だ。
今、河津桜がちょうど見頃を迎えている。今年は寒さの影響で例年より一週間ほど遅れたというが、それでも春は確かにここにある。
福島を出発したとき、春はまだ地面の下でひそやかに息づいていた。だが、伊豆ではもう桜がその存在を華々しく告げている。
ホテルの窓から見下ろす景色はまるで別世界。南国の植物が当たり前のように目の前にある。
地元の二本松は、福島市と郡山市の中間に位置し、安達太良山の麓に広がる町だ。雪はほとんど降らない。だが、私が仕事で訪れる山形の米沢市や南陽市はそうではない。車で1時間も走れば着く距離だが、冬になると積雪が多く、ほとんど足を運ばなくなる。日本海側の冬は、空が雲に覆われ、閉ざされた世界が広がっていると聞く。
環境が変われば、見える世界も変わる
自分の居場所を変えれば、目の前の景色も、体感も、そして思考さえも変わる。まるで自分がリセットされたような感覚になる。
それまで「当たり前」だったものが、一瞬にして異質なものへと変わる——この経験は、何も旅に出たときに限らない。日常のなかでも感じられるものだ。
たとえば、サラリーマンであれば、自宅と職場での感覚の違い。
同じようにパソコンを打っていても、自宅のデスクと、ホテルのロビーや洒落たカフェでは、思考の流れが変わる。
距離の問題ではない。環境が変われば、見える世界が変わるのだ。
私はこのことを常に意識している。
相談者と私——見えている世界は違う
私は日々、さまざまな相談を受ける。
そのとき、まず心に留めておくべきは—— 「相談者と私とでは、見えている世界が違う」 ということだ。
この違いを理解することが、相談を受ける者としての第一歩となる。
そして、人はしばしば「今の自分の認識こそが不変の真実である」と信じているが、実際にはそんなことはない。意識というのは驚くほど簡単に変わるものだ。
「そんなバカな」と思うかもしれない。しかし、人間の感情は常に動いている。
私たちは感情によって行動し、自分の状況を作り出している。そして逆に、自分の置かれた状況を判断して、そこにふさわしい感情を作り出してもいる。
つまり、どちらかを変えれば、もう一方も変わる。
大切なのは、 「その事実に気づくこと」 だ。
誰もが幸せを望んでいる
どんな人でも、どれほど絶望しているように見えても——
目の前の相談者が「もう幸せを望むことすら放棄した人間」などということはあり得ない。
では、なぜ変われないのか。
それは 「自分を解放しないから」 だ。
自分で「私はこういう人間だ」と決めつけ、その殻に閉じこもる。
雛鳥が卵の殻の内側にいるとき、外の世界を見ろと言われても見えるはずがない。
だが、それでも「温もり」は感じているはずだ。
相談者がここに来た理由
冷静に考えてみてほしい。
「相談に来た」—— これこそが、すべての答えだ。
目の前の相談者は、自分の現状を変えたくてここにいる。
変化を望んでいる。
これは行政書士の現場のリアルだ。
人は、環境を変えれば変わる。
そして、人は、本当は自分を変える力を持っている。
そのことに気づいてもらうために、私はここにいる。
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